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ヒーズインラブ 藤岡師悲願のクラシックタイトル/吉田竜作マル秘週報

  • 2015年12月02日(水) 18時00分


藤岡調教師「まだまだ上積みもあるし、ここをクリアするようなら…」

 外厩の充実でトレセン内での調教の重要性が低下する一方なのは当コラムでも何度となく触れてきた。この流れの中で噴出してきたのが「同じような調教ができるのに外厩に比べてトレセンは預託料が高い」というオーナーサイドの声。これを受けて数年前に栗東では人件費削減(厩舎の人員を13人から12人に)による預託料の引き下げが行われた。この「厩舎制度改革」は馬主の負担を軽くするだけでなく、「効率良く厩舎作業を」という狙いもあったようだ。

 地方競馬では一人あたり3〜4頭を担当するし、牧場ではさらに多くなるのが現状。当然“1頭にかける時間”は一般的に「一人あたり2頭まで」のJRAが最も長くなる。それだけきめ細かなケアができることがトレセンの最大の売りだったわけだが、人員が減ったことで一人あたりの仕事量も増えた。かつてトレセンにあった“プレミアム感”が薄れつつあるのは間違いない。

 この一連の流れの一方で、効率を度外視して馬をつくらなければならないこともある。その典型が障害レースに関わるケースだ。最近は障害馬ですら外厩で練習するケースが増えてきたと聞くが、それでもできることといえば飛越の際の脚の運びの矯正くらいのもの。実戦に近い障害を飛ばしたり、広いコースで走らせることはやはりトレセンでやっていくしかない。何よりレースに騎乗するジョッキーと練習の段階から呼吸を合わせていくことが大切。それゆえ障害馬に関しては、まだまだトレセンが役割上、大きなウエートを占めている。

 具体例を挙げてみたい。メイショウヤタロウ(牡7・高橋亮)はメイショウボーラーの半弟として大きな期待を背負い当時、白井厩舎へ入厩。フェブラリーSを筆頭に重賞5勝を挙げた兄のようにデビューからトントン拍子とまではいかなかったが、着実に勝ち星を積み重ねてオープン入り。しかし、その後はオープンの壁にぶち当たってしまう。

 白井厩舎の解散に伴い高橋亮厩舎へと転厩した際、高橋亮調教師は「平地では厳しい」と判断。高田に「障害の練習をしてくれないか」とメイショウヤタロウを託した。高田の第一印象は「何、この馬。すごいやん」。ただし、連戦の疲れなどもあって「状態自体はガタガタだった」という。

 真っすぐ歩かせることや上手な体の使い方まで再教育。障害試験を突破するころには「以前とは別馬に見えるくらい」に再生した。「これなら平地を使っても面白くないか?」とのトレーナーの声に、「そうですね。今のデキならいいかもしれません」と高田は返答。転厩2戦目の谷川岳Sでは陣営の期待に応えて0秒1差2着に好走し、転厩5戦目の小倉日経オープンではついに壁を突き破って勝ち星を挙げた。まさに障害騎手の手腕が証明されたケースだ。

 彼らの手腕やノウハウは障害馬だけでなく、競走馬全般に対していい影響を与えられる。トレセンの地位が相対的に下がりつつある今、これこそがJRAとしても得がたい“売り”になるのでは。確かに馬券的には難しい面もある障害レースだが、人と馬との結びつきは平地以上に強い。馬事文化という点でもこれを残しつつ、さらに有効活用できないものか。

 ちょっと熱くなってしまったが、POGコラムだけにこれで終われるわけもなく…。“1頭にかける時間”でいえば、栗東の中で仕事が終わるのが一番遅い部類の藤岡厩舎は間違いなく長い。良質な環境で育まれてきたヒーズインラブ(牡)は先月14日の新馬戦(京都芝内1600メートル)を快勝。昇級初戦に選んだのが日曜(6日)のシクラメン賞(500万下、阪神芝外1800メートル)だ。

「初戦はまだプヨプヨしていてどうかと思ったが、レースに行ったら見たこともないくらいインパクトのある走りを見せた。牧場の人も“えっ、あの馬ですか?”って驚いてたくらい。まさかあれほど機敏に走れるとはね。時計(1分36秒0=稍重)も内回り、外回りの違いがあるにせよ、(同日の)デイリー杯2歳Sと遜色ないもの(0秒1差)。まだまだ上積みもあるし、ここをクリアするようなら…」

 トレーナーは皐月賞と同舞台のGIIホープフルS(27日=中山芝内2000メートル)も視野に入れている。藤岡調教師が欲してやまないクラシックのタイトル。ヒーズインラブが連勝を決めるようなら、悲願達成が現実味を帯びてくる。

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