過去の歴史通りなら、マカヒキは「最低1冠」
ここまで、「サトノダイヤモンド、
リオンディーズ、
エアスピネル、ディーマジェスティ、ハートレー、ロードクエスト…」などがリードしていた3歳牡馬クラシック路線に、きわめて強力な1頭が加わった。多くのランキングで間違いなく上位5傑に入っていた「リオンディーズ、エアスピネル」を倒して3戦3勝となった
マカヒキ(父ディープインパクト)は、この1勝でクラシック戦線の勢力図(ピラミッド)の、最先端の1頭に位置することになった。
弥生賞(1964年創設)を無敗のまま制した馬は、65年のキーストンから、15年サトノクラウンまで、過去10頭。その中に84年シンボリルドルフ、05年ディープインパクト。2頭の3冠馬が含まれる。皐月賞直前に引退した95年フジキセキ以外の9頭のうち、7頭までがクラシックホースとなっている。無敗の弥生賞馬の3冠成績は、次のようになる。
▽皐月賞………【4-0-1-4】
▽日本ダービー【5-0-2-0】
▽菊花賞………【2-2-0-1】
クラシック歴史が再現されるなら、マカヒキはおそらく最低1冠は制することが可能な数字である。過去の記録は、マカヒキの「日本ダービー」制覇を予感させるに十分でもある。
これからの焦点は、対リオンディーズとの比較、対サトノダイヤモンドとの比較に移るが、クラシックの歴史の中で、無敗の弥生賞馬となったマカヒキの優位性はすなおに認めたい。
若駒Sのマカヒキは、最後の2ハロンを推定「10秒7-10秒6」の高速フィニッシュで楽々とまとめ、2分02秒4だった。今回は伏兵が引っぱったから、勝ち時計は史上初めて2分のカベを突破するレースレコードの「1分59秒9」である。
レースの後半は「12秒5-11秒3-11秒3」=35秒1であり、残り600mから自然にピッチを上げる形で先頭に躍り出たリオンディーズの上がりは「34秒4」だった。
残り600mで4番手のリオンディーズの約6馬身くらい後方から、残り2ハロンで約4馬身、坂を上がる残り1ハロン標で約2馬身差に接近したマカヒキの上がり3ハロンは公式記録で「33秒6」である。中身を推測すると「12秒2-10秒7-10秒7」に限りなく近い。
スローの若駒Sの最後の400mを10秒台のラップを連続させて推定「21秒3」で抜け出したマカヒキは、まったく流れが異なり、走破タイムを2秒5も短縮し、なおかつ直線に急坂のある中山コースで、驚くことに、最後の400mは推定「21秒4」。まったく同じ爆発的な切れを発揮したのである。直線に向いて楽勝を思わせる手ごたえで、上がり「34秒4-11秒3」を記録したリオンディーズのストライドが鈍ったわけではなかった。
マカヒキ(1月28日生まれ)と、目下の評価互角と思えるサトノダイヤモンド(1月30日生まれ)は、同じディープインパクト産駒で、同じノーザンFの生産馬。ともに母方は英国から数代前にアルゼンチンへ渡って発展した牝系であり、同じように母方に南米のサンデーと形容されたサザンヘイローの血が入り、似たような形のヘイローのクロスを持つ。同じ1号族なので、約20代さかのぼると1788年生まれの牝馬プルネラ(父ハイフライヤー)で合流する。
そのサトノダイヤモンドも、主戦騎手はC.ルメール。重なってしまうのでレース前にマカヒキの鞍上は代わりそうになったといわれる。果たして、ルメール騎手はどちらに乗るのだろうか。橋口調教師のワンアンドオンリーと、横山典弘騎手のように続けて乗ることを互いに納得のコンビ成立ではないから、現時点ではなんともいえない。希望がすんなり通るほど簡単でもないだろう。
なお、ダートの「兵庫JG、全日本2歳優駿」を連勝したサウンドスカイを別にすると、夏の「新潟2歳S」のロードクエストから、「弥生賞」のマカヒキまで。この3歳世代の男馬は合計16の芝の重賞を制してきた。その勝ち馬は、みんな異なる「16頭」である。
観戦記ではないので、これから再考、修正しなければならない点を考えたい。
★「リオンディーズは能力全開だったのか?」――約2カ月半の休み明け。それも1600mの朝日杯FSのあと。レース前からカッカし、同じ日程だった武豊騎手のエアスピネル(父キングカメハメハ)も前半行きたがっていたが、リオンディーズも道中かかった。これは角居調教師も織り込み済みで、むしろ中位から正攻法のレースができたことを評価している。
★「マカヒキは後方一気型なのか?」――今回はスタートで父ディープインパクトと同じようにヨレて出負け。本来は自在型と思える。しかし、ルメール騎手の巧みな進出と息の入れ方でカバーできたが、仮にジョッキーが代わるようだと、テン乗りで全能力発揮が可能だろうか。乗り替わるジョッキーは大変である。「鞍上弱化?」の声にも、猛反発しないといけない。
★「エアスピネルは脱落か?」――前回の朝日杯FSでは先に抜け出したところを差されてリオンディーズに「4分の3馬身」差。今回は先に動いたリオンディーズに目標を定めて進出し、並びかけられずに「2馬身」差。差は開いた。「ふつうなら勝てるレベルの内容だから(走破時計2分00秒2は、93年の日本ダービー馬ウイニングチケットのレースレコード2分00秒1と微差)、本番で巻き返したい… 武豊騎手」。悲観的ではないが、「今年の相手は強い」とも。
★「同じ3戦3勝サトノダイヤモンドは?」――きさらぎ賞をレースレコード1分46秒9のサトノダイヤモンドは、平均ペースの流れを上がり3ハロン34秒2(推定11秒5-11秒4-11秒3)で完勝。スパートしてからどんどんピッチを上げてみせた。弥生賞組より強靭な末脚が長つづきする印象がある。ただ、日本ダービーのためのローテーションをとり、皐月賞は約2カ月ぶり。初の関東への遠征。初コース。皐月賞に関してはやや日程の不利がある。これでもし、ルメール騎手とのコンビが成立しないとなったら、マカヒキと同じく評価ダウンか。
★「マカヒキは2400mをこなせるか?」――クラシックは同世代だけが相手。3000mの菊花賞とて長距離タイプだけが台頭するわけではなく、皐月賞をクリアできるならまず大丈夫。しかし、全姉ウリウリはマイラータイプ。母の1勝は1200m。祖母リアルナンバーもアルゼンチンのマイラー。3代母ヌメラリア(父サザンヘイロー)も亜1000ギニー馬。馬場が悪くなると、切れが殺がれるうえに、スタミナ不安が生じる危険はある。
★「リオンディーズの逆転は?」――弥生賞の直線のフットワークは、慣れない形を取ったためか、朝日杯FSほどしなやかではなく、鋭くなかった。半兄エピファネイア(父シンボリクリスエス)も弥生賞で直線差されるなど、中山は【0-1-0-2】。のびのび走れる東京、京都などの方が合う印象はある。でも、M.デムーロは「リオンディーズはまだまだ良くなる。勝負は本番」。あくなき闘志にまた火がついた。