今回の取材では、開口一番「勝てんねぇ」と小牧騎手。3週間ほど勝ち星から遠ざかっているなかでの取材でしたが、先週の土曜日、久々にトップでのゴールを決めてくれました。今回は、4月3週目までのおもなレース回顧と、いまだ余震が続く熊本地震について、その思いを語ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)

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ソラを使う馬は本当に難しいわ

──では、3月中旬以降のレース回顧から。惜しいレースが続いていますが。

小牧　ここ3週間、勝ってないねぇ(取材後、4月23日・京都6Rで勝利！)。ここぞっていうときに、チョロ負けしてる印象やわ。レースによっては、いい競馬してると思うんやけど…。

──スワーヴカイザーの直線はシビれました(4月17日・阪神12R・4歳上1000万2着)。

小牧　あれは完璧に乗ったつもりやったんだけどね。早めに抜け出すとソラを使う馬やから、力を発揮させるには理想的な競馬やった。だから、「これでも勝てんか…」と思って、なんか余計にショックやったね。

──最後は首の上げ下げでしたからね。

小牧　うん。本当にショックやったわ。だから、その晩は嫁と娘を相手についつい飲み過ぎた(笑)。ソラを使う馬は本当に難しいわ。その前にはエノラブエナも…(4月10日・阪神12R・梅田S9着)。あんなに走らないわけがないのにと思っていたら、レース後に脚元の不安がわかったみたいで。

──そうだったんですか。確かに中団からの競馬になりましたが、直線は反応がなかったですものね。

小牧　本来なら、あんなに負ける馬じゃないからね。もう休養に入りましたわ。痛いところがあったのかもしれんけど、それは後からわかったこと。自分のなかでは、あれが最近のワーストレースやね。出遅れたのもあるし、なんかしょうもないレースをしてしまった。結果的に負けるにしても、もっといいレースがしたかった。今までそんなことなかったのに、この前はゲートのなかで固まってしまってね。首を横に向けたまま、なかなか真っ直ぐ向いてくれなくて。

──いつもよりイライラしていたというお話でしたよね。

小牧　そうそう、イライラしてた。今にして思えば、苦しかったのかもしれんね。期待していた馬やし、一昨年には騎乗停止になったりもして、思い出も思い入れもある馬やから。今はゆっくり休んで、元気に帰ってきてほしいね。

──はい。そういえば、九州では相変わらず余震が続いていますが、ご実家(宮崎)のほうは大丈夫でしたか？

小牧　うん、大丈夫です。かなり揺れたらしいけどね。それにしても、熊本は大変や…。僕も知り合いがいるから、心配やわ。昨日もその友達に電話してね。しばらく車の中で生活してるらしいわ。一度目の地震のあとに電話したときは「大丈夫」って言うてたんやけど、やっぱりその後に本震がきて怖くなったって。家が壊れたりはしてないらしいけど、やっぱりそこにおれんのやろうね。十三の飲み仲間なんやけど、荒尾競馬があったころは、ようその友達の家に泊まってたんですわ。息子を連れて行ったこともあるし、ホンマにようしてもらって。心配です。

──本当ですね。確か、阿蘇にも最近、ご家族で旅行に行かれてましたよね。

小牧　うん、去年の夏ね。それもそうやけど、大分にはついこのあいだ、関西騎手クラブの旅行で行ったばかりやで。由布院に行ったんやけど、由布院は阿蘇のすぐ近くやからね。そもそも実家が九州やし、熊本には友達がおるし、僕自身、この前(由布院に)行ったばかりだし。人事ではないなと思って、心を痛めてます。



──由布市も建物の被害がかなり大きいそうですね。

小牧　そうみたいやね。温泉街はそれほどでもないらしいんやけど、風評被害でお客さんが来ないって。とはいえ、まだ揺れてるもんね…。

──騎手クラブの旅行は4月の頭でしたよね。本当についこのあいだ。

小牧　そうそう。2年に1回の恒例行事で、これまでにも沖縄や韓国に行ったけど、今年はたまたま大分で。関西は集まりがいいから、ほとんどのジョッキーが参加してね。昼間は観光チーム、ゴルフチーム、釣りチームの3つに分かれて行動して、僕は観光チームで、バスで由布院に行ったりして。よう考えたら、2泊3日のあいだ、朝から晩までずっと豊くんと一緒にいたわ(笑)。部屋割りもなぜか、僕と豊くんとルメールやったし。当たり前やけど、そのときはまさかこんなことが起きるなんて思わずに飲んだくれていたけど…。競馬場で募金を募る以外にも、僕にできることならなんでもしたいと思ってる。