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香港で強すぎる馬は、東京では強すぎない?

  • 2016年06月02日(木) 12時00分


ほんの数年前まで、安田記念は1人気をナイガシロにしていいレースだった。
春のG1で言えば、天皇賞春の次に1人気が危ないレース。それが安田記念だった。

天皇賞春は今年も1人気ゴールドアクターが12着に負けたから、今年含めて過去10年での1人気成績は0-0-1-9になった(1人気で1着したディープインパクトは過去10年から消えてしまった…)。
しかし安田記念はちょっと違う。最近は1人気の成績がいい。
この10年で4-0-0-6。
直近では1人気3連勝中だ。

3年前の過去10年では1人気成績1-0-0-9だった。3年前といえば、ロードカナロアがマイルG1初挑戦で1人気1着したレースだ。あの頃は、むしろ1人気を必要以上に心配するムードがあったから、「ロードカナロアはナイガシロにできない」で進めるのも一苦労だった。なんせロードカナロアは1人気ではあったけれど、単勝オッズは4.0倍もついていた。けっこう心配されていたのがよくわかる。

1人気を無条件でナイガシロにできた4、5年前が懐かしい〜と遠い目をしたいところだけど、結局安田記念にちゃんとした1人気馬がいなかったから負けていただけで、ちゃんとした1人気馬が出れば勝つってことだろう。

ではちゃんとした1人気ってなんだろう?

■安田記念の1人気馬の取捨のためのイメージトレーニング

#1 過去1人気で勝利した馬をじ〜〜〜〜っと見る。
#2 過去1人気で負けた馬をじ〜〜〜〜〜っと見る。

過去10年で1人気で勝った馬
ウオッカ
ロードカナロア
ジャスタウェイ
モーリス

過去10年で1人気で負けた馬
オレハマッテルゼ
スズカフェニックス
スーパーホーネット
リーチザクラウン
アパパネ
サダムパテック

(今年はこんなことしなくても、もう答えが出ている気がするけれど、一応念のため)

#3 今年1人気になりそうな馬をじ〜〜〜〜っと見る。

モーリス!

(じ〜っと見る間でもなく、モーリス!)

#3 過去1人気で勝った馬と今年1人気になりそうな馬を見比べて、格的ハッタリに遜色ないなら、買い。遜色があったなら消し。

モーリス!遜色なんてあるわけない。G1・4勝馬に失礼だ。

#4 見極めのコツは国内のG1と海外のG1をダブルで取っているか?

東京で1、京都で1、香港で2
ダブルどころじゃない!ダブルの2倍だ。

#5 だとしたら、その馬の人気は相当高まっているはず。

予想では単1.8倍!
断然に決まっている!

#6 過去の10年の1人気馬の単勝支持率順の成績にその馬を照らしてみる。

14年 ジャスタウェイ   170円 1着
09年 ウオッカ      180円 1着 ←今年のモーリス(予想180円)
11年 アパパネ      220円 6着
07年 スズカフェニックス 360円 5着
15年 モーリス      370円 1着
13年 ロードカナロア   400円 1着
10年 リーチザクラウン  400円 14着
08年 スーパーホーネット 410円 8着
06年 オレハマッテルゼ  570円 10着
12年 サダムパテック   660円 9着

上にいるほどふつうにアツい。
1着鉄板の境界線は単2.0倍に思える。勝てるかもしれない、もしくは掲示板の境界線は単4.0倍に思える。

ロードカナロアとモーリスはよく勝った!
逆に言えば、G1未勝利で、しかも単3.7倍で去年勝ったモーリスは相当強い馬だったとも言えるし、去年よくぞ1人気になったとも言える。もちろん自分はナイガシロにして失敗した(ヴァンセンヌに一番期待して、2着でがっくりしたんだった!あ〜なんか思い出してきたぞ。あの頃、出遅れ癖のあったモーリスは1人気で出遅れるのでは?とも思ってナイガシロにしたんだった!)。

うん、モーリスに負ける材料はない。見つからない。
今年は、おそらく13頭立てくらいだと思うけれど、それもこれもモーリスに怖れをなしてのものだろう。本当はショウナンパンドラに出て来てほしかったけれど、出ないというなら仕方がない。

ちなみに安田記念が16頭立て以下になるのは、14頭立てだった1999年以来だ。

このときの1人気はグラスワンダーだった。
単勝130円。
ジャスタウェイやウオッカよりも人気だった。
しかし着順は2着。ハナ差でエアジハードに負けた。

グラスワンダーといえば、モーリスの父の父だ。
モーリスもグラスワンダーほどでなくても圧倒的1人気になりそうだ。

大丈夫かな?

いや、大丈夫だ。グラスワンダーだって負けたとはいえ、ハナ差だ。
たまたまだ。
こういう場合は、1人気で1着した他の馬たちの勝ち方を見ればいい(この10年で4-0-0-6)。

ウオッカ    2着に4分の3馬身差
ロードカナロア 2着にクビ差
ジャスタウェイ 2着にハナ差 
モーリス    2着にクビ差

ん?意外に接戦だな。みんなギリギリで勝っている。
念のため、その向こうの10年も見てみる。

その向こうの10年の1人気成績は3-1-1-5
馬券になったのは5頭

ローエングリン 3着 1着にクビ+4分の3馬身
グラスワンダー 2着 1着にハナ差
タイキシャトル 1着 2着に2馬身2分の1
タイキブリザード1着 2着にクビ差
トロットサンダー1着 2着にハナ差

2着に1馬身以上つけて完勝したのはタイキシャトルのみ。
馬券になるときはみんな接戦だ。
安田記念を1人気で1着するのは並大抵じゃないことがわかる。

だから極論すれば、こうなる。

モーリスはタイキシャトルならば、圧勝する。
モーリスはグラスワンダーならば、接戦で負ける。

タイキシャトルもグラスワンダーも単勝は130円だった。
連勝街道邁進中のモーリスを思えば、ここは全成績11-1-1-0で連勝街道をほぼまっとうしたタイキシャトルにダブらせたいところだ。

しかしグラスワンダーは父の父だ。おじいさまをナイガシロにしていいのか?
「おじいさまをナイガシロ」とか言われると、いや、「おじいさまをナイガシロにしてはいけません!」と道徳的についつい思ってしまう。道徳なんて忘れてしまったはずなのに、いったいどうしたことだ。

というわけで、道徳的におじいさまをナイガシロにするわけにはいかないので、モーリスは接戦でヤバイ可能性もある方向でナイガシロにしてみる。なんか道徳が歪んでいるようにも思えるけれど、過去の1人気が常に接戦で勝ち負けしていることを鑑みると、モーリスを少し心配してみたくなったのだった。

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モーリスに接近遭遇できる可能性のある馬はいるか?
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去年の安田記念に出走し、今年も安田記念に出る去年の成績上位馬
1着 モーリス  1:32:0
3着 クラレント 1:32:2 着差0.2
4着 フィエロ  1:32:4 着差0.4

去年のマイルチャンピオン(以下同じ)
1着 モーリス    1:32:8
2着 フィエロ    1:33:0 着差0.2
3着 イスラボニータ 1:33:0 着差0.2
4着 サトノアラジン 1:33:0 着差0.2

香港マイル
1着 モーリス    1:33:9
5着 コンテントメント1:34:3 着差0.4
9着 フィエロ    1:34:4 着差0.5

チャンピオンズマイル
1着 モーリス    1:34:0
2着 コンテントメント1:34:4 着差0.4

フィエロはマイルチャンピオンで0.2差2着したけれど、東京の安田記念で0.4差、香港で0.5差つけられているのが少し気になる。これならば、東京でポテンシャルをあげそうな馬に注目したほうがいいように思える。

イスラボニータ 東京4-1-3-1
サトノアラジン 東京2-2-1-1
フィエロ    東京0-0-1-2

イスラボニータは、マイルチャンピオンでは内の後方にいて、抜け出すのに苦労していた。それでも上がり1位で3着に食い込んだ。1人気だったから、3着ではダメだけど、フィエロやサトノアラジンより、価値のあるレースをしたとも言える。

思えば、エアジハードに騎乗していたのも蛯名だった。ダービーで涙を飲んだ蛯名だ。去年ヴァンセンヌに期待したのもダービーで涙を飲んだ福永の巻き返しがあると期待してのものだった。

福永は、4年前にダービーをワールドエースで負けて、翌週の安田記念をストロングリターンで1着した。そのリピートを狙ったのだった。安田記念はリピート・レースと言われるけれど、人的リピートもあっていい。そんな理屈だった。結果はクビ差2着だけれど、スムーズにさばけていたら、勝っていたかもしれない。そんな2着だった。

17年前、圧倒的1人気だったグラスワンダーをハナ差で負かした蛯名が、父の父グラスワンダーの圧倒的1人気馬を再び負かす。人的リピート、馬の系譜的リピート、どっちもあって、なんだかドラマチックだ。

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安田記念注目馬
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イスラボニータ
リアルスティール
コンテントメント

イスラボニータは東京でポテンシャルを上げて、モーリスは東京でポテンシャルを下げて、京都でつけられた0.2秒を詰めて、モーリスに接近遭遇する。

前走ドバイか?前走香港か?過去歴を見ると、前走ドバイの方が成績がいい。これだけで、リアルスティールはモーリスに接近遭遇できると思い込みたくなる、リアルスティールは、安田記念が得意なリピート厩舎でもある矢作厩舎の馬だ。そこも心強い。

「香港で強すぎる馬は、東京では強すぎない」
と、コンテントメントの陣営は想像し、東京でならもっとモーリスに接近遭遇できる。
なんてことを考えているのかな?考えていないのかな?さあどっち!?。

っていうか、肝心のコンテントメントが東京でポテンシャルの上がる保証はない。でも人気がないなら、その未知を覗きこみたくなる。2回も完敗した馬のホームにやって来るのだから、なんらかの可能性あってのものだろう。フィエロには先着できるとか考えているのかな?

仮にコンテントメントがぜんぜんダメでも、モーリスが強すぎなければ、「香港で強すぎる馬は、東京では強すぎない」と来年言える。そのためにも一応コンテントメントにも注目してみる。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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