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【川田将雅×吉田隼人×藤岡佑介】同期対談(2)『“アーモンドアイはまだ全力で走ってない”衝撃の走りを間近で見た川田騎手が証言』

  • 2018年12月19日(水) 18時02分
with 佑

▲この夏イギリスに8週間滞在した川田騎手、この機会で得た貴重な経験とは


川田将雅騎手、吉田隼人騎手をお招きしての「競馬学校20期生」プチ同期会。この夏、イギリスに滞在した川田騎手。「俺なりの答え合わせができた」と、遠征の収穫を語ります。その川田騎手、今年のGIで3度アーモンドアイの2着に。川田騎手が語ったアーモンドアイの底抜けの能力、さらに「アーモンドアイ、何してくれてんねん!」という佑介騎手のツッコミの意味は!?

(取材・文=不破由妃子)


「将雅は、外国人ジョッキーに立ち向かうエース格」


佑介 将雅はこの夏、イギリスに8週間行ったわけだけど、実際に現地の競馬に乗ってみてどんな収穫があった?

川田 まずひとつは、俺なりの答え合わせができたと思ってる。たとえばライアン(ムーア)にしても、日本とヨーロッパでは道中の走らせ方が違うんだけど、今まではなぜ違うのかをイメージすることしかできなかった。でも、実際にイギリスの競馬に乗ってみて、俺なりに答えを見つけることができたような気がする。いろんな競馬場で乗ることができたし、時間の使い方ひとつをとっても貴重な経験だったなと思うよ。

佑介 そういえば、1日に3つの競馬場で乗ったりしてたよね?

川田 うん。昼にサンダウン競馬場でひとつ、夕方にリングフィールド競馬場でひとつ、夜にチェルムスフォード競馬場で2つ乗った日があったな。

隼人 その3つの競馬場は近いの?

川田 車で2時間→1時間半→1時間半ていうところかな。

佑介 全然近くない…(苦笑)。

川田 1レース終わるごとに、着替える間もなく自分で運転して移動してた。日本では絶対にできない経験だから、今となっては貴重な時間だったなと思う。

佑介 本当は去年乗るはずがビザの関係で1年延びて、準備期間がしっかりあったぶん、正直、将雅ならもっと乗せてもらえるのかと思ってたよ。だから、やっぱり甘くないなって。最終的にいくつ勝ったんだっけ?

川田 30鞍乗って4つ。最初の1カ月はほとんど雨が降らなかったから、「馬場が硬すぎる」という理由で使う予定だった馬が使わなかったりするケースも多くてね。その時間がすごく長かったから、逆に30鞍も乗れたともいえるし。

佑介 そういう事情もあったんだ。しかも、けっこうチャンスのある馬を任されていたよね。

川田 向こうでお世話になった調教師が、「なんでも乗るというスタンスではなく、ある程度選択して乗ったほうがいい」とおっしゃったので、「じゃあ、そうします」ということで。

隼人 最初に言ってたけど、ライアンの乗り方の違いとか、今だからこそわかるんだよね。デビューして4、5年目の頃、周りの人に「海外に行かないの?」ってよく言われたけど、当時は「行ってどうすんの?」って思ってた。

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▲隼人騎手「デビューして4、5年目の頃、“海外に行かないの?”ってよく言われた」


佑介 今は気持ちが違うんじゃない?

隼人 いやぁ、英語も話せないし、競馬に乗るだけでも大変なんでしょ? その環境で何を学んだらいいのやら…。

佑介 まぁね。俺がイギリスに行っても、たぶん1鞍も乗れないと思うわ。そんななか、将雅はゴドルフィンにも乗ったからね。ゴドルフィンの勝負服を着ているのを見て、素直に羨ましかったよ。

川田 それを、メインのニューマーケット競馬場で乗れたことがうれしかった。

佑介 最高やな。本場のゴドルフィン!

川田 依頼をいただいて、すごく光栄だったよ。

佑介 この秋はオーストラリアのメルボルンカップにも乗りに行ったし、今年の将雅は充実しているよね。ファンから見れば、今はどうしても外国人ジョッキー対日本人ジョッキーみたいな構図じゃない? もちろん“負けたくない”という気持ちはみんな持っているだろうけど、なかでも将雅はエース格として立ち向かっている。まぁ、この秋は全力でぶつかっていって、ことごとく跳ね返されているわけだけど…。完璧に乗ったのに勝てないというのが、一番ストレスが溜まるんじゃない?

川田 正直、ストレスは溜まってないよ。対アーモンドアイでいえば、オークスのリリーノーブル、秋華賞のミッキーチャーム、ジャパンCのキセキと、全部違う馬で2着が3回あるんだけど、それぞれに力を出し切っての結果だから。

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▲リリーノーブルに騎乗したオークス、アーモンドアイの2着に (撮影:下野雄規)


隼人 なんかわかる。圧倒的な力差があるからなぁ。

川田 もちろん「負けて悔しくないのかよ」って思う人もいるよね。でも、どのレースも、アーモンドアイがいたからこその競馬でもあるので。自分の馬の実力をより細かく分析して、何ができるのか、何ができないのかを自分なりに把握した上で、何をどう駆使すれば少しでも早くゴールにたどり着けるのか、全能力を引き出すためには何をするのが一番なのか。そういうことをより考えて、実践した結果だからね。そこまでしても、振り向けば常に圧倒的な勢いでくるわけで。

佑介 ジャパンCのとき、ゴールしてすぐに後ろを見ていたけど、あれはなんで?

川田 それはね、3着馬との距離を確認したかったから。パッと見たとき、3馬身くらいあるなと思って、やっぱりそうだよねと思った。キセキはそれくらいの競馬をしてくれたからね。それでも圧倒的に強い馬が目の前にいるのが現実で。アーモンドアイという馬は、やっぱりとんでもなく強い馬なんだなって、毎度認識させられて終わるんだよね。

隼人 それにしても、レコードを1.5秒も縮めるってすごいな(ジャパンC)。

佑介 とんでもない時計が出たよね。ジョッキールームもざわついたもん。それだけアーモンドアイが全力を出さなきゃ勝てない競馬にしたのは将雅だし、その結果、あの時計が出ちゃったということ。

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▲ジャパンCはキセキで2着、佑介騎手「アーモンドアイが全力を出さなきゃ勝てない競馬にしたのは将雅」 (C)netkeiba.com


川田 いや、アーモンドアイは、まだ全力で走ってないよ(苦笑)。俺はゴール前の走りを一番近くで3回も見ているけど、まだ全力を出し切ってはいないと思う。

隼人 うん、そうかもしれない。ジャパンCでは、残り300mまで後ろを確認する余裕があったし、実際に追い出してない。鞍上に焦りがまったくないもんね。

佑介 そういえば、秋華賞の2着も将雅の技術が発揮されたレースだなと思った。ミッキーチャームは俺も乗ったことがあるけど、本当に難しい馬でさ。下手したら、スタートからビューッといって終わってしまう可能性まであるわけで。テン乗りであの競馬ができるのは、やっぱりすごいよ。

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▲秋華賞はミッキーチャームで2着「テン乗りであの競馬ができるのはすごい」と佑介騎手 (C)netkeiba.com


川田 佑介はあの馬の難しさをわかってるからね。

佑介 だからこそ、どう乗るかなと思って注目していたけど、やっぱり巧いなぁと思った。技術的なことはもちろんだけど、ああいう大きいレースでちゃんと1コーナーまでに態勢を決めてさ。あのレースは、普通に逃げた結果、運よく2着に粘りましたっていうレースではないからね。

隼人 まぁそのあたりの細かい技術は、こういう場ではなかなか伝えづらいけどね。

佑介 そうだね。ああいう難しい馬を乗りこなすだけではなく、しっかり能力を出させるということに関しては、ホンマに将雅はどんどん巧くなってる。

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▲「将雅は難しい馬を乗りこなすだけではなく、しっかり能力を出させる」


隼人 脂が乗ってる感じがするよね。

佑介 うん。だからね、GIをもっと勝って、早く慢心すればいいのにと思って(笑)。

川田 ……なんやそれ(笑)。

佑介 だって、慢心は後退につながるでしょ。

隼人 なるほど。その隙に俺たちが……(笑)。

佑介 将雅の性格を考えると、いい競馬をしながら負けているということは、次は“どうやったら自分がアーモンドアイのような馬に乗れるようになるか”を考えると思うから、この男の人並み外れたハングリー精神を煽る結果になっちゃう(笑)。俺からすれば、アーモンドアイ、何してくれてんねん! っていう感じやわ(笑)。

(文中敬称略、次回へつづく)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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