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ケイアイノーテックのダート挑戦、故郷の隆栄牧場、馬の画家

  • 2019年01月24日(木) 12時00分
 今週の根岸ステークスでケイアイノーテック(牡4歳、父ディープインパクト、栗東・平田修厩舎)がダートに初参戦する。

 ハイレベルと言われる4歳世代にあって、昨年のNHKマイルカップの勝ち馬だ。が、昨秋は、毎日王冠5着、マイルチャンピオンシップ11着、阪神カップ6着と、勝てないレースがつづいた。それぞれコンマ4秒、コンマ5秒、コンマ8秒差と、それほど大きく負けたわけではないのだが、大外から豪快に差し切ったNHKマイルカップでの強さからすると、やはり物足りない。

 母ケイアイガーベラはダートで9勝。うち2勝は重賞のプロキオンステークスとカペラステークスだ。

 一方、父ディープインパクトの産駒でJRAのダート重賞を勝ったのは初年度産駒のボレアス(2011年レパードステークス)のみ。昨年、アンジュデジールがJBCレディスクラシックを勝ったのが、産駒による初の交流GI制覇だった。ダートは鬼門とも言えるが、かつて「ディープ産駒は3000m以上で勝てない」と言われながら、サトノダイヤモンドとフィエールマンが壁を破った。ときを経るごとに欠点を克服していくのが名種牡馬であるから、ダートに関しても心配無用か。

 そうした血統的な背景からも、ケイアイノーテックのどんな新味が引き出されるか、注目したい。

 ケイアイノーテックの総合力の高さは、昨年のNHKマイルカップで2着以下に敗れた馬たちの「その後」が証明している。NHKマイルカップのあと、オープンと重賞で掲示板に載った馬たちを以下に列挙する(馬名の左はNHKマイルカップの着順)。

 2着ギベオン 中日新聞杯1着
 3着ミスターメロディ オーロカップ5着、阪神カップ2着
 5着プリモシーン 関屋記念1着
 6着パクスアメリカーナ リゲルステークス、京都金杯1着
 7着ダノンスマッシュ キーンランドカップ2着、京阪杯1着
 8着カツジ マイルチャンピオンシップ4着
 11着リョーノテソーロ エニフステークス、オーロカップ4着、ラピスラズリステークス3着
 12着タワーオブロンドン キャピタルステークス2着
 13着フロンティア 中京記念4着

 レース後に重賞を勝った出走馬が4頭というのは、2017年NHKマイルカップの1頭(リエノテソーロ)、2016年の4頭(ロードクエスト、レインボーライン、ブランボヌール、シュウジ)、2015年の4頭(アルビアーノ、グランシルク、ヤングマンパワー、ヤマカツエース)、2014年の3頭(ロサギガンティア、サトノルパン、エイシンブルズアイ)、2013年の2頭(レッドアリオン、コパノリチャード)などと比べても、水準以上であることがわかる。

 ケイアイノーテックのNHKマイルカップ優勝は、藤岡佑介騎手にとっても、亀田和弘オーナーにとっても初のGIタイトルであった。

 生産者である新冠町の隆栄牧場にとっては、1947年の桜花賞馬タカエノカオリ、1982年の朝日杯3歳ステークスを制したニシノスキーにつづく3頭めのGI(級)勝ち馬となった。現代表の飛渡隆さんの代になってからは初の栄冠だ。

 娘の飛渡さゆりさんは「馬の画家」として知られている。作品のひとつに、新冠の国道235号線に面した、馬が3頭疾走している大壁画がある。「ベンチタイム」というカフェの横だ。縦30m、横40mという巨大さで、2016年3月にリニューアルされた。飛渡さんが岩場に直接描いたわけではなく、彼女の原画を拡大してペイントされた。そのほか、ホッカイドウ競馬のポスターや、ポッカサッポロとタイアップした自動販売機の図案など、活動の幅は広い。また、隆栄牧場の厩舎の扉などに描かれている馬の絵も、彼女の手によるものだ。そちらはペンキを使用しており、10年ほど前に描いたものを、去年描き直したばかりだという。

 ケイアイノーテックの全兄フィアスインパクト(Fierce Impact)が、昨年12月26日、オーストラリアのATCサマーカップ(ランドウィック芝2000m、GIII)を優勝した。名牝と言える実績を残している母ケイアイガーベラは13歳とまだ若い。おとなしくて、賢く、とても扱いやすい馬だという。

 なお、昨年、地方競馬のダービーシリーズを2勝(九州ダービー栄城賞、高知優駿)したスーパージェットも隆栄牧場の生産馬だ。

 根岸ステークスは、ケイアイノーテックのがんばれ馬券を手に応援したい。

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作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊競馬ブック、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。netkeiba.com初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ダービーパラドックス』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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