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【長谷川浩大×藤岡佑介】『迫られた引退と後悔の念“やっぱりカッコいいんだよ、ジョッキーは”』第2回

  • 2019年02月13日(水) 18時02分
with 佑

▲23人ものジョッキーが引退した2012年、当時の心の葛藤を語ります


来月に新規開業する長谷川浩大技術調教師(元騎手)。長谷川調教師が騎手を引退した2012年は、厩舎制度の改革で23人ものジョッキーが引退した年。特に家族のいるジョッキーは選択を迫られ、長谷川騎手も例外ではありませんでした。

「二度とあの場所には行けへんこともわかっていたけど…」、引退してもなお、1年以上消えなかったという「ジョッキー」への憧れ。その正直な気持ちを聞き続けた佑介騎手の心にも、ある変化をもたらしました。

(取材・文=不破由妃子)


辞めた当時はまだ30歳、尽きることのない後悔の気持ち


──デビューから毎年順調に30勝以上を挙げられていた長谷川さんですが、2009年は3勝に止まりました。流れが変わったのは、やはりフリーになったことが大きかったですか?

佑介 何年目にフリーになったんでしたっけ?

長谷川 5年目かな。今でこそ先生には感謝の気持ちしかないけど、まぁ当時は若かったからいろんな思いがあって、先生と「一度厩舎を出るか」という話し合いになってね。そのときに、「厩舎を出るのであれば、ひとりで頑張ってみたいです」と。当時は俺も、相当自信があったからね。

佑介 一時、(中村厩舎と)疎遠になった時期がありましたよね(2009年〜2011年の3年間は、中村厩舎に一度も騎乗せず)。

長谷川 うん。まぁそれからだよね、流れが変わったのは。実際、努力してこなかったっていうのもあるからね…。今なんて、みんなすごくストイックにトレーニングをしたり、競馬や自分と真摯に向き合っているでしょ。それに比べると、やっぱり当時の俺の認識は甘かった。そこはね、すごく後悔してる。結局、そういう自分の甘さのせいでジョッキーを長く続けられなかったわけだから。

佑介 長谷川先輩の流れが変わったのを見て、「怖いな」と思ってました。長谷川先輩ほど巧いジョッキーでも、そういう流れって止められへんもんなんやなって。

長谷川 当時、よく佑介に相談してたよな。

佑介 お酒を飲んで、泣きながら話したこともありましたね。

長谷川 うん。身近で俺を見ている人たちにはどう映っているのか、これからどうしたらいいのか…、佑介の意見が聞きたかったから。そこから辞めると決めるまでにも相当悩んだよ。

──引退されるときの記事に、「今でも乗り役は楽しいし、高いレベルでいられたら一番よかったけど、(騎乗馬がなく)土日休みが続いたこともあるので、家族のことなどいろいろ考えて決めました」と書いてあって、すごく悩んだ末の決断なんだろうなと思っていました。

長谷川 そうですね。家族もいたから、自分本位にはできひんくて。ただ、踏ん張ろうと思えば、当時の僕の成績でも踏ん張れたと思うんです。でも、そこまで努力してきたという自負を持てなかったから、踏ん張り切れんかった。そういう自分に気付いたときに、これは区切りをつけなアカンなって思い始めたんですよ。

佑介 そのあたり、長谷川先輩は真面目なんですよね。

──ダメな自分ときちんと向き合うというのは、とてもつらい作業だと思います。でも、長谷川さんには、それができる強さがあった。だからこそ、今があるんだと思います。

長谷川 結果的にはそうですけど、辞めた当時はまだ30歳でしたからね。口では「調教師試験に向けて勉強します」と言いながらも、後悔しかしていなかった。

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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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