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雨の重馬場、進路取りとパワーが明暗/弥生賞

  • 2019年03月04日(月) 18時00分

史上初の1勝馬が1、2着独占


 雨の重馬場で行われた今年の弥生賞は、その評価がきわめて難しい結果となった。

 勝ったのは8番人気の伏兵メイショウテンゲン(父ディープインパクト)。1964年に創設され今年で56回になるが、重賞2着もなしのまったくの1勝馬が勝ったのは1987年のサクラスターオー以来のことになる。2着に突っ込んだシュヴァルツリーゼ(父ハーツクライ)も条件賞金400万の1勝馬であり、「1着、2着」を完全な1勝馬が占めたのは史上初めてだった。

 1勝馬(3戦1勝)として勝ったサクラスターオーは、「弥生賞→皐月賞」2連勝を達成したものの故障で日本ダービーには出走していない。しかし、7カ月近い休養明けで菊花賞を制するという数奇な競走生活を辿った馬だった。

 レース史上最高の単勝配当3910円で快勝した芦毛のメイショウテンゲンも歴史に残るチャンピオンになれるだろうか。殊勲の池添謙一騎手には、「すみれS」でホープフル2着のアドマイヤジャスタ(父ジャスタウェイ)を完封したサトノルークス(父ディープインパクト)もいる。どちらで皐月賞に向かうのだろう。

 日経新春杯、京都大賞典など35戦7勝もしたタフな母メイショウベルーガ(父フレンチデピュティ。池添兼雄厩舎)の主戦格でもあった池添謙一騎手は、こういう馬場も苦にしないことを予測していたが、未勝利戦を外にふくれて勝った馬だけに、終始有力馬を射程に入れながら早めに進出し、大事に外々を回るコースを選んだ。この好判断が大きかった。ディープインパクト産駒の中では母の影響を強く感じさせ、馬場は平気だった。「ディープインパクト×フレンチデピュティ牝馬」の組み合わせは、17年カデナ、16年マカヒキと同じでもある。

重賞レース回顧

母親譲りのパワーを武器に8番人気の低評価をひっくり返したメイショウテンゲン(撮影:下野雄規)


 一番外から2着に突っ込んだシュヴァルツリーゼも、しぶとく3着に押し上げたブレイキングドーン(父ヴィクトワールピサ)も、勝負どころからみんな外に回った馬であり、逆に、内ラチ沿いこそ避けたとはいえ、人気のニシノデイジー(父ハービンジャー)、ラストドラフト(父ノヴェリスト)、カントル(父ディープインパクト)の3頭は、快走した上位の3頭に比べると、内寄りを通ることになった。

 シュヴァルツリーゼは、大跳びのフットワークで、いかにもキャリア1戦らしい若さを思わせるレース運びだったが、最後の直線、外に回ってからの動きには迫力があった。2戦だけのキャリアで皐月賞に向かうかは、慎重な堀厩舎所属だけになんともいえないが、今年の有力候補はサートゥルナーリア(ホープフルS1着)、ダノンキングリー(共同通信杯1着)、アドマイヤマーズ(共同通信杯2着)など、近年のパターン通り、間隔をあけてぶっつけ挑戦になる馬が例年以上に多い。キャリアより素質や順調度がモノをいう可能性もある。シュヴァルツリーゼの場合は、東京コースの方が合うのは確かだが…。

 3着ブレイキングドーンは、2010年に「弥生賞1着→皐月賞1着→日本ダービー3着」と快走した父ヴィクトワールピサと同じように2歳12月以来の弥生賞出走になった。勝ちきれずに【1-1-1-1】。弥生賞で4勝目を記録した父のような急激な上昇はなかったが、レース内容はしぶとかった。渋馬場は巧者に近い。

 人気で4着(0秒4差)のニシノデイジーは強気にスパートするシーンが作れなかったが、ホープフルS3着以来で、プラス6キロの数字以上に余裕のある身体つきに映った。1勝馬に完敗の4着はあまりに物足りないが、渋馬場の巧拙はともかく、先着を許した3頭より通ったコースが(結果的に)正解ではなかった。別にここが本番ではない。皐月賞ではもっと研ぎ澄まされた馬体で巻き返してくるだろう。

 5着カントルは、全兄ワグネリアンも「弥生賞→皐月賞」と連敗したくらいだから悲観するにはあたらないが、条件賞金は900万。ここまで続けて5戦しているだけに状況は厳しくなった。

 途中まで1番人気だったラストドラフトは、C.ルメール騎手からの当日の乗り替わり。こういう馬場なので先手を奪ったのは途中まで正解とみえたが、自身「61秒8-62秒2(上がり37秒7)」のバランスで0秒7差の完敗。身上のバネをそがれる重馬場が予想以上に応え、追い出して失速してしまった。母マルセリーナは3戦目までかなり馬体重が減少しつづけたので、今回の4キロ減は応えないと思えるが、本番前に身体がデキ過ぎの印象はあった。鞍上はおそらく次も田辺裕信騎手と思えるが、今回の反動がなく巻き返してくることを期待したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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