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【新潟2歳S】切れ味と持続力を兼ね備え、さらなる成長で冬の大一番へ

  • 2019年08月26日(月) 18時00分

敗れた各馬も今後の展望に光明


 予測通りのスローな流れ「前半1000m通過61秒4」から、後半の長い直線勝負「11秒0-11秒0-11秒6=33秒6」になったのは、近年の典型的なパターンそのもの。また、勝ち馬の上がり3ハロンが「32秒8」になったのも、多くのファンが展望した中身だった。

 期待にこたえて勝った牝馬ウーマンズハート(父ハーツクライ)、上がりNo.2の33秒1を記録して小差2着した牡馬ペールエール(父ダイワメジャー)の評価を、これからの路線のためにできるだけ正確にとらえておきたい。過大評価は避けたいと同時に、良くある新潟2歳Sの結果ではないかと、過小評価することも、やっぱり避けたい。

 ウーマンズハートは、新馬戦の内容に見た目以上の中身が評価されていた。上がり32秒0が突出していただけでなく、後半3ハロンを自身はすべて「10秒台」で乗り切っていた。今回はその新馬戦とは相手も、芝コンディションも、レース全体の流れも異なったが、再び上がり32秒台を記録したこと。一瞬の切れ味だけではなく、最後に先に抜け出したペールエールを競り落とし、スピードの持続力を示した点を高く評価したい。鮮やかな切れを発揮して新馬勝ちした馬が、相手が強化した2戦目に、初戦の内容がウソだったような内容にとどまることは珍しくないが、この牝馬はそうではなかった。

 中2週の再度の遠征にもかかわらず、デビュー戦よりずっと気配は良かった。とくにバネを感じさせるトモのあたりを中心に身体のラインが、シャープに力強く映った。きちっと追って馬体重減がなかった点も素晴らしい。厚みを感じさせる馬体ではないが、非力感はない。このあと、12月のGIまで再鍛錬の充電期間を取るだろう。さらにひと回りのスケールアップが望める。ファミリーには短距離〜マイラー型が多いが、折り合い不安はなく、スマートな体型からこなせる距離の幅は広いのではないかと思える。テン乗りとなった藤岡康太騎手の落ち着いた好騎乗も、断然人気の2歳牝馬だけにことのほか光った。同じように鮮やかにこの重賞を制したハープスターに総合力で見劣らない馬に育って欲しい。

重賞レース回顧

2戦目も素晴らしい内容で勝ってみせたウーマンズハート(撮影:下野雄規)


 2着に負けたが、ペールエールの中身も初距離、初コースを考えると期待通りだろう。500kg前後の馬体は、まだ細身にも感じられる。筋肉がつきスケールアップするとき、同じMデムーロ騎手のアドマイヤマーズ(父ダイワメジャー)と似たタイプに育ってくれるのではないかという気がする。そのデムーロ騎手は、勝ち馬を絶賛していた。

 3着ビッククインバイオ(父キングズベスト)、4着クリアサウンド(父キズナ)の好走は、前後半「49秒1-45秒9」=1分35秒0のレースの流れにうまく乗ったものだけに、着順ほどの高い価値は避けたいが、それは恵まれたとか、中身はもう一歩という意味ではない。ともに仕上がりが早く、完成度が高いタイプではなく、今後の展望を明るくした善戦好走だった。

 2番人気のモーベット(父オルフェーヴル)は、残念ながら1秒4差の8着にとどまった。スタートもう一歩は新馬戦と同じで、最初からレースの流れに乗れずに、馬群を嫌うかのような追走だった。まだ今回が2戦目の牝馬、これで評価が急落することはないが、コースが異なるとはいえ、1分36秒4の走破タイムは前回を上回り、さらには自身の後半3ハロン33秒6も前回の33秒8を上回っている。レース慣れが必要であると同時に、レース全体が後半スピードアップするような流れ向きではないのかもしれない。プラス16kgの身体は太め残りではなく、いま成長中だからだろう。

 6着シコウ(父マツリダゴッホ)は、今回はちょっと気負いがあった。1400mで勝ち上がってきたが、真価発揮は2000m級ではないかと思えた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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