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フランス競馬をたずねて

  • 2019年10月12日(土) 12時00分

日本馬3頭も私も「未体験」の奥深さ


 11日(金)の朝、無事にフランスから帰国しました。と思ったら、とんでもない台風が関東を直撃しそうで、12、13日の競馬が中止になってしまいました。

 今回はあまりにも大型で強力な台風が襲ってくるため、「ウイニング競馬」は最小限の出演者でテレビ東京のスタジオから放送します。その“最小限”の中に私は入っていないので、今週は“休演”。私が日本にいるのに土曜日の番組をお休みするのは、今年2月に東京競馬が雪で中止になったとき以来、担当30年目で2度目。その2度が今年に立て続けに起きるとは!です。

 実は私、14日に放送する「ウイニング競馬特別版」もお休みします。これが、2度あることは3度あるの3度目ならいいんですけど…。

 さて、凱旋門賞。ご存知のように、当日は午前中までかなりの雨が降っていました。馬場状態の英語表記は“VERY SOFT”。日本馬3頭にとっては未体験で、「エッ、何?こんなところで走るの?」と思ったはず。案の定、結果は芳しくなかったですね。残念でした。

 一方、大本命のエネイブルはそういう馬場も平気でこなしていたものの、ヴァルトガイストに差されて惜しくも2着。結局、歴史的一大事(日本馬の初制覇or史上初の3連覇)はどちらも見られませんでした。5歳牡馬の優勝は2002年のマリエンバード以来ですから、それはそれで歴史的と言えるかもしれませんが…。

 まぁ私にとっては、新ロンシャン競馬場での凱旋門賞観戦だけでなく、未踏破の競馬場を訪ねることも目的だったので、あんまりガッカリ感はありませんでした。それより、凱旋門賞の翌日に見たニュイエ・シュル・ヴィコワン競馬場のクロスカントリーレースがメチャメチャおもしろかったので、むしろ行ってよかったと思っています。

 同競馬場での開催は年に2日だけ。今年は6日と7日の2日間でした。7日は、1日8レースのうち、6レースがトロット(繋駕競走)で、あとの2つがクロスカントリー。障害競走の一種なのですが、それがなんと、池に入るわ数十メートルの高さはあろうかという丘に登るわで、今まで見たことのないものだったんです。

 当日の最後に組まれていたクロカンレースの返し馬では、池に入っていった馬の騎手が落馬。さらにもう1頭、別の場所でも落馬があり、その馬は丘に登っていったきり、コースを外れてスタンドから見えなくなってしまいました。

 すると、係員を乗せたトラクターが猛スピードで後を追いかけ“捜索”を開始。しばらくして、丘のてっぺん近くから人に手綱を取られた馬が忽然と姿を現わすと、観客のどよめきが起きました。

 当然2頭とも除外になるかと思いきや、何事もなかったように出走。もちろん勝負にはなりませんでしたが、これでファンから文句が出ないのが驚きでもありました。いやいや、世界の競馬はまだまだ奥が深いですよ。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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