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穏やかな天候に恵まれた冬季繁殖馬セール

  • 2020年01月29日(水) 18時00分

売上総額は前年上回る9618万4000円


 年明けのトップを切って実施される「冬季繁殖馬セール」(主催・(株)ジェイエス)が、去る1月22日(水)に新ひだか静内の北海道市場を会場にして開催された。

 すでに報じられている通り、今年は上場頭数が前年比19頭増の55頭に達し、うち30頭が落札され、売却率は54.6%であった。

 受胎馬の上場頭数は34頭。そのうち落札されたのは14頭とやや少なく、売却率は41.18%。売却総額は4449万5000円。1頭当たりの平均価格は317万8214円。また空胎馬(未供用馬を含む)は21頭が上場され、うち16頭が落札、売却率は76.19%と、こちらは健闘した。空胎馬の売却総額は5168万9000円。平均価格は323万563円。

 これらを合わせた売上総額は、9618万4000円(税込)。平均価格は320万6133円である。

 昨年の同セールとの比較では、前述の通り、上場頭数が19頭増えた一方で、落札頭は4頭増にとどまったことから、売却率は17.6%下落した。また売上総額は、昨年の7922万8800円から1695万余り上昇した。平均価格は、昨年304万7262円に対し、今年度は15万8871円の増だが、この1年で消費税が8%から10%へと上昇しており、これらはいずれも税込み価格での表示なので、調整が必要であろう。

 参考までに、税抜きの本体価格を示すと、今年度は売上総額が8744万円、昨年が7336万円、平均価格は今年度が291万4667円、昨年度が282万1538円となり、前年より微増といったところである。

 なお、受胎馬の最高価格馬は、31番ダウンタウンガールの1375万円(税込)。同馬は2010年生まれの10歳栗毛で、父City Zip、母Beautiful Moment 母の父Crusader Sword、半兄にヘニーハウンド(父ヘニーヒューズ、ファルコンSなど4勝、種牡馬)がおり、今年度はシルバーステートを受胎している。最終種付日は3月20日。販売者は林正道氏。繋養は服部牧場で、落札者は竹園正継氏。

生産地便り

受胎馬の最高価格となったダウンタウンガール


生産地便り

ダウンタウンガール落札の様子


 受胎馬36頭の後、上場番号は100番台に飛び、101番から107番までが、不受胎馬及び「前年種付けせず」の空胎馬であった。この7頭の中で最も高かったのは104番レモンチャンの、836万円である。父デュランダル、母コールミースーン、母の父リファーズウィッシュという血統の10歳栗毛で、昨年はパイロを交配して不受胎に終わっていた。本馬自身、中央で4勝(獲得賞金4617万3000円)しており、産駒にコスモリモーネ(2勝、すずらん賞=3着、現役)のいる実績が買われた。販売者はケンレーシング組合、繋養牧場は小倉光博牧場、落札者は岡田スタッド。

 ここまではお世辞にも活発な取引とは言い難いムードで市場が推移していたが、俄然活気づいて来たのが201番以降の「未供用馬」が登場してからであった。

 201番からは未供用の部で、いきなり当セール最高価格となるジャーマンアイリスが上場され、1485万円まで競り上がった。2013年生まれの7歳芦毛の同馬は、父カネヒキリ、母ウィンターコスモス、母の父キングカメハメハで、母系はブルーアヴェニュー(クロフネの母)に遡る。中央2勝2着2回3着1回(獲得賞金2365万円)の成績を残しており、半弟アイスバブル(父ディープインパクト、4勝)、半兄グリュイエール(父ディープインパクト、5勝)、また全妹にバニーテール(4勝)がいる筋の通った血統だ。

生産地便り

当セールの最高価格となったジャーマンアイリス


生産地便り

ジャーマンアイリス落札の様子


 販売者は金子真人ホールディングス、繋養牧場は日高大洋牧場、落札者は(有)ムラカミファーム。

 終わってみれば、未供用馬は15頭中12頭が落札される盛況ぶりで、新しい血を求めて日高の生産牧場が積極的に参加し落札する姿が見られた。

 主催者を代表して(株)ジェイエスの大西恵介マネージャーは、「空胎馬と未供用馬の需要が多く活発な取引が目につきました。受胎馬に関してはばらつきがありましたが、注目されている馬については値段が付いていましたし、需要は依然としてあるものと考えています。サンデー系、キンカメ系の種牡馬が広がっていますので、それらを配合できる繁殖牝馬に人気が集まっている傾向はあると思いますね。競走を上がった牝馬を生産地でどのように流通して行くかが、まさに私共の狙っていたところでして、今回も馬主様からの上場馬が比較的高額で落札されていました。今後に向けては頭数の確保に努め、何とか魅力ある市場にして行きたいと考えています。今回も多数上場、またご購買頂き誠にありがとうございました」とコメントしていた。

 今年は今のところ日高は積雪がほぼないような状態で、冬季繁殖馬セール当日も終日穏やかな天候に恵まれ、ひじょうに助かった。このまま春を迎えるのならば言うことなしなのだが、もちろんそんなことにはなるまい。そろそろドカっと一気に雪景色になりそうな予感も漂う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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