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今年は売り上げが軒並みダウンのプレミアマーケット

  • 2020年09月16日(水) 12時00分

現地代理人を通じて購買する日本人も


 コロナ禍のため延期になっていたイヤリングセールのプレミアマーケットが、先週欧米で相次いで開催されたが、いずれも厳しい結果に終わっている。

 例年ならば8月半ばに開催される、アルカナ社の「ドーヴィル1歳セール」が、9月9日から11日にわたって開催され、3日間で310頭が総額3769万9700ユーロで購買され、平均価格は12万1605ユーロ、中間価格は7万ユーロだった。

 昨年とは開催フォーマットが変わったため、単純な比較は出来ないが、2019年8月に開催された「ドーヴィル1歳セール」と比較すると、総売り上げは11.9%ダウン、平均価格は35.2%ダウン、中間価格は44.0%ダウンだった。

 ただし、市場の規模で言えば、例年ならば「ドーヴィル1歳セール」の翌日に開催される、2歳戦向きの1歳馬を集めた「V2セール」を今年は吸収した形となったため、2つのセールを合算した昨年の数字と比較すると、総売り上げは前年比で19.6%ダウン、平均価格は12.3%ダウンで、こちらの数字の方が実態により近い印象がある。

 また今年の売却率は74.5%で、昨年の2つのセールを合わせた売却率の76.3%を、わずかに下回ることになった。

 一般景気の冷え込みによって、競馬産業界でもスポンサーによる後援の縮小が相次ぐなど、深刻な影響が出ている中での開催で、なおかつ、渡航制限で国境を超えた移動に困難が生じている中であったことを鑑みれば、想定の範囲内にある市況であったと分析されている。

 最高価格馬は、2日目の後半に登場した上場番号251番の父ドゥバウィの牝馬だった。同馬は、北米で芝のG1を7勝しているシスターチャーリーや、昨年のG1仏ダービー馬ソトサスらの半妹にあたるという超良血馬で、バーレーンの王族の代理人に250万ユーロで購買されている。

 現地まで足を伸ばすのが難しかった日本人購買者も、現地代理人を通じての購買を試みている。63万ユーロで購買された、G1仏千ギニー3着馬ワイルドチャイムスの半妹にあたる上場番号157番の牝馬(父フランケル)や、48万ユーロで購買された、今年のG1英二千ギニー2着馬ウィチタの従兄弟にあたる上場番号23番の牡馬(父ロペドヴェガ)、34万ユーロで購買された、G1サンタラリ賞勝ち馬クイーンズジュウェルの甥にあたる上場番号95番の牡馬(父シユーニ)らが、日本人によると見られる購買だが、いずれもフランスでのデビューを目指すことになる模様だ。

 一方、9月10日と11日の両日にわたってケンタッキーで開催された、「ファシグティプトン・セレックテッド・イヤリング・ショーケース」は、2日間で348頭が総額6176万5千ドルで購買され、平均価格は17万7486ドル、中間価格は12万ドルだった。

 ファシグティプトンは、例年7月にケンタッキーで開催しているジュライ・イヤリング、8月にサラトガで開催しているサラトガ・イヤリング、サラトガ・ニューヨーク産イヤリングを全て中止し、ここに集約しての開催となった。

 参考になるかどうかは覚束ないが、この3セールを合算した昨年の数字と比較をすれば、上場頭数が30%減となったために、総売り上げは28.3%のダウンに。一方で平均価格は、前年比で2.7%アップという結果となっている。

 今年の売却率は66.3%で、昨年の3セールを合算した売却率の69.9%よりは、若干下げたことになる。

 マーケットとしては縮小し、売却率も下がったが、良い馬にはそれなりの値段が付いたわけで、こちらも、市場を取り巻く厳しい環境に照らし合わせれば、まずまずの市況というのが市場関係者の見るところだ。

 ファシグティプトン・セレクテッド・イヤリングの最高価格馬は、初日の後半に登場した上場番号232番の牝馬(父クオリティロード)だった。母マーヴェラスがG1愛ギニー勝ち馬で、母の兄弟のグレンイーグルス、ハッピリーといった欧州のG1勝ち馬がいるという生粋の欧州血脈を持つ馬で、馬主のジョー・アレン氏が購買している。

 またここでも、20万ドルで購買された、アロゲイトの初年度産駒となる上場番号357番の牡馬をはじめ、日本人によると見られる購買が複数確認されており、こちらは日本でデビューすることになる模様だ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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