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【フィリーズレビュー】新進の種牡馬産駒が大活躍

  • 2021年03月15日(月) 18時00分

ディープを脅かす種牡馬の台頭は?


重賞レース回顧

フィリーズレビューの勝ち馬シゲルピンクルビー(c)netkeiba.com


 今年のフィリーズレビューの勝ち馬は、モーリスの初年度産駒シゲルピンクルビー。同じくこの週に行われた桜トライアルの「アネモネS」の勝ち馬は、リオンディーズの初年度産駒アナザーリリックだった。

 現3歳世代の初重賞「シンザン記念」を制したのはモーリスの初年度産駒ピクシーナイト。続く「フェアリーS」の勝ち馬はキズナ2年目の産駒のファインルージュ。「共同通信杯」はエピファネイア2年目産駒のエフフォーリア。

「チューリップ賞」の勝ち馬は同着で、ミッキーアイルの初年度産駒メイケイエールと、Kingmanキングマン(日本で初重賞制覇)産駒のエリザベスタワー。「弥生賞ディープインパクト記念」は、ドゥラメンテの初年度産駒タイトルホルダー。

 そのほか、「紅梅賞」のソングライン(父キズナ)、「ヒヤシンスS」のラペルーズ(ペルーサの初年度産駒)、「昇竜S」のカレンロマチェンコ(マクフィの日本供用開始後の初年度産駒)、「マーガレットS」のアスコルターレ(父ドゥラメンテ)……。

 もちろん、ディープインパクトや、ハーツクライ産駒も変わらず注目馬を輩出しているが、新進の種牡馬産駒の大活躍がつづいている。毎年、少しずつ種牡馬の世代交代は進んでいくが、生産界をリードしてきた著名種牡馬が相次いで亡くなって、世代別サイアーランキング(2018年生まれの3歳世代)には、「ドゥラメンテ、モーリス、キズナ、エピファネイア、ロードカナロア、リオンディーズ、ミッキーアイル、マクフィ、ホッコータルマエ…」などがそろって上位に並ぶことになった。

 フィリーズレビューの出走馬で本番の桜花賞を勝ったのは、最近20年間では「2017年レーヌミノル(2着→1着)、2008年レジネッタ(3着→1着)、2005年ラインクラフト(1着→1着)」の3頭にとどまる。

 また、レース史上このレースを最少キャリア3戦目で勝ったのは「1981年ブロケード(桜花賞1着)、1984年ダイナシュガー(桜花賞18着)、2004年ムーヴオブサンデー(桜花賞4着)、2015年クイーンズリング(桜花賞4着)」だけ。だから、桜花賞の有力候補になったとは言えないところはあるが、このトライアルが距離1400mで行われたのは今年で49回。

「33秒7-(11秒5)-35秒5」=1分20秒7の勝ち時計はレースレコードだった。たしかに今シーズンは高速の芝コンディションだったが、Aコース使用は連続5週目であり、レース史上初めて1分21秒0を突破した記録は価値がある。

 軽い馬ではなく、7着までの馬はすべて450キロ以上の馬格を持ったそれなりのパワーを兼備した馬であり。8着から18着までの11頭中、10頭までが450キロ未満の馬体重だった。人気のオパールムーンは436キロ。エイシンヒテンは440キロ。たまたまではなく、厳しい馬場コンディションだったともいえる。行く一手型は失速した。

 好スタートのシゲルピンクルビー(父モーリス)は、「前半33秒7→45秒2→56秒7→」のハイペースに一度下げる形を取り、さらにベテラン和田竜二騎手が4コーナー手前でひと呼吸待つ絶妙のスパートだった。最後の1ハロン「12秒2」とラップが落ちたところで鮮やかに差し切っている。半姉のシゲルピンクダイヤ(父ダイワメジャー)のこの時期は、スタートで行き脚がつかないところがあり、3戦目のチューリップ賞2着、4戦目の桜花賞も2着(ともに上がりは最速)は、追い込んで届かずの惜敗だった。シゲルピンクルビーのほうがレースセンスに恵まれている。この世代、阪神JFも、チューリップ賞も、そしてこのフィリーズレビューも、ゴールの瞬間、3-4頭が横に並ぶ大接戦が連続している。今回みせた勝負強さは大きな武器になるだろう。

 同じように激しい先行争いから一歩引くように進んだヨカヨカ(父スクワートルスクワート)は、残り1ハロンでは勝ったと思えたが、寸前に差されてしまった。しかし、最初は行くだけの単調なスピード型のように映ったが、レースを重ね、ビシビシ追いながらしだいにボリュームアップ。馬体重が増えているから素晴らしい。祖母ハニーバン(父Unfuwainアンフワイン)は、ジャパンCなどを制したピルサドスキー、2002年のエリザベス女王杯まで6戦無敗(通算8勝)だった名牝ファインモーションの半姉にあたる。父系は3頭ともにノーザンダンサー系。

 父はBCスプリント(スウェプトオーヴァーボードなどに完勝)の短距離タイプ(全8勝がダート7F以下)だが、今回、好位で折り合ったレース内容から、死角はあってもマイルをこなせないとはいえない。近年では少なくなった九州産馬ヨカヨカの初重賞制覇が、父の産駒の初のJRA重賞勝ちと重なって不思議ない。

 3着ミニーアイル(父ミッキーアイル)は、後方からすごい勢いで突っ込んできたが、ゴール寸前で鈍った印象があり、いまのところ、ベストは1400m以下かもしれない。

 人気のオパールムーン(父ヴィクトワールピサ)は、1分20秒2=「自身46秒7-33秒5」で突っ込んだ11月のファンタジーS(同じ阪神1400m)と比べると、1分21秒3=「46秒8-34秒5」はかなり物足りない。追い込み一手だけに、手ごろな頭数ならいいが、多頭数のレースで、こんな高速決着になっては苦しいのだろう。

 エイシンヒテン(父エイシンヒカリ)は、逃げ宣言をしていたが痛恨の出負け。追い上げる脚はみせたが、道中で動く形になって、この時計の決着では苦しい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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