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“梅雨のはしり”が競馬と野球に与えた影響

  • 2021年05月15日(土) 12時00分

もっとも早く梅雨入りした1956年は大変な年に…


 11日(火)、九州南部の梅雨入りが発表されました。ずいぶん早いな、と思ったら、これは史上2番目とのこと。1956(昭和31)年の5月1日が“最早記録”だそうです。

 そんなに早く梅雨入りした年なら、競馬や野球には雨の影響がいろいろと出たはず。さっそく調べてみました。

 その年、近畿は5月22日、関東は6月9日に梅雨入りしています。これは極端に早くないように思われますが、いわゆる“梅雨のはしり”の雨はけっこう降ったようです。

 その証拠に、中央競馬は大きなレースの開催日がことごとく雨に見舞われていました。

 重賞競走があった日の天候と芝の馬場状態で言うと、まず5月13日、阪神記念(前年と同年の2回しか行われなかったレース)当日の阪神競馬場は小雨で重。東京杯(今の東京新聞杯)が行われた東京競馬場は良馬場だったものの、天候は雨でした。

 5月27日、オークスデーの東京競馬場は小雨でやや重。同じ日、京都大障害とアラブのタマツバキ記念があった京都競馬場は小雨、不良となっています。

 そして6月3日、第23回日本ダービーは雨の中、重馬場で争われ、ハクチカラが優勝しました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、実はこの一戦で大きな落馬事故が起きています。

 27頭立てとなったレースは、外枠の馬が前に出ようと1コーナーめがけて内側に殺到し、前をふさがれた6番エンメイと8番トサタケヒロが落馬。エンメイは予後不良となり、騎乗した阿部正太郎騎手も瀕死の重傷を負って引退に追い込まれてしまいました。

 エンメイのオーナーだった作家の吉川英治は、これを機に馬主をやめてしまったほど。中央競馬会は委員会を立ち上げて原因を分析するとともに、事故防止策を協議しました。

 そこで決まった対策の1つが、ダービーは馬場状態の悪化が想定される梅雨に入る前の5月最終日曜日に開催する、というもの。この原則は翌年以降、しばらく堅持されました。

 先に、この年の関東の梅雨入りは6月9日と書きましたが、競馬に関して言えば、“はしり”の雨の影響は相当大きかったわけです。

 一方、プロ野球では、南海ホークス(今のソフトバンク)が、5月中旬から6月上旬の4週間で9試合しかできなかった、とか、近鉄パールスが中止になった試合を消化するため、10月初めに4日続けてダブルヘッダーを戦うハメになった、ということもわかりました。

 このように、史上もっとも早く九州南部が梅雨入りした1956年は、競馬にとっても野球にとっても大変な年だったわけです。

 それに次ぐ2番目の記録を作った今年、オークス、ダービーの日の天候や馬場状態はどうなるのか、ちょっと心配しています。

 で、ヴィクトリアマイルの予想は?ご承知のとおり、このところの“予想コンディション不良”のため、お休みさせていただきます!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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