14番人気で小差3着は痛快な快走だったバカラクイーン
マクフィ産駒初のJRA重賞制覇を成し遂げたオールアットワンス(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
特殊な直線1000mのアイビスサマーDは今年が21回目。ここまで独特の結果を示してきたが、今回はまさにパターン通りの結果になった。
これで21回中、14勝が牝馬(ちょうど3分の2)。中でも3歳牝馬は負担重量の恩恵を受け、きわめて好走率が高いことで知られるが、オールアットワンス(父マクフィ)が快勝して、通算【3-3-2-6】となった。馬券に絡んだ8頭はすべて最軽量の51キロ。
牝馬が連対しなかったのは、21年間にまだ2回しかない記録は守られた。
今年は14番、12番の1-2着だったが、馬番2ケタの馬が連対する記録は、これで20年連続となった。また、1番人気馬は9年連続連対(7勝)となった。
オールアットワンスは、楽々と好位につけ、ライオンボス(父バトルプラン)を目標にする理想のレースに持ち込めた。自身の中身は「22秒2-32秒0」=54秒2。追い出しを我慢した石川騎手の落ち着いたレース運びが光った。最後の200mを11秒1でまとめた内容は、時計、着差以上の完勝だった。通算【3-0-2-1】。負けた3戦も「0秒1-0秒2」の小差であり、現3歳世代の古馬混合重賞初の勝ち馬として、さらに上昇できる。
オールアットワンスは、種牡馬マクフィ(14歳)の日本に輸入されて初年度の産駒。JRA重賞制覇は同馬が初めてだった。母シュプリームギフトは全5勝中の4勝が芝1200m。祖母スーヴェニアギフト(USA)もスプリント戦に良績を残している。海外では産駒のこなす距離の幅は広いマクフィだが、オールアットワンスはフルにスピードが生きるレースがもっとも合うのだろう。
ライオンボスは、5月の韋駄天Sが負けすぎだったので陰りの心配もあったが、落ち着いていたのと、今回は高速の良馬場で58→57キロ。例年より組み合わせも有利だった。これでアイビスサマーDを中心に新潟の直線1000m【4-3-0-1】となった。54秒3(21秒9-32秒4)で負けては、3歳牝馬を讃えるしかない。これで57キロ以上の獲得賞金上位の牡・セン馬は負担重量の関係でどうしても勝てずに【0-3-0-17】。パターン通りになってしまった。
3番人気モントライゼ(父ダイワメジャー)は、迫力あふれる馬体で、いかにもこの距離向きと思えたが、自身「22秒2-33秒3」=55秒5の平凡な内容で後半失速してしまった。まだ苦しくなってから頑張ろうという根性がないのかと思えたが、レース後、猛暑だったため、「熱中症かと思える症状が出ていました(川田騎手)」とのコメントがあった。負けるにしてもモントライゼらしくない失速だったが、この暑さで体調に急変があったのが事実なら、これは仕方がない。早めに立ち直って欲しい。
ただ1頭だけ、果敢に内ラチ沿いを選んだバカラクイーンは、もし、一緒に内にいく冒険をしてくれる馬がいたら、もっと際どかったかもしれない。不利とされる内枠1番を引いてしまったため、例年より好コンディションだった芝を読んだ陣営の作戦に、菅原明良騎手の思い切りの良さが加わった徹底先行だった。映像の角度にもよるが、画面が変わるたびにひょっとして…と思わせた。14番人気で小差3着は痛快な快走だった。
好状態だった7歳牝馬ヒロイックアゲン(父ロードアルティマ)は、明らかに枠順の不利が大きい。斜めに走るように外を目指したが、馬群が密集する直後に回ってしまったから、どうすることもできなかった。
4番人気のタマモメイトウ(父エイシンフラッシュ)も同じように外に向かったが、密集した馬群の後方になっては苦しい。韋駄天Sはほとんど芝がないようなコンディションで、馬群がバラけたから再三進路を変えつつ突っ込めたが、今回はスペースがなかった。最後に馬込みを避けて内に入り、上がり32秒2は勝ち馬に次いで2位。差し馬が外に回ると逆に不利をこうむりがちなパターンになってしまった。
昨年54秒5で3着だった牝馬ビリーバー(父モンテロッソ)は、夏に向けて調子を上げてきたと思えたが、パドックの気配もう一歩。後半にスパートできなかった。