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【関屋記念】田辺裕信騎手らしい読みの効いたファインプレー

  • 2021年08月16日(月) 18時00分

雨の影響は少なくスピード系の馬に幸運だった馬場コンディション


 過去10年の勝ちタイム平均は1分32秒25(前半46秒46-後半45秒79)の高速レース。新潟の外回りの最後の直線は日本一の長さがあるだけに、猛ペースは少ない。決してハイペースが高速の結果をもたらしているのではなく、そこで毎年のように先行馬も好走するが、今年はそのパターンの典型だった。

 水ハケがいいとはいえ、予測されたより新潟コースへの降雨の影響は少なく、コンディションはほんの少し湿っている良馬場にまで回復したのは、スピード系の多くの馬に幸運だった。過去10年の前半1000m通過平均は「57秒98」。今年は58秒1。上がり3ハロン平均は「34秒27」。今年は34秒6で、決着タイムは「1分32秒7」。金、土の雨はほとんど関係なく、例年通りの時計だったから新潟の芝コースはすごい。

重賞レース回顧

重賞初制覇となったロータスランド(C)netkeiba.com、撮影:武田明彦


 勝ったロータスランド(父はRobertoの孫世代Point of Entryポイントオブエントリー)は好スタートを決め、行く馬を確認してから決して速くない流れに乗っての先行。最内の芝状態が悪くないのを読んでいたように、直線は逃げたマイスタイルの内から抜け出したのは、いかにも田辺騎手らしい読みの効いたファインプレーだった。

 今回の馬体重は462キロ。あまり馬体重に変動のない馬だが、これで全5勝を「462-468」キロで記録したことになった。輸入されたアニマルキングダムなどに勝った父の5つのG1勝ちは芝の9-12Fだが、この馬は少し寸詰まりに映る馬体なのでベストは1600-1800m級と思える。前回の5着は、久しぶりにコーナー4回の小回りでスムーズさはなかったとされたが、まったくその通りで、ワンターン(コーナー2回だけ)のコース向きだった。

 2着したカラテ(父トゥザグローリー)は、位置取りやペースなどほとんど東京新聞杯と同じような内容。人気のソングラインをピタッとマークできた。東京新聞杯と同じようにスパッとは切れないが、バテることなく一番苦しくなったところでもう一回脚を使えるから素晴らしい。こういう長い直線が合う。ステイゴールド一族らしく、まだこれからタフに活躍してくれるだろう。この馬、5勝もしているが、1、2、3番人気になったことは一度もない不思議な記録をつづけている。

 4着マイスタイル(父ハーツクライ)が前半1000m通過58秒1の速くないペースを先導し、人気の3歳牝馬ソングライン(父キズナ)には絶好の展開になったと思えた。

 これで伸びきれなかったのは、キャリアの浅い3歳牝馬だけに、初コースなど小さな死角が出たのかもしれない。道中、少しムキになっていたところはあるが、抜群の仕上がりだっただけにちょっとがっかりだった。NHKマイルCでは直線で早めに先頭に立って並ばれても粘ったが、スパートを待っても切れないタイプなのか、ここが今後の課題だろう。

 前半1000m通過57秒1だった新潟大賞典2000mと異なり、したたかな逃げに持ち込んだマイスタイルがあわやの4着。それだけ巧みな逃げ(自身46秒6-46秒3)=1分32秒9だったことになる。

 難しいペースではないのに人気上位勢は総じて案外だった。2番人気のシャドウディーヴァ(父ハーツクライ)は、最近はずっと崩れない好走がつづき、成績は安定していたが、この馬の死角はまだ2勝馬であること。強敵相手でも連には必要だが、単という馬ではない弱みが出てしまった。正攻法だと案外な面が出る。

 3番人気のアンドラステ(父オルフェーヴル)は、道中はカラテの直後。そつなく乗った印象だったが1分33秒2は自己最高タイムなので、雨の影響がほとんどなかった時計勝負の新潟のマイルは歓迎ではなかったということか。もう少し全体に時計がかかって欲しかった。

 5着だったグランデマーレ(父ロードカナロア)は、前半は中位のインで流れに乗っていたが、3コーナーあたりで外から来られ位置を下げざるをえなかったのが痛い。多頭数だから仕方がないが、直線も馬群をさばけず脚を余している。最後は上がり最速の33秒8で伸びていただけに残念だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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