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大塚騎手と木村調教師に和解成立 「指導の名を借りた暴力」をどう対処すべきか

  • 2021年10月25日(月) 18時01分
教えてノモケン

▲19年3月にデビューした大塚海渡騎手 (撮影:下野雄規)


 本年3月1日更新の当コラムで、2019年デビュー組を中心とした若手騎手の台頭と騎手界の世代交代について触れた中で、19年組の「影」の部分として、大塚海渡騎手(21、美浦・フリー)と、元の所属先だった木村哲也調教師(48)の間の暴行・パワハラ問題について言及した。

 大塚騎手は1月に茨城県警稲敷署に刑事告訴する一方、木村調教師を相手取って水戸地裁に損害賠償請求訴訟を起こしていた。刑事事件は捜査の結果、暴行の事実が認定され、土浦区検は6月30日に木村調教師を暴行罪で略式起訴し、土浦簡裁は7月12日に罰金10万円の略式命令を下した。

 これを受けてJRAは7月29日から調教停止とし、2度の裁定委員会を経て8月18日に3カ月の調教停止処分を正式決定した。処分期間は10月末で満了する。

 一方、民事裁判は当初、担当判事が和解を打診したが、大塚騎手側は「白黒をつける」姿勢を示し、5回の口頭弁論が行われたが、罰金刑が確定し、JRAの処分も出たことを受けて、改めて打診があり、10月8日付で和解が成立した。木村調教師が暴行・暴言について謝罪し、和解金を支払う内容。

 大塚騎手は応じた一番の理由を、「暴行・暴言への謝罪が盛り込まれていたこと」と文書で表明。「競馬サークル、スポーツ界をはじめ、世の中から暴言・暴行がなくなることを願っています」とし、和解金の使途については、同種事件の再発防止に「お役に立てていただける機関や団体を探して、全額寄付したいと考えています」と明らかにした。

 民事の和解が成立し、今回の件は一段落した。だが、国内競馬界、スポーツ界では、指導の名を借りた暴力や、力関係を背景にしたハラスメントの根が深い。しかも、今回は当事者の強い意思で表面化したためJRAも動かざるを得なかったが、従来は及び腰の対応が目立った。少子高齢化が急速に進む中、若い担い手の確保は競馬界の待ったなしの課題だが、暴力やハラスメントに厳しく対処できなければ、参入者が減り、持続可能性を脅かすだろう。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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