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【菊花賞】しっかり仕掛けてハナを取り切りV! “プロ魂”が見えた横山武史騎手の騎乗

  • 2021年10月26日(火) 18時00分
哲三の眼

菊花賞はタイトルホルダーが逃げ切りGI初制覇 (C)netkeiba.com


今年の菊花賞は4番人気タイトルホルダーが5馬身差で圧勝、鞍上をつとめたのは横山武史騎手でした。哲三氏も「とても価値が大きい」と話す今回の勝利。レースを解説しつつ、折り合いのタイミングやポジショニングの大切さについて語ります。

(構成=赤見千尋)

1番人気13着 悔しい負けの経験が活きた


 菊花賞は4番人気だったタイトルホルダーが逃げ切り勝ち。(横山)武史君の見事な勝負駆けが成功しましたね。

 前走のセントライト記念では1番人気13着という悔しい負けを経験しました。次に向けてのレースの中で、ワールドリバイバルの逃げに付き合う形で、想定よりも早く来られて包まれてしまった、という風に見えました。勝負のアヤもあり、周りのジョッキーたちにやられてしまいましたが、それが逆に今回に活きたと思います。

 枠順的には前走で逃げたワールドリバイバルが内にいましたから、どういう対処をするのかなと思っていたら、しっかり仕掛けてハナを取り切りました。レース前のコメントで、「折り合いに注意しつつ進めたい」と言っていましたが、ハナを取りに行って、そこから折り合いを付ける形。スピードに乗せてから折り合いを付けるのか、ゲートを出てすぐに引っ張って折り合いを付けるのか、ここは本当に重要なところで、スピードに乗せてから折り合いを付ける方が、後々有効に使える脚が溜められるというイメージです。

哲三の眼

折り合いをつけるタイミングが重要 (C)netkeiba.com


 1400mから、1600m、1800mのところで、14秒台13秒台のラップを踏めたことで、ある程度イケると思ったのではないでしょうか。逃げ馬の場合、3000mの中間地点にたどり着くまでに、どういうラップを刻んでどうおつりを残すのか、という組み立てで、レース前のコメントでは「セイウンスカイのようなイメージで」と話していましたが、その通りになりましたね。とてもカッコ良かったですし、もしあれで負けたとしても納得のいくレースだったと思います。

 前走も今回も僕はタイトルホルダーの馬券を買っているので、この2戦セットで納得出来たというか、一回はダメでも次はファンの期待に応えるという、プロ魂が見える騎乗でした。

騎手の腕が問われる最初の150m〜200m


 今年の武史君は皐月賞をエフフォーリアで勝ち、日本ダービーはハナ差で2着。馬は違いますが、この期間、いろいろと考えることがあったと思います。その中でGIでこういう勝ち方が出来たというのは、とても価値が大きい。正攻法の競馬で直線差し切りというのもいいけれど、こういう勝ち方は自分でトライしに行かないと勝てないですから。まだデビュー5年目の22歳で、こういう勝ち方が出来た騎手が何人いたでしょうか。

 僕自身の話をすると、先行を研究していって自分の形が見えて来たのは10年15年と経ってからです。武史君はいい経験を積んで、その経験の中で結果も出している。クラシック二冠でダービーは惜しい2着という、今年の三冠戦線を通して主役でした。

哲三の眼

「武史君はいい経験を積んで、その経験の中で結果も出している」(C)netkeiba.com


 2着だったオーソクレースのクリストフ(・ルメール騎手)は、馬の力を最大限に引き出すコース取りをしていました。外枠は難しかったと思いますし、その中で変に内に潜り込まず、馬の力を信じた騎乗ぶりでした。

 3着だったディヴァインラヴの(福永)祐一君もさすがでしたね。展開をしっかり読み取って、理想的な位置取りをしていました。

 4着だったステラヴェローチェの吉田隼人君は、早めに押し上げていって、人馬ともにやるべきことはやった結果だったと思います。

 これは僕の持論ですが、最後は馬が頑張ってくれるけれど、最初に頑張るのは騎手で、それは折り合いよりもポジショニングだと思っています。もちろんいいポジションに付けることがすべてではないし、馬によっても違ってきますが、最初の150mから200mが一番騎手の腕を問われると思っていて。圧倒的な力がある馬は別ですが、最初の位置取りで優位に立てる形を作ってあげることが大事です。長距離戦は特に騎手の腕が問われると言われますが、今回も上位に来たジョッキーたちはさすがの騎乗でした。

(文中敬称略)

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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