弥生賞を速い時計で勝った馬は春のクラシック路線でみんな快走している
ディープインパクト産駒として、7頭目の弥生賞勝ち馬となったアスクビクターモア(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
大事に乗りたいトライアルなので速い流れにならなかったが、記録されたタイムは2分00秒5「前後半61秒1-59秒4」。レース上がり35秒2。スローに近いバランスながら、2000mの弥生賞史上「3位タイ」の好タイムとなった。
2016年 マカヒキ 1分59秒9 皐月賞2着 日本ダービー1着
1993年 ウイニングチケット 2分00秒1 皐月賞4着 日本ダービー1着
2004年 コスモバルク 2分00秒5 皐月賞2着 日本ダービー8着
2007年 アドマイヤオーラ 2分00秒5 皐月賞4着 日本ダービー3着
2022年 アスクビクターモア 2分00秒5
芝コンディションの変化はあるものの、これまで速い時計で勝った馬は「皐月賞→日本ダービー」と続く路線でみんな快走している。
アスクビクターモアは父ディープインパクト産駒として、7頭目の弥生賞勝ち馬。母カルティカ(GB)は仏2100mのGIIIで3着があり、その父Rainbow Questレインボウクウェストは1985年の凱旋門賞2400m、コロネイションC12Fの勝ち馬。日本では直仔のサクラローレルが、天皇賞(春)、有馬記念などを制している。母の父としても非常に大きな影響力を示している種牡馬。
近年、弥生賞の快走馬は皐月賞で必ずしも成績は良くないが、アスクビクターモアは今回の勝利で中山芝【3-0-0-0】。皐月賞の優先出走権を獲得しただけでなく、しぶとい自在の先行力、順調の強みを生かし、本番の最有力候補の1頭となった。勝負どころの3コーナーまで、ずっと行きたがるのをなだめながらの先行だった。ロスは生じたはずだが、それで最後までバテなかったあたりスタミナ能力は十分。
1番人気のドウデュース(父ハーツクライ)は、流れに乗って4-5番手の好位追走。外からロジハービン(父ハービンジャー)が一気に動いたあたりで少し押し込められるシーンがあり、直線に向いてのスパートもスムーズではなかったが、勝ったアスクビクターモアをクビ差まで追い詰めた。連勝は止まったが、初距離2000mはまったく平気だった。残念なクビ差ではあるが、これまでずっと大事に馬群の外に回るレースを続けてきたが、今回は他馬を外に置くレースも経験できた。
ドウデュースの4戦はこれで「クビ」差の接戦が3回。4戦すべて0秒0-1差。勝負強いのは事実だが、鋭い切れを感じさせないのが小さな死角か。武豊騎手はこれで弥生賞成績【8-6-2-5】。連対率.667となった。
同じハーツクライ産駒のボーンディスウェイは、今回が6戦目。粘り込むタイプの印象が強く人気を落としたが、今回は好位のインから直線は外に出して伸びてきた。前半がスローに近いので各馬の上がりは速くなったが、35秒0は自己最高であると同時に、今回のレースでは2位タイ。確実に成長している。ファミリーは長くアメリカ血統だったが、母と祖母はドイツ産。スタミナと追っての味が加わっている。
4着ジャスティンロック(父リオンディーズ)は、間隔が空いた後の一戦。先行タイプではないので、今回は流れに恵まれなかった。後半はしっかり伸びて勝ち馬と0秒2差。
自身の2000mの時計を大幅に短縮してみせた。「2分05秒0→2分03秒3→2分00秒7」。次はさらに変わってくるだろう。
5着インダストリア(父リオンディーズ)は、最後の直線で大外から伸びて最速の上がり34秒9を記録したが、道中はスムーズではなく、外へ外へと行きたがって馬群を避けていた。コーナーの多い中山2000mにちょっと死角が生じたので、もともと予定のあったマイル路線ではないかと思われる。
マテンロウレオ(父ハーツクライ)は、この緩い流れに最初から行きたがってかかり気味になってしまった。仕方なくインで前に馬を置く形を取ったが本来のリズムを失い、最後、あまりムリはしなかった印象がある。厳しい流れの本番で巻き返したい。
アケルナルスター(父トーセンラー)と、メイショウゲキリン(父キズナ)は、ともに強気の挑戦だったが、残念ながら連戦の影響か変わり身に乏しかった。
きわめて流動的な勢力図が続いた今年、好内容の弥生賞で有力馬が加わってくれたが、休み明けになるキャリアの浅いグループとの比較は一段と難しくなった。