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福永祐一騎手の引退式に参加しました。

  • 2023年04月01日(土) 12時00分
3月に行われた、競馬学校時代の同期・福永祐一騎手の引退式に参加した常石さん。同期の新たなスタートに刺激を受けて、決意を新たにまた一歩踏み出します。

 日本、いや世界が沸いたWBC。侍ジャパンと共に戦ったすべてのチームの皆さんに拍手喝采です。野球を知らない人も釘付けになったことでしょう。

 歴史に残る名言「信じること」。

 信じる! ってとても大事だと改めて脳に刻む僕です。競馬も乗馬も馬を信じる、信頼していつも乗っています。

 新年度を迎え新たなスタートを切るみなさんへのエールになったことでしょうね。

 競馬界ではドバイワールドカップデーが行われました。大舞台で日本馬が大活躍!

 ドバイワールドカップ(ダート2000m)は、川田騎手の見事な手綱さばきでウシュバテソーロ号が1着でゴール。最後方からの凄い追い込み、世界の強豪馬たちを抑えての勝利! ヴィクトワールピサに次ぐ2頭目ですね。

 ドバイシーマクラシック(芝2410m)は、ルメール騎手を背中にイクイノックス号が圧巻の走りを見せ見事に勝利。今後の日本馬の活躍に大きな期待が寄せられることでしょう。関係者の皆様、本当におめでとうございます! 夢と勇気とエネルギーをいただきました。

 そして高松宮記念(芝1200m)。

 団野大成騎手、西村真幸調教師、初GI制覇おめでとうございます。ファストフォース号の力強い粘りが勝利を呼びましたね。この馬の適性を探し一つずつ積み上げ、重賞からGIへと導いた陣営の力がいい結果につながり最高です。おめでとうございます。今後が楽しみです。

日々是好日

ファストフォース号と団野大成騎手(C)netkeiba.com


 2023年3月4日は記念すべき日。

 福永祐一騎手の引退式に参加させていただきました。

 すばらしいセレモニーに立ち会え、感無量でした。和田竜二騎手が同期として参加できるようにいろいろ手配してくださいました。わっ君ありがとう。

 コロナ対策のため、式中はユーイチのそばには行けなかったけど、久しぶりに関係者の皆様と交流できました。奥様やお子様もいらして久々に話すことができ楽しかったです。

日々是好日

福永祐一騎手と


 奥様から「今日は、来てくれてありがとうございます」と声をかけていただき、ユーイチも部屋に来てくれて「おー、つねちゃん来てくれたんか? ありがとう」と。

 その後ツーショットも撮ることができてよかったです。

 やっぱり凄い功績を残したユーイチを尊敬します。これからは、「ユーイチ」と呼べませんね。

 お父様の洋一さんが落馬され44年、ずっとお父様の背中を追って騎手を続けてきた。

「多くの方々の助けがあり励まされて、父の念願だったダービーも3勝することができました。怪我もあったけど今無事に引退することができ最高の騎手人生です。これからは、調教師として新しい道へ進みますが、ファンの方に喜んでもらい、愛される馬を届けられるように頑張っていきます。応援よろしくお願いします」(福永騎手の言葉より)

 引退式にはお父様の洋一さんとお母様が来られ、ユーイチがお父様に花束を渡したとき、にこっと微笑んだのが最高でした。いい光景ですね。

 この場所に来られてよかったなーと思いました。お父様はずっとユーイチ騎手のことを見守っていたんだと感激しました。もちろんお母様も優しく微笑み、安堵感が伝わった瞬間でした。

 この引退式は、皆さんも生配信やテレビで見られたことでしょう。何度見ても素晴らしい引退式でした。調教師としてのユーイチへの期待が膨らみます。

 当日いただいた引退メモリアルブックを開いてみると、1ページ目にユーイチの横に僕が映ってる写真(競馬学校入学式の写真)がありました。ユーイチの騎手人生27年間の中にちょっとだけ参加できているわ、と嬉しくなりました(笑)。

 チューリップ賞の誘導馬騎乗も様になりかっこよかったです、ちょっと照れくさそうにしているのがユーイチらしい(笑)。

日々是好日

引退式当日、チューリップ賞の誘導馬に騎乗!


 新しく誕生する福永祐一厩舎。ますます競馬が盛り上がっていくでしょう。

 僕自身も2007年に引退式をしていただいたことを思い出しました。

 ユーイチに「ずっと見ているから頑張れよ」と肩をポンポンしてもらったこと。わっ君の司会で始まり「ゆっくりでいいよ、しっかり歩いておいで」と励まされたこと。武豊騎手から花束をいただき「頑張れよ!」と言っていただいたこと。

 寒い中、多くの騎手や関係者そしてファンの皆さん、懸命に看護やリハビリに尽力してくださった病院の方々や家族からいただいた温かい拍手が今でも聞こえてきそうです。

 おかげで僕は区切りをつけ、新しい道へ進むことができました。

***

 馬と一緒にいたいことにこだわり、いまはパリパラリンピックに挑む気持ちを持ち続けて、トレーニングをしています。

 3月20日、21日に御殿場馬術スポーツセンターでの強化合宿に参加してきました。

 騎乗レッスンでは、昨年11月の全日本パラ馬術大会に参加したヴァリアント号に騎乗。とってもしっかりしていて素直で力強い馬なので乗り易く、乗馬として最高の相棒です。

日々是好日

強化合宿にて、ヴァリアント号と


 指導していただいたのは、JRA馬事公苑で働いておられた篠宮寿々海先生(1998年世界馬術選手権馬場馬術競技に出場)です。

 僕は四脚揃えての停止が苦手で、馬の脚が前後してしまいがちでしたが、教えていただいた通りにすると、四脚ゆがみなく揃えて止めることができました。忘れずにしっかり覚えるよう、頭の中にいれました。

 大会の時は審判の前で挨拶することから競技が始まるのですが、きちんと四脚揃えて停止することでポイントアップにもつながり、競技への意気込みも変わっていくと思います。

 2日間のレッスンで篠宮先生からベリーグッドと褒めていただき、合宿に参加した成果がありよかったです。嬉しかったです。忘れるな! 自分に言い聞かせる。

 翌22日には明石乗馬協会でレッスンがありましたが、この時も停止することができよかったです。

 合宿では、実技レッスンの後は座学を勉強しました。座学は、木村有日子氏(FEIパラ馬術馬術審判員)にパラ馬術の基本を教えていただきました。

 馬場馬術とは『調和のとれた調教によって馬を幸あるアスリートに育て上げる。馬は穏やかで柔軟性のあるのびのびとしたフレキシブルな動きを見せるばかりではなく、自信を持ち、注意深く敏捷となって選手との相互理解が完璧な域にまで達する』

 馬の競技なのでアスリートに育てるのはとっても大事なことですが、とっても難しいですね。

 騎座をきちんと取り、馬の動きを邪魔をしないで美しく演技することを求められます。僕は左麻痺があるので、鐙に足がハマりにくく脚を上手く使えないのが悔しいです。乗馬は鞭を使わず脚で馬を動かすのでコントロールが難しいです。審判の基準は、まずは経路の正確さです。僕は左半側空間無視の症状で左側が見えにくいので、意識して左を見るようにしています。

 馬術のルールは今年から大きく変化しました。例えば、採点の基準で重要としているところは、正確性と表現力です。競技ではなく演技といわれます。

 これは健常者でもパラ馬術でも、変わらずに求められることです。益々厳しくなってきます。

 トレーニングスケールをピラミッド型にすると、リズム(常脚速歩駈足は何拍子なのか)・サプルネス(リラックス)・コンタクト(ハミを受け入れているか)・インパルジョン(後肢をエネルギッシュに持ち上げられているか)・ストレイトネス(後肢を体の下にまっすぐに踏み込ませる必要がある)・コレクション(プッシングパワーで前躯の軽快さが増す)など積み重なって完成していきます。

 各演技が10点満点で採点され7点くらいをとらないとパリパラリンピックを目指すのは厳しくなってきます。

 ルールが変化したことで選手の姿勢と扶助がさらに重要になってきます。鞍上でバランスよく安定した姿勢としなやかさが要求されますね。このしなやかさが難しいです。

 経路違反は2回なると失格になってしまいます。

 4分間、集中力を持続させますが、緊張すると馬も固くなるので楽しく演技することが必要です。

 まさに人馬一体で演技することが大事だと思うので、いつもアイコンタクトをとっています。ちょっとまずい乗り方をすると馬にそっぽ向かれてしまうんですよ。馬は人の気持ちがよくわかり僕たちに寄り添ってくれます。

 さぁ、ユーイチの新たな姿に刺激を受け、僕も頑張ります。まずははじめの一歩から踏み出していきたいです。ぐんと出遅れているんだけど(笑)。

日々是好日

同期の新たなスタートに刺激を受け、僕も頑張る!


 でも、気持ちだけはあります。WBCで大谷選手が言われたひと言「今日は、憧れるのは、やめましょう。今日は勝ちに行きましょう!」を合言葉にしよう。

 パラ馬術選手選考に参考資料としてのWEB面接もありました。ぼやっとしてられませんね。気合気合。僕も自分の力を信じることに集中です。

オカン 福永さんの引退式に参加させていただき大きな刺激をもらい、自分自身を見つめ直すいい機会になったようです。足元にも及ばないけど今、何をしなければならないのか自問自答です。強化合宿がいい刺激になりレッスンにも集中しています。忘れ物をしない、人の話は集中して聞く。見ていますよ。母もボケっとしてられませんね。気合集中。

 つねかつこと常石勝義&おかん

(文中敬称略、次回の更新は5/1(月)を予定しています)

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1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。

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