先週の血統ピックアップ

・5/21 オークス(GI・東京・芝2400m)
　直線半ばで先頭に並びかけ、楽々と後続を突き放したリバティアイランドが牝馬二冠を達成しました。2着ハーパーにつけた「6馬身差」は1984年のグレード制導入以降のオークスでは最大、勝ちタイム2分23秒1は歴代2位です。ラスト3ハロンが12.0-11.6-11.5という加速ラップだったので、まだまだ余裕がありました。

　ペースが速ければもっと速いタイムが出ていたでしょう。父ドゥラメンテは大レースにおける強さがセールスポイントで、本馬と同じく牝馬二冠を達成したスターズオンアース、中長距離でGIを3勝したタイトルホルダーなど、稼働中の3世代からすでに6頭のGI馬を出しています。母ヤンキーローズはオーストラリアで芝1400mと芝2000mのG1を2勝。距離の融通性がありました。2代母コンデサールは名牝ベストインショウ3×4で、リバティアイランド自身はそれを継続発展させる形で、ベストインショウの孫にあたるトライマイベストとエルグランセニョールの全兄弟クロスを持っています(5×4)。見事な組み立ての傑作配合です。

　ちなみに、牝馬三冠を含めてGIを9勝したアーモンドアイは、トライマイベストとロッタレースの4分の3同血クロス(5×2)を持っており、リバティアイランドと配合的な骨格がよく似ています。阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞に続き、このオークスでも公式レーティングでレース史上最高値を獲得する可能性が濃厚です。新時代の女傑が日本競馬史にどんな蹄跡を刻むのか、今後が楽しみでなりません。

・5/20 平安S(GIII・京都・ダ1900m)
　好位追走から4コーナー手前で先頭に立ったグロリアムンディが1番人気に応えました。ダイオライト記念に続いての重賞連勝です。父キングカメハメハは、これまでホッコータルマエ、チュウワウィザード、ジュンライトボルトなど多くのダート巧者を出しており、JRAのダート重賞勝利数は20勝目。グレード制導入以降、20勝に到達したのはゴールドアリュール(22勝)に次いで2頭目です。

　20勝のうち18勝はコーナー4つの中距離戦で、ワンターンのマイル戦が得意だったゴールドアリュールとはタイプが異なります。本馬は、キングカメハメハ系の成功パターンであるトライマイベストを強化する配合構成で、トライマイベスト≒カリヨンミス4×3という鮮やかな4分の3同血クロスを持っています。前述のとおりアーモンドアイもリバティアイランドもこのパターンから誕生しています。ここにきてひと皮むけた感があり、帝王賞に出られるようならおもしろいと思います。

今週の血統注目馬は？

・5/28 與杼特別(2勝クラス・京都・ダ1900m)
　ダート1900mに強い種牡馬はホッコータルマエ。2013年以降、この距離で20走以上した67頭の種牡馬のなかで連対率27.1％は第2位。当レースに産駒を送り込んでいる種牡馬のなかではナンバーワンです。キタノセレナードは2勝クラスに昇級してから6戦し、一度も掲示板を外したことがない堅実性がセールスポイント。4歳馬なので京都コースで走った経験はないものの、母の父がダートにおいても京都コースを得意とするディープインパクトなので適性面の問題はないでしょう。1800m→1900mの距離延長もプラス材料です。

今週の血統Tips

　きさらぎ賞2着馬オープンファイアが青葉賞出走を取りやめ、休養に入ったことで、今年の日本ダービーにディープインパクト産駒が出走する可能性はなくなりました。2011年から昨年まで12年連続で出走を果たし、優勝回数は史上最高の7回。逆にいえば、これほどの種牡馬がいなくなったことで、他の種牡馬にとってはダービー馬を出す可能性が格段に広がりました。netkeibaの日本ダービー単勝予想オッズを見ると、1番人気ソールオリエンス、2番人気スキルヴィングはいずれもキタサンブラック産駒。馬産地では今年の春、キタサンブラックにキャパシティを超える種付け申し込みが殺到し、社台スタリオンステーションが断るのに苦慮しているという話も漏れ伝わってきます。

　牝馬二冠馬リバティアイランドを出したドゥラメンテがもし生きていたら、人気はもう少し分散していたかもしれません。馬産地からはコントレイルの初年度産駒のデキが素晴らしいという評判も聞こえてきます。種牡馬勢力図は刻々と移り変わっており、どんどん認識をあらためていかないとすぐ時代遅れとなってしまいます。ダービーの翌週から始まる新馬戦には多くの新種牡馬産駒が出走を予定しています。レイデオロ、ブリックスアンドモルタル、スワーヴリチャードをはじめとする面々から、どの種牡馬が台頭してくるのか楽しみが尽きません。