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大敗は精神的な幼さによるもの? 血統的には重賞級の器を持つ一頭に注目

  • 2023年08月07日(月) 18時00分

血統で振り返るレパードS


【Pick Up】ミスティックロア:14着

 1コーナーで馬鹿ついて外にふくれ、その後もまったくエンジンが掛からず、1番人気を裏切りました。川田騎手は「精神面の幼さが出て、競馬になりませんでした」(ラジオNIKKEI競馬実況web)と敗因を語っています。

 父アロゲートは、アメリカでブリーダーズCクラシックを含めてG1を4勝した名馬。種牡馬としてもアルカンジェロ(ベルモントS)、シークレットオース(ケンタッキーオークス)などを出しています。わずか7歳で早世したため3世代しか産駒を残せず、現2歳がラストクロップです。2023年の北米種牡馬ランキングは現在21位。稼働世代が少ないことを考えれば上出来でしょう。

 JRAで走った産駒は12頭中10頭が勝ち上がり、連対率32.2%、1走あたりの賞金額260万円はきわめて優秀です。そして、1番人気の連対率は63.0%と抜群の成績なので、ムラ駆けタイプでもありません。

 今回の敗戦は、レース展開、相手関係、体調等によるものではなく、川田騎手が語ったように、ミスティックロア自身に何らかの精神的な問題が生じたことが原因です。

 次走以降、今回と同じようなトラブルが生じるかどうかは現時点では何ともいえませんが、コントレイルの母ロードクロサイトの4分の3弟にあたる良血でもあり、立ち直れば重賞でも勝ち負けに持ち込める器でしょう。

血統で振り返るエルムS


【Pick Up】セキフウ:1着

 2歳時の兵庫ジュニアグランプリ以来、久々の重賞勝利です。

 父ヘニーヒューズは、今年に入りペリエール(ユニコーンS)、ゼルトザーム(函館2歳S)に次いで3頭目の重賞制覇で、エルムSは昨年のフルデプスリーダーに続く連覇となります。

 2021年以降、全日本ダート種牡馬ランキング(中央ダート+地方)のトップを維持しています。2位シニスターミニスターは、ミックファイア、テーオーケインズ、グランブリッジといった大物を擁しているので、今年はこの2頭のハイレベルな競り合いが年末まで続きそうです。

 ヘニーヒューズはすでに高齢で、なおかつ種付け料が500万円(2023年=受胎確認後)と高額なので、日高の牧場目線でいえば、おいそれと交配申し込みをできるレベルの種牡馬ではありません。そのため、アジアエクスプレス、モーニンといった、父よりも種付け料が安い後継種牡馬も人気を博しています。

 前者の仔ワールドタキオンは今回セキフウの2着となり、後者は現時点で地方競馬のファーストシーズンサイアーランキングで独走しているだけでなく、2歳種牡馬ランキングでもトップに立っています。

 セキフウは、ビッグアーサー(高松宮記念、セントウルS)の半弟という良血なので、将来的には種牡馬となるかもしれません。ヘニーヒューズ系の人気ぶりから考えて、多くの花嫁を集めるでしょうし、兄ビッグアーサー同様、成功する可能性も十分あると思われます。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【ストームキャット】

 現役時代にヤングアメリカSという2歳G1を勝ち、ブリーダーズCジュヴェナイルはハナ差2着。成績だけを見ればごく普通のG1馬でした。ただ、母、母の全弟、妹がそれぞれ複数の重賞を勝っていることから血統的な評価は高く、種牡馬としては初年度から大成功を収めました。

 アメリカ血統らしく仕上がりが早く、本質的にはマイルがベスト。アメリカのダートだけでなくヨーロッパの芝でも大物を出しました。

 スピード勝負に強いという特長がわが国の高速馬場にうまくフィットし、たとえば「父ディープインパクト、母の父ストームキャット」の組み合わせは、キズナやリアルスティールなど国内外で9頭のGI馬を出しました。「父キングカメハメハ、母の父ストームキャット」は、稀代のスピード馬ロードカナロアを出しています。

 産駒は気ムラな面も垣間見えましたが、代を経てそうしたところは見られなくなっています。

 父系は、ハーランを経たイントゥミスチーフの系統、ヘネシーを経たスキャットダディの系統、ジャイアンツコーズウェイを経たシャマーダルの系統などが世界的に発展しています。わが国ではヘニーヒューズ、ドレフォン、ブリックスアンドモルタルなどが父系の伸長を担っています。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「昇級初戦に強い血統は?」

 クラスが上がると、当然のことながら相手が強くなるので、苦戦するのが普通です。ただ、種牡馬によってはそうした条件でもへっちゃら、というタイプもいます。

 たとえば、ルーラーシップ、キタサンブラック、オルフェーヴル。この3頭は、好調時は馬がどんどん良くなる傾向があるので、昇級戦で好成績を挙げています。

 外国に繋養されている種牡馬ではダークエンジェル。マッドクール、シュバルツカイザー、ダークペイジなどの父です。

 全体の連対率が25.2%であるのに対し、昇級戦に限ると42.9%と驚異的な成績。前走と同クラスに出走した場合は20.6%なので、むしろ昇級戦こそ狙い目です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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