スルーセブンシーズの凱旋門賞挑戦を血統面から回顧 父系が示す適性面のアドバンテージ
血統で振り返るスプリンターズS
【Pick Up】ママコチャ:1着
好位を追走したママコチャが直線半ばで先頭に立ち、マッドクールの猛追をハナ差抑えました。重賞初勝利がGI制覇です。
桜花賞、ヴィクトリアマイル、阪神ジュベナイルフィリーズなど6つの重賞を勝ったソダシの全妹。双方に騎乗経験のある川田騎手は「まったく違うタイプの馬」と評しています。ただ、能力の高さは共通しており、二度目の1200m戦でGIを勝ってしまうのですから、スプリンターとしてはかなりの器といえます。
クロフネ牝馬はスプリントレースに対する適性が抜群で、スプリンターズSは、スリープレスナイト、カレンチャンに次いで3頭目の勝利。レース当日の中山芝は、良馬場とはいえ時計の掛かるコンディションでしたが、ママコチャが属するウェイブウインドのファミリーは、ダートを苦にしないパワーが持ち味なので、これも追い風だったといえるでしょう。
奇しくもレース当日、全姉ソダシの引退が発表されました。いま最も勢いのあるファミリーですから、姉妹ともどもいずれは母としても成功しそうです。
血統で振り返る凱旋門賞
【Pick Up】スルーセブンシーズ:4着
日本馬は過去2着が最高着順(1999年エルコンドルパサー、2010年ナカヤマフェスタ、2012、13年オルフェーヴル)。スルーセブンシーズの4着はそれに次ぐ成績で、2013年のキズナと並ぶ歴代5位タイです。
ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルと同じくステイゴールドの直系で、この血統の凱旋門賞適性をあらためて証明しました。これまでGIを勝った経験がなかったにもかかわらず、これだけのパフォーマンスを披露したわけですから、明らかに適性面のアドバンテージがありました。今年は好天続きで勝ち時計が2分25秒50と速かったのですが、多少渋っても対応できたはずです。有馬記念に出てくるようなら楽しみです。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【シーザスターズ】
デビュー戦で4着と敗れたあと、引退レースの凱旋門賞まで8連勝し、通算9戦8勝の成績で引退しました。英ダービー、英2000ギニーなど計6つのG1を制覇し、カルティエ賞年度代表馬に選出されました。大種牡馬ガリレオの半弟にあたる超良血で、両馬の母アーバンシーは凱旋門賞馬。ちなみに、今年の凱旋門賞で3着となったオネストは、2代父がガリレオ、母の父がシーザスターズなので、アーバンシー3×3という配合です。兄と同じく種牡馬として大成功し、とくに2400m路線における強さは格別。大レース向きの底力には定評があります。日本ではまだ重賞勝ち馬が出ていませんが、母方にこの血を持つ馬がいずれ2400m路線で大仕事をしそうです。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「AIが血統を決める日は来る?」
配合を考える際、統計的なアプローチは不可欠です。現時点においても、血統表ソフトなどを使い、数値面から配合パターンの有効性を検証し、判断の補助としています。したがって、配合面でAIが開拓する領域はそれなりに大きいといえます。
ただ、仮にAIが推奨する種牡馬がランキング下位のマイナー種牡馬であった場合、果たしてそれを信用できるのかという問題があります。たとえば、AI予想が14番人気の馬を◎に抜擢したとして、それを買って外れたとしても数百円、数千円の損で済みます。しかし、サラブレッド生産は種付け料が高額ですから、AIの推奨種牡馬を簡単に鵜呑みにすることはできないでしょう。資金的な余裕のない生産牧場であれば、まず難しいと思います。
そう考えると、未来の種牡馬選定は、やはり人間の判断がベースにあり、AIはそれを補助する役割にとどまるのではないかと思います。