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新種牡馬ブリックスアンドモルタルは晩成型? ゴンバデカーブースの重賞制覇を振り返る

  • 2023年10月10日(火) 18時00分

血統で振り返る毎日王冠


【Pick Up】ソングライン:2着

 1番人気に応えることはできませんでしたが、直線でスムーズに馬群を捌けなかったこと、牝馬には過酷な57kgの別定重量、次走のBCマイルを見据えての仕上げだったことを考えれば、十分な内容だったと思います。

 次走のBCマイル(G1・芝8ハロン)は、米西海岸のカリフォルニア州サンタアニタ競馬場で行われます。速い時計が計時されやすい競馬場で、直近5回の平均勝ちタイムは1分32秒25。日本馬にとってはヨーロッパ競馬よりも走りやすいといえるでしょう。序盤からハイペースで展開する消耗戦になるので、母の父シンボリクリスエスが伝えるスピードの持続力は強力な武器となるはずです。

 当地で行われた2014年の勝ち馬カラコンティは、近い世代にサンデーサイレンスとストームキャットを併せ持っていました。ソングラインは、父キズナがサンデーサイレンスとストームキャットを併せ持つ配合構成。これらの血は高速決着でより強さを発揮するのでレース適性は十分でしょう。4代母ソニックレディは、欧州でG1を3勝した名牝で、BCマイルには二度挑戦して7着、3着と勝てませんでした。それを超えてほしいものです。

血統で振り返るサウジアラビアRC


【Pick Up】ゴンバデカーブース:1着

 最後方追走から鮮やかに突き抜け、デビュー2連勝で重賞を制覇しました。ラスト3ハロンが11秒7-11秒2-11秒3という決め手勝負ですから、普通はなかなか差がつかないものですが、抜け出すときの脚が素晴らしく、後続に2馬身差をつけました。ここでは役者が違ったという印象です。

 父ブリックスアンドモルタルは新種牡馬。現役時代はアメリカの芝路線でG1を勝ちまくり、年度代表馬のタイトルを獲得しました。6月に産駒がデビューすると、1、2週目に1勝ずつ挙げたものの、そこから2ヵ月ほど勝てない時期が続きました。自身が古馬になってから本領を発揮したように、もともと仕上がりの早いタイプではありません。8月下旬からようやくエンジンが掛かりはじめ、そこから2ヵ月弱の間に6勝を挙げています。これから冬にかけてさらにペースアップしてくるかもしれません。

 母アッフィラートは中山牝馬Sで3着という成績があります。母の父ディープインパクトは、非凡な切れ味を伝えるので、ハービンジャー、ルーラーシップ、モーリスといった、少し決め手を強化したい種牡馬と好相性を示しています。ブリックスアンドモルタルは現役時代、稲妻のような末脚がセールスポイントでしたが、アメリカよりも決め手が求められるわが国においては、ディープインパクトを入れて切れ味を強化する、という配合の方向性は正しいのだろうと思います。

 新馬戦も今回も、馬群に入れる競馬をしていないので、今後の課題は揉まれる競馬でお行儀よく走れるかどうか、といったあたりになりそうです。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【テスコボーイ】

 1970年代から80年代にかけて、日本競馬にスピード革命をもたらしました。1967年にイギリスから輸入され、1974、75、78、79年と4回チャンピオンサイアーの座につきました。その父系は半世紀以上を経た現在も、ビッグアーサーなどに受け継がれています。20世紀半ばの最も優秀なスピード型種牡馬といえば、英愛と北米の双方で首位種牡馬となったナスルーラ(1940年生)ですが、テスコボーイはその直系の孫で、トウショウボーイ、テスコガビー、キタノカチドキ、サクラユタカオー、ハギノカムイオーをはじめ多くの名馬を送り出しました。

 トウショウボーイは日本で初めて芝1600mを1分33秒台、芝2000mを1分58秒台で走った画期的なスピード馬で、テスコガビーは桜花賞を大差、オークスを8馬身差で圧勝しました。サクラユタカオーは毎日王冠、天皇賞・秋で、それぞれ芝1800mと芝2000mの日本レコードを樹立しました。サクラユタカオーの仔サクラバクシンオーは近年最高のスプリンター種牡馬となり、現役時代に史上初めて芝1400mで1分20秒の壁を破りました。その息子がビッグアーサーです。テスコボーイは気難しさを伝える血でもありますが、近い世代に一本入るだけでスピード面は安心、と思えるほど存在感のある優秀な血でした。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「冬に向けて準備したい! 寒さに強い血統っている?」

 冬場はダートの番組が増えます。したがって、基本的にダート向きの種牡馬は冬季の成績が上昇する傾向が見られます。シニスターミニスターもマジェスティックウォリアーもそうです。

 2021年から全日本ダート種牡馬ランキング(中央ダート+地方)でトップの座にあるヘニーヒューズは、明らかに冬季の成績が優れています。3〜10月の連対率が18.8%であるのに対し、11月〜2月は20.7%と上昇します。

 芝向き、または芝・ダート兼用タイプの種牡馬でも、たとえばロードカナロア、ミッキーアイルなどは冬季の成績が優れています。気温が下がるこれからの時期は積極的に狙ってみたい種牡馬です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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