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鋭い末脚を見せたマスクトディーヴァ 血統的に得意でないコースでの走りは次走に期待大

  • 2023年10月16日(月) 18時00分

血統で振り返る秋華賞


【Pick Up】マスクトディーヴァ:2着

 リバティアイランドの牝馬三冠を阻止することはできませんでしたが、ラストの末脚は迫力十分。1馬身まで差を詰めました。2代母ビハインドザマスクは京都コースでスワンSと京都牝馬Sを鋭く差し切った馬ですが、その面影が重なったファンも多いかと思います。

 もちろん、勝ち馬はかなり早めから仕掛けていたので、ゴール前の勢いの違いは仕掛けどころの違いによるものが大きく、両者の間にはまだそれなりの能力差はあると思います。ただ、芝1800mのJRAレコードを樹立した前走ローズSのパフォーマンスと合わせて、3歳牝馬ナンバーツーの座は確定したといえるでしょう。

「ルーラーシップ×ディープインパクト」の組み合わせは、キセキ(菊花賞)、ドルチェモア(朝日杯FS)、エヒト(七夕賞、小倉記念)、ドゥアイズ(阪神JF・3着)をはじめコンスタントに活躍馬が出ているニックス。脚質的に直線の長いコースが合っており、この配合の京都内回りコースの連対率が19.2%であるのに対し、外回りは27.8%という数値からも、それは裏付けられます。

 今回は決して向いているとはいえない内回りコース。それでいてあのパフォーマンスを披露したのですから能力は高く、次走、どのレースになるのか未定ですが、仮にエリザベス女王杯(京都外回り)かジャパンC(東京)に出てきたら侮れません。成長力があるタイプだと思われるので、これからまだまだ強くなるはずです。

血統で振り返る府中牝馬S


【Pick Up】ディヴィーナ:1着

 母ヴィルシーナは、現役時代にヴィクトリアマイルを連覇し、3歳時の牝馬三冠はすべてジェンティルドンナの2着でした。ジェンティルドンナは繁殖牝馬としてエリザベス女王杯とオールカマーを制したジェラルディーナを産んでいるので、2012年の牝馬三冠を争った2頭は、いずれも重賞勝ち馬の母となりました。

 ちなみに、ディヴィーナとジェラルディーナは、奇しくも「父モーリス、母の父ディープインパクト」という配合。この組み合わせは成功しています。

 モーリス産駒は東京芝1800〜2000mの成績が特に優れています。連対率35.5%、1走あたりの賞金額427万円は、2013年以降に同条件で50走以上した55頭の種牡馬のなかでナンバーワン。さらに、母の父にディープインパクトを持つ馬に限ると、連対率46.7%、1走あたりの賞金額512万円という驚異的な成績となります。

 1800mをこなしたことで今後の選択肢は広がりましたが、左回りに比べると右回りのパフォーマンスはイマイチなので、仮に中山牝馬Sや福島牝馬Sに出てきたとしても買いづらいタイプです。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【アンブライドルド】

 強力な差し脚を武器とした大型馬で、1990年にケンタッキーダービーとBCクラシックを勝ったにもかかわらず、米年度代表馬には選出されませんでした。アメリカの二大レースを同一年に両方勝ちながら年度代表馬になれなかったのは、アメリカ競馬史上アンブライドルドだけです。

 父ファピアノはマイラー型の種牡馬でしたが、アンブライドルドは母の父がフランスのスタミナ血統ルファビュルーなので、距離は10ハロンをこなし、大レース向きの底力にも恵まれていました。フロリダの名門タータンファームズが誇る名血ドクターフェイガー≒シャレディ3×2という鮮やかな配合構成で、これが非凡な能力の源泉となっています。インリアリティとニックスの関係にあり、基本的にはダートの中距離タイプ。ヨーロッパの活躍馬は出ませんでしたが、日本ではレッドチリペッパーが富士Sと中山牝馬Sを勝ちました。

 エンパイアメーカーとアンブライドルズソングを通じて父系が発展し、前者の直系子孫に米三冠馬アメリカンファラオ、後者の息子にアロゲート(BCクラシック、ドバイワールドC)がいます。また、3年連続米チャンピオンサイアーとなったタピットの母の父でもあり、同馬は近年のアメリカ最強馬フライトラインの父となりました。現代アメリカの最重要血脈のひとつといっていいでしょう。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「色んな種牡馬で名馬を生み出す牝馬に共通項ってある?」

 ロベルトを抱えた牝馬は、母となって大成する傾向が見られます。ハシリ(Hasilli)、スライトリーデンジャラズ(Slightly Dangerous)、ユアソースリリング(You'resothrilling)、マグニフィセントスタイル(Magnificient Style)、キャバレー(Cabaret)などなど。父を問わず優秀な仔を出しています。

 わが国はモーリス、エピファネイア、ナダルなど、ロベルト系種牡馬が存在感を示しています。これらの血を受け継ぐ繁殖牝馬は注目です。先日引退を発表した牝馬三冠馬デアリングタクト(父エピファネイア)は期待大でしょう。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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