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“大外の壁”をこじ開けたスターズオンアース 名馬を送り続ける牝系に今後も期待大

  • 2023年12月25日(月) 18時00分

血統で振り返る有馬記念


【Pick Up】スターズオンアース:2着

 有馬記念の大外16番枠は、レース創設以来一度も馬券圏内に来たことがありませんでした。ジンクスではなく、外枠が不利、という中山芝2500mのコース特性によるものです。その岩盤のような厚い壁を、スターズオンアースがこじ開けました。2着とはいえ、快挙といえるでしょう。

 母サザンスターズは、オークスと阪神JFを勝ったソウルスターリング、アルテミスSを勝ったシェーングランツの半姉。2代母スタセリタは、仏オークス(G1・芝2100m)など6つのG1を制した名牝です。スタセリタが抱える異系のドイツ血統は素晴らしく、このファミリーはこれからもわが国の競馬にハイクラスな名馬を供給しつづけるでしょう。

 ドゥラメンテ産駒は今年、リバティアイランド、ドゥレッツァ、シャンパンカラーがGIを制覇。底力を求められる大一番に強い、という特長があります。前週の朝日杯FS終了時点で総合種牡馬ランキング第2位につけており、首位ロードカナロアと約3億円の差がありました。有馬記念でスターズオンアース、タイトルホルダーが2、3着に食い込んだことにより、この差を一気に逆転しました。現在、約3500万円の僅差でドゥラメンテが首位に立っています。

 JRAの開催は残り1日、NARは31日まで開催があります。ドゥラメンテが逃げ切るか、ロードカナロアが再逆転するか、近年稀に見る激しいチャンピオンサイアー争いから目が離せません。

血統で振り返る阪神C


【Pick Up】ウインマーベル:1着

 父アイルハヴアナザーは、ケンタッキーダービーとプリークネスSの米二冠を制覇した名馬。新冠のビッグレッドファームで種牡馬入りし、6年供用されたあとアメリカへ帰国しました。

 アメリカ産馬だけあってパワー型の産駒を多く出し、全体の勝ち星のうち芝は23%、ダートは77%。アナザートゥルース、オメガレインボーといったダートで活躍する馬が目立ちます。

 ウインマーベルは、函館2歳Sで2着となったウインジェルベーラの全弟、母コスモマーベラスは愛知杯2着馬、という血統背景から芝で活躍しています。「アイルハヴアナザー×フジキセキ」の組み合わせは、アナザートゥルース(ダイオライト記念、アンタレスS)と同じ。同一種牡馬の芝とダートの代表産駒がそれぞれ同じ組み合わせ、というのもレアケースでしょう。

 この組み合わせはラストコーズ≒ミリセント4×5という相似な血のクロスが生じるためか相性抜群。これまでに12頭出走して8頭が勝ち上がり、連対率31.7%、1走あたりの賞金額440万円という好成績を挙げています。アイルハヴアナザー産駒全体は連対率13.8%、1走あたり116万円なので、明確なニックスといえます。これで重賞2勝目、他にスプリンターズSで2着となっています。アイルハヴアナザー産駒の牡馬は晩成傾向があるので、来年も期待できそうです。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【リファール】

 大種牡馬ノーザンダンサーの息子たちは、名前からの連想で、ニジンスキー、ヌレイエフといった著名なバレエダンサーの名を授けられるケースが目に付きますが、リファールもその一頭です。父ノーザンダンサーは北米で繋養されたため、主要な後継種牡馬のほとんどは北米血統で構成されています。リファールは珍しく母方が純粋なヨーロッパ血統。父と同様、コロッとした小柄な馬体で、現役時代はフランスでジャックルマロワ賞などを制しました。

 同国で種牡馬となり、凱旋門賞馬スリートロイカスを筆頭にレーヌドサバ、ダンシングメイド、ファーリーなど次々と一流馬を出し、アメリカに移ってから80年代最高の名馬ダンシングブレーヴをはじめ多数の世界的な競走馬を送り出しました。

 母方の欧州血統の影響から芝向きの産駒がほとんど。距離は万能で、瞬発力があり、大レース向きの底力に恵まれていました。サンデーサイレンスの代表産駒ディープインパクトとハーツクライにはリファールの血が流れています。日本では80年代にモガミとリィフォーという2頭の後継種牡馬が大成功し、前者は三冠牝馬メジロラモーヌや日本ダービー馬シリウスシンボリを、後者はGIを3勝したニッポーテイオーを出しました。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「種付け料が200万円→1500万円に! 改めてスワーヴリチャードの良さはどこにある?」

 ジャパンCを勝利に導いたイギリスのマーフィー騎手は「本質的にはマイラーかもしれない」とコメントしました。手綱を通して伝わってきたのはスピードであり、それでいて2400mをこなすスタミナもありました。個体として優秀だったというわけです。

 スピードの源泉は母の父アンブライドルズソング。2017年の米チャンピオンサイアーです。「2代父サンデーサイレンス、母の父アンブライドルズソング」という配合構成は三冠馬コントレイルと同じ。奇しくもコントレイルは、管理した矢作芳人調教師が「作り方ひとつではマイラーになっていただろう」と語っています。

 スピードと瞬発力は、わが国においては種牡馬として成功するための重要な要素です。スワーヴリチャードは、それらをしっかりと伝えることができる種牡馬です。

当コラムの次回更新は1月9日(火)18時予定です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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