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【共同通信杯】“名門”友道厩舎からまたもクラシック候補の逸材登場

  • 2024年02月12日(月) 18時00分

クラシック惜敗の歴史を打ち破れるか


重賞レース回顧

共同通信杯を制したジャスティンミラノ(撮影:下野雄規)


 2009年アンライバルド(皐月賞)、2016年マカヒキ(日本ダービー)、2018年ワグネリアン(日本ダービー)、2019年ワールドプレミア(菊花賞)、2022年ドウデュース(日本ダービー)。数多くの牡馬クラシックホースを送る栗東の友道康夫厩舎から、今年またクラシックを展望できる逸材ジャスティンミラノ(父キズナ)が誕生した。

 超スローの流れ(前半1000m通過62秒7-上がり45秒3-33秒1)が味方したとはいえ、ジャスティンミラノ(戸崎騎手)自身が早めに位置を取りに出て2番手抜け出しの内容は、自身で作ったレースにも相当する。自身の上がり「32秒6-10秒8」が物語る通りの完勝だった。この重要なレースから皐月賞に直行して勝った馬が、2012年のゴールドシップ以降の最近12年間に6頭もいるのは知られる通り。陣営は「次走は4月14日の皐月賞」になることを明言している。

 4連勝ならず、【3-1-0-0】となったジャンタルマンタル(父パレスマリス)もこのあと皐月賞に直行の予定。近年のクラシックホースには決まった路線はなく、皐月賞にはさまざまなスケジュールの候補が集結しそうである。

 ジャスティンミラノと同じように2戦目に共同通信杯を制したのは、2015年リアルスティール(続くスプリングS2着→皐月賞2着→日本ダービー4着)。2022年ダノンベルーガ(皐月賞4着→日本ダービー4着)がいる。史上3頭目の快挙だが、今年の2戦2勝馬は春のクラシックを制することができるだろうか。

 母マーゴットディド(IRE)は英の5-6F級で5勝のスプリンターだが、ファミリーは短距離タイプでもなく、ファミリーの代表馬Arcorアーコー(FR)は1962年の英ダービー2着。種牡馬として輸入されている。さらにデインヒル直仔の母の父エクシードアンドエクセルは、2019年の英ダービー馬アンソニーヴァンダイクの母の父に登場する。

 2歳戦が実施されるようになった1946年以降、日本ダービーは、1996年に2戦2勝のフサイチコンコルドが勝っている。皐月賞は2021年に3戦3勝のエフフォーリアが勝ったあと、2023年に2戦2勝のソールオリエンスが勝って歴史を塗り替えている。キャリア不足は心配でも、いまは大きな死角ではない。

 3連勝中のジャンタルマンタル(父はパレスマリス)は、陣営が「ふつうに力を発揮できれば、自然と…」と超強気だったが、ライバルと違ってここは必勝態勢ではなかったはずだ。大きなテーマは関東への遠征に慣れること、東京コースを経験することであり、それはクリアできた。  

 新馬を勝った1戦だけで、まして休み明けのジャスティンミラノに屈したのは大変なショックだが、連戦連勝が続く超大物ではないことが分かったのは、むしろプラス。敗戦は大きな糧、ときには薬となることがある。

 ジャンタルマンタルの父パレスマリスはケンタッキーダービーを12着のあと、ベルモントSを制している。また、前出の共同通信杯を1戦のキャリアで勝った2頭は、クラシックは勝てなかった。2015年はリアルスティールに負けた2着ドゥラメンテが春の2冠馬となり、2022年はダノンベルーガの2着に負けたジオグリフが皐月賞馬になっている。ジャスティンミラノの父キズナは日本ダービー制覇の前に2回も負けている。

 なお、3歳になると朝日杯FSの勝ち馬の路線は分かれるので、その判断は難しいが、前年の朝日杯FS勝ち馬はここ20年、3歳になっての初戦の成績は【2-8-4-6】。なぜかあと一歩で勝てないケースが多いから不思議だ。

 予測された以上のスローになり、レース上がりは「11秒4-10秒9-10秒8」=33秒1。上がり32秒台を記録した馬が4頭も出現した。8番人気でラチ沿いから4着に突っ込んだディマイザキッド(父ディーマジェスティ)の上がりは最速の32秒5。ただ、あの善戦健闘は鞍上R.キング騎手の絶妙なコース取りによるところ大だろう。

 5番人気のベラジオボンド(父ロードカナロア)の上がりは4位の32秒9。最後は完全に力負けの印象だったが、一旦好位に取りつきながら、スローになるのを察知して勝ち馬(戸崎騎手)がスルスルと2番手に押し上げたのに対し、こちらは逆に下げてしまった。ちょっと弱気だったか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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