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「なんでも挑戦したい気持ちになった」藤井勘一郎騎手の姿に心境の変化

  • 2024年02月20日(火) 18時01分
太論

▲「彼は本当に前向き」と太騎手も目を丸くする(撮影:桂伸也)


先週は、藤沢則厩舎のルナプレスのデビュー戦に騎乗した小牧騎手。かなり期待を持っていたそうですが、調教のときとは馬の雰囲気が違って…。とはいえ、「絶対に走ってくる」とかなりの手応えを得た様子。コンビ継続を願いたいところです。

さて、先週土曜日の京都競馬場では、藤井勘一郎騎手の引退セレモニーが行われました。藤井騎手と小牧騎手といえば、ヨガにランニングにウォーキングと、ともに時間を過ごしたトレーニング仲間。しかし、引退セレモニーに小牧騎手の姿はなく…。その顛末のほか、藤井騎手から受けた影響について語ってくれました。

(取材・文=不破由妃子)

“騎手を辞めたら何しよう”とか考えている場合じゃない!


──先週は、日曜日の京都4R(3歳新馬・ダ1400m)にルナプレスで出走(8着)。3番人気の評価でしたが、ちょっと追走に苦労しているような感じで。

小牧 金曜日に跨ったんやけど、ちょっと久しぶりに味わういい背中やった。これは絶対に走るわと思ったし、緊張感を持って臨んだんやけど、いざ本番となったら、なんかおとなしすぎたね。

──調教の際の雰囲気と違った?

小牧 全然違った。調教ではちょっとイレ込んで、カッカカッカしていたから、本番でもイレ込むかなぁと思ってた。でも、実際はものすごくおとなしくて。やっぱり新馬はレースに行ってみないとわからんね。行きっぷりが全然やったでしょ。

──スタート後、道中とムチが入ってましたもんね。

小牧 うん。あれ? っていう感じで。練習のときからゲートはもうひとつやったらしくて、「出ない」って聞いていたから、けっこう仕掛けていったんやけどね。走る気がなかったんやろうね、この前は。ただ、次は走るわ。乗り味がいいし、絶対に走ってくると思う。

──かなり手応えを得たと。

小牧 うん。ただ、次も乗せてもらえる保証はないからなぁ。やっぱりこういうときに結果を出さなアカンねん。

──でも、馬に走る気がなかったらどうしようもない。

小牧 それはもう運や。運がある人なら、そこでチャンスをモノにできる。今回は、馬の気持ちも含めて運がなかったということ。もちろんね、ぜひ次も乗せてもらいたいです。そう思わせてくれる馬なのは間違いない。

──ルナプレスも調教から動いていましたが、ガンバルフトシも2週連続坂路で終い12秒台が出ましたね。しかも先週は、全体も52秒台でまとめた。

小牧 動きはようなってるよ。日曜日も長いところを乗ったけど、行きたがってしょうがなかった。それ自体はいい傾向なんやけど、やっぱり手脚の捌きがちょっと重たい感じで…。まぁそれでもレースに行けば走る馬はいるから、ガンバルフトシも頑張ってくれたらいいんやけど。体は大きくなっているし、動きは確実に変わってきているからね。

──復帰戦は決まりましたか?

小牧 今週使うよ。今度は芝を使ってみようかと思ってます。

──さて、先週の土曜日には、藤井勘一郎騎手の引退セレモニーがありました。藤井さんとは交流があっただけに、小牧さんも参加されるのかなぁと思っていたのですが…。

小牧 土曜日はしっかり調教に出て、加矢太のレースをゆっくり見ようかなと思ってテレビをつけたら…、藤井くんが映っていて「あ、今日やった!」と気づいた(苦笑)。

──小牧さん、ひどい…。

小牧 ホンマやねぇ。引退発表前にわざわざメールもくれて、やり取りしたばっかりだったのに。うっかりしていたこと、すごく後悔しています。最後は顔を出したかった…。

──『太論』でも取り上げましたが、度々おふたりで走ったりしていましたよね?

小牧 うん。ヨガにも一緒に行ったし、琵琶湖沿いをふたりで走ったこともあったな。去年の7月も彼のほうから連絡をもらって、大津プリンスのあたりをふたりで1時間半近く歩いたり。藤井くんは車イスやから、坂道は僕が必死になって押してね(笑)。

──仲良くなったきっかけってなんだったんでしたっけ?

小牧 いや、とくにきっかけはないけど。彼はなんでも「あれをやりましょう」「ここに行きましょう」って積極的に誘ってくれるから、その流れで自然とね。最初の頃、「小牧さん、一度食事に行きましょうや」って言われたとき、「酒を飲まんやつとは飯を食いに行かんからな」と答えたんやけど、結局ホンマに一度も行ってない(笑)。

──引退セレモニー不参加のお詫びも兼ねて、「お疲れさま会」してください(笑)。それにしても、藤井さんはポジティブな方ですね。引退にまつわる記事をいろいろと読みましたが、「まだまだやりたいことがたくさんある」と。なんかこっちが力をもらったような気がします。

小牧 心のなかまではわからんけど、本当に彼は前向き。そもそも、JRAに入ってくるまでの彼の活躍を知ったとき、すごいなぁと思ったもん。韓国でGIも勝っているし、ものすごくいろんな経験をしてるんやなぁと思って。

──世界13カ国で騎乗経験があるんですものね。

小牧 ねぇ、すごいことや。僕も免許があるうちに、いろんなところで乗りたいなぁと思ったり。マレーシアとか、メジャーじゃないところでも乗ってみたいなぁ。

──海外はもう行きたくないとおっしゃっていたのに、どういった心境の変化ですか?

小牧 いや、藤井くんを見ていたらね、なんでもできるなぁと思って。「騎手を辞めたら何しようかな」とか、そんなん考えている場合じゃないなと。やろうと思ったらなんでもできるし、機会があれば、なんでも挑戦したいという気持ちになった。ただ、僕は言葉が喋られへんからねぇ。英語はホンマに苦手や。鹿児島弁で押し通せば何とかなるかな(笑)。

(文中敬称略)
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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