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「“血”に足がついた血統探求者」<第28回>栗山求

  • 2018年12月04日(火) 12時00分
栗山求

数字の裏付けがない血統論は単なるファンタジーでしかありません。曖昧な配合論ではなく、データの支えが重要なんです、と笑顔で語る栗山求



高校時代に競馬に出会い、血統の魅力に取り憑かれた栗山求。将来は競馬の仕事にぜったいに就く、と早々に決断すると、すぐに大学在学中の1989年に競馬通信社入社。『週刊競馬通信』編集長を経て、その後は編集者やライターとして活躍する。2010年に株式会社ミエスクを設立し、血統・配合の総合競馬サイト「血統屋」を主宰するとともに、生産者や馬主向けの配合コンサルティング業も行っている。そして現在は、JRAグリーンチャンネル「日曜レース展望KEIBAコンシェルジュ」や、こちら『netkeiba.com』の「ウマい馬券」でも血統予想を提供。的中率の目標を「三打数一安打」と高く据える理由と、それを支える手法を伺った―――(取材・文=日夏ユタカ)

馬券は、じぶんの血統論の証明



 多くの競馬ファンにとって、血統は予想のためのツールのひとつ、だろう。馬券を的中させるうえで、欠かせない要素という認識ではないだろうか。

 けれど血統評論家でもある栗山求さんは少しちがう。これまでずっと、馬券のために血統の知識を深めてきたわけではないという。

「馬券は、じぶんの血統論の証明です。どれだけ正しく理解しているのか、その答えあわせだと思っています」

 たとえば、まだ一度もレースを走ったことがない馬たちが集う新馬戦の予想を栗山さんは好む。事前に1頭1頭の血統的なプロファイリングを準備し、配合分析によって、明らかになっていない個性や素質を早めに見極めようとしている。
 もちろん、デビュー前の馬たちの評価はチャレンジでもある。ときには新しい血統との対面となることもあり、正確に評価するのは難題だが、それでも栗山さんはあえて挑む。時代の最先端は、つねに新馬戦にあるからだ。そしてその先にいつも、これまでみたことのないような、未来の競馬がつづいているからである。

 具体的には、父の連対率や配合別の成績、両親の産駒の一走当たりの収得賞金額などを調べていく。実績のある種牡馬や繁殖牝馬を素直に評価しつつ、その配合パターンの成功例や失敗例を比較して上げ下げをする。その延長で、能力の上限が1勝、2勝までなのか、重賞まで届くのか、GIをも期待できるのかを考えるのだという。新馬戦の前に、血統や配合から“器”を見立てるのだ。

「数字の裏付けがない血統論は単なるファンタジーでしかありません。曖昧な配合論ではなく、データの支えが重要なんです。日々、競馬予想支援ソフトのtargetで検索し、好走確率の高い配合を探します。地道にやっていかないと、すぐに取り残されてしまいますから」

 3年前の配合論は通用しないことが多いと栗山さんはいう。産駒のレースでの成績を受けて、育成の方法が変わり、繁殖牝馬の質もつねに更新されていくからだ。

「ディープインパクト産駒でも、初期のころはロベルト系の繁殖牝馬との配合はイマイチでした。ところが、あとのほうになると走ってきて、いまや好配合とすら考えられていますよね。エーピーインディ系の肌馬も同様で、最初は走りませんでした。でも、そこから皐月賞馬のアルアインが生まれてくる。それは初期のころとは繁殖牝馬のレベルがちがうからです。あるときからチャンピオンクラスの牝馬が輸入されて、さらに仕上げ方も向上すると、まったくべつの結果になります。そして今年の朝日杯FSで人気が予想されるグランアレグリアの母父もエーピーインディ系です」

 日本の競馬はいま、ノーザンファームを中心に急速な変化を遂げている。そんななか栗山さんは時代に取り残されまいと、日々の結果や情報を丁寧に精査しながら、頭のなかをつねに更新しているという。休んだら終わり、怠けたら終わりと考えながら。

栗山求

休んだら終わり、怠けたら終わりと考えながら、栗山求の模索は永遠に続く



目標は「3打数1安打」の高打率予想



 馬券は「じぶんの血統論の証明」と語る栗山さんにとって、予想が外れることはかなりの精神的なダメージのようだ。ある意味、数十年間の丹念な蓄積によって築きあげてきた血統論の否定になってしまうからだろう。
 それゆえ、目標とするのは「3打数1安打」の高打率予想だという。現在の「ウマい馬券」では1日に3レース予想が基本なので、毎日の的中を目指していることになる。とはいえ、展開や騎手の乗り方、調子の上下などによって、どれほど血統的な正解を導こうとも、レースの結果はつねに変動する。それでも、可能なかぎり的中をつねに心掛けているのだ。
 その結果、今年の「ウマい馬券」では288レースを予想して、105レース的中だという(11月末現在)。じつに的中率3割6分という高打率である。

 しかも予想の多くは、1頭軸で相手5頭を選択してのウマ単マルチ10点買いと、3連単マルチ60点買いという、比較的、難易度の高い買い目となっている。単に当たりやすい馬券での高打率を目指さないあたりに、じぶんの理論に対する自負と、血統予想の精度の高さがうかがえる。

 ちなみに「ウマい予想」での提供は、前述の新馬戦にくわえ、重賞を優先しつつ、なるべく午前中の未勝利戦も選ぶようにしているとか。もちろん、まだ評価の定まりきらない2〜3歳の重賞も得意の舞台。たとえば最近では、アルテミスSを◎シェーングランツで3連単を的中。10万馬券となり、多くの読者を歓喜させたようだ。

 じつはこの馬、今年の『競馬王のPOG本』で栗山さんが最上位評価をしていた馬でもある。母は仏米でGI・6勝した名牝で能力の上限が高く、なおかつ直線の長い東京コースは合うはずとの適性面での評価も。初戦5着と疵があり、前走で未勝利戦を勝ち上がったばかりということもあって6番人気止まりだったが、迷いなく本命を打って大魚を仕留めたのだった。

栗山求

デビュー前からその素質を高く評価していたシェーングランツ(撮影:下野雄規)。



 ただし阪神JFでは、シェーングランツ以外の馬に本命が決まっている模様。こちらは同距離のマイル勝ち馬だが、最適距離はもう少し長いとの判断のようだ。

 なお、過去の阪神JFの予想は、昨年が3番人気2着の◎リリーノーブル、一昨年が1番人気優勝の◎ソウルスターリングでそれぞれ3連単を的中。どちらも配当的には堅調な決着だったが、能力と適性を重視した血統診断がきっちり決まりやすい舞台なのは間違いない。翌週の朝日杯FSともども、血統の探求者の予想を楽しみたいところだ。

栗山求

阪神で行われるマイルGIは能力だけでなく適性も重視すべき、と語る栗山求



栗山求は『ウマい馬券』で予想を公開中
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