利用客減った坂路…JRAは美浦トレセン改良に本腰を!/トレセン発秘話
◆国枝栄調教師が漏らしたシビアな言葉
「最近は坂路で追い切る馬がめっきり減りましたね。それまで利用していた組も随分撤退して、今はウッドチップやポリ(トラック)で稽古してますから。馬だまりなんかも閑散としてきましたよ」
先日、美浦の某助手が宴会野郎にこんな言葉をかけてきた。
そこで意識してモニターを見ていると、確かに坂路を駆け上がっていく馬で実際に時計になるのはごくわずか。少なくとも、以前は倍以上の馬がしっかり追い切られていたはずだが…。果たしてどういうことか? 再びその助手を直撃すると次の答えが返ってきた。
「突き詰めれば馬場が特殊すぎるんです。(1ハロン)12秒台のラップなんかとても出ない重たい馬場。農耕馬じゃないんですからね。競馬を何度も経験している古馬ならまだしも、若い馬の関係者には敬遠されて仕方ないと思いますよ」
つまり、若駒にとって美浦の坂路は駆け上がるだけで精一杯。そこでは正しい走りを覚える余裕もなく、求められるものとは違う筋肉が発達するばかり。即効性がなく実戦向きではない、というのが彼の弁だった。
そこで思い出したのは、かつて国枝栄調教師が漏らしたシビアな言葉だ。
「JRAが最もすべきことはトレセンの価値を上げること。誰が見ても素晴らしいと思う施設、人材が揃っていないとすれば、馬主だって高い金を払ってサラブレッドを置く意味がないだろ? 今、外キュウ施設がどんどん増えている意味を考えないと。このままならトレセンもキュウ舎も調教師も不要という時代がやがて来る。かじ取りを行う施行者がそれを良しとするか否か。方向性を示す時期はとっくに来てると思うけどな」
利用数が絶対的に少なく、もはや無用の長物と化している北馬場を筆頭に、美浦トレセンに改良の余地は多分に残される。逆に現在パーフェクトと胸を張れる施設はどれだけあることだろう。“サラブレッドの最前線基地”にふさわしい環境づくりに本腰を入れない限り…西高東低の是正は難しいだろうと感じる昨今である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)