100本ノックの初回から、有馬記念でスマッシュヒットをかっとばしたオオヤブ。編集部一同「持っている男」と思ったのも束の間、結局は己の欲のせいでグダグダな結果になってしまい、お小遣い倍増どころか帰りの電車賃もままならなくなるという大失態を演じてしまう。そして年も明け、心機一転のオオヤブはAJCCをターゲットに地獄の猛特訓に入ることを決めたのだった。

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◆その男、競馬クレイジーにつき……
　その存在のミステリアス感がすでに無くなってきたこの企画の主人公・オオヤブについて、おそらく多くの読者が「あれっ？ コイツただの競馬好きのシロートじゃね？ 馬券マジで下手じゃね？」なんてことを薄々(大いに？)感じている頃だとは思うが、ここで敢えて言っておきたい。

『競馬好きじゃなくてクレイジー、もはや病気。あと馬券は下手じゃなくてド下手ね』

　36歳のオオヤブは、今でこそ家庭を持ち、競馬への衝動もそこそこ抑えられている。しかし、歌舞伎町や千葉・栄町で自分についたオネエチャンが気に入らなくて、タモリの4か国麻雀ばりの謎の中国語で店とやりあったほど血気盛んだった独身時代のオオヤブは、バカでクレイジーな馬券伝説を残している。それが「馬券皆勤賞」だ。

　馬券皆勤賞。「なんだそれ？」と思うかもしれないが話は簡単。毎週毎週とにかく馬券を買い続けるだけ。中央競馬が開催される日には、最低でも1レース、100円は必ず馬券を買うことがルール。今でこそPATがあるので全国どこにいたって簡単に馬券は買えるが、昔はけっこう難しいことだった。オオヤブはその頃PATを持っておらず(抽選にもなかなか当たらなかった)、競馬場か場外に行かないと馬券を買えない身分。だから、たとえばデート、冠婚葬祭、社員旅行、病気などが土日に絡むと困って、その場合は買い目と金を知り合いに渡して馬券を買ってもらっていた(これはアイツのルールではOK)。

　一時、そんなオオヤブの競馬への情熱が空恐ろしくなったので、止めさせようと家のベッドにくくりつけようとしたら泣き出したのでやめた(引いた……)。ガキの頃から夏休みのラジオ体操全ブッチを筆頭に、皆勤賞だけには無縁だったこの男が、どこの誰も褒めてくれないこの「皆勤賞」に勝手にひとりでのめり込んだ意味がわからない。これを20歳から結婚するまで8年間続けたんだから、やっぱりクレイジーなヤツなのである。

　ただ、クレイジーなんだけど馬券はド下手。だからこの企画は、「お父さんのためのお小遣い倍増計画」とサブタイが付いているが、「バカとハサミは使いよう」ってことで、バカにおもちゃ(netkeiba.comのコンテンツ)を与えたらどうなるのか、という人間行動学に基づいた実験企画みたいなところもあるのだ。

で、オオヤブくん、今回のノックどうしよっか？

『たいていの競馬ファンなら1年の計はぁ〜なんつって、金杯で勝負しますよね。でもここはあえてAJCC。その日にnetkeiba.comの調教欄を使ってノックに挑みます。(ここから小声でブツブツ)つーかホントは金杯が良かったんですよ。でも笹団子でご機嫌とれたのは12月25日までで、年明けたら鬼嫁が完全復活。お年玉くだちゃ〜いって甘えたら、かわりに裏拳食らって切り餅ノドに詰め込まれました』

　お前のAJCCは「アジャ・コング・クレイジー・チョップ」だったか！

『この調教欄を使って僕なりに必勝法を考えてみたところ、これがかなりイケるんですよぉ。とりあえず家の500円玉貯金から一枚抜かしていただいて金杯で試し打ちしてみたところ、京都金杯で本命にしたトライアンフマーチがビシッと2着で的中。これで自信が深まりました。一応、その調教必勝法のさわりだけ言っときますが、最終追い切りだけに注目して、前走の最終追い切りと好走時(2着以内)の最終追い切りとで比較して軸馬を決めるって方法です』

　ん？　好走した時の追い切りと最終追い切りの比較って、何か聞いたことあるなあ。お前誰かの方法パクってないだろうな？

『※○▲◎＠※＄％＆＃(←謎の中国語)』

　やっぱパクってんだろっ！

◆体調万全で完全復活も笑いの神は降臨せず
　さて、ノック当日の1月20日。実戦場所となったのは中山競馬場で、待ち合わせは朝の9時。自分で自分にいつでも「ラリホー」をかけられる現代の魔法使いにして、3秒で眠りにつける野比のび太・オオヤブだけに、再び有馬の日のような失態(遅刻)もあったりして？　まあ、「遅刻しようものなら、朝からカラオケボックスでサシで剛田武「ホゲ〜」リサイタルの刑を執行してやる！」とほくそ笑んでいたら、キッチリと定時に船橋法典に現れた。まったく笑いをわかっていない間の悪さである。

『ちょっと待ってください。ノックの前にまずエネルギー注入しますから』

　目の前でレッドブルを一気に飲み干し、いつもは死んだ魚のような目なのに、今日は不思議なくらい輝いた目をしているオオヤブ。すげーなこいつ、ラリホー使える上にやくそうまで持っていたか!?

『昨日の夜、netkeiba.comの調教の研究をずっとしていたんですよ。そうしたら当たったことばっかり妄想しちゃって。もう笑いが止まらない、みたいな？　嫁さんはご機嫌だったのか、交通費までくれちゃって。あっ、100円ですけどね。常識知らな過ぎだわ、アッハッハ』

　と超ご機嫌のオオヤブは、前回も使った手書きの“バカ字”虎の巻ノートを見せてくれた。今回のデスノートも数字が羅列。これをお前は夜なべして、妄想しながらせっせと作ってたのね。平和なヤツ……。

『調教は調子のバロメーター！　調教見ないで何を見る!!　まあ今日は「おっ、コイツやるじゃん！」ってなりますよ。きっと。謎の男から「スーパーお父さん」に格上げでっす！』

　え〜なになに、バカにおもちゃを渡すと「思い込む、妄想する、浮かれる、うぬぼれる」という症状が出るっと。よしよしオリバー君、今日もノック張り切っていってみようか！

『よっしゃ〜バッチこ〜い！』

現在の馬券的中数　3本
ゴールまで残り　97本

【次回予告】
いきなり1Rから大勝負を仕掛けるかどうかで悩みまくっているオオヤブ。確固たる自信があるわけではないが、やけに感じるこの胸騒ぎは何？

自分のひらめきにかけたい気持ちと資金を取っておきたい気持ちがせめぎあい、ヘタレ・オオヤブが下した結論とは!?

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【馬券100本ノックのルール】
・netkeiba.comのコンテンツを使って馬券を的中させれば『1本』。馬券の種類は問わない。
・万馬券であれば1本プラス、10万馬券ならば10本プラス。
・100本に到着するまで本企画は終わらない(不人気で連載終了の可能性は僅かにあり)。
・馬券を購入できるのは月に1日。どのレースを買ってもいいが、重賞は必ず買う。
・購入資金はオオヤブのお小遣い3万円以内。足りなくなったら・・・・・・