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第6回 シンクロと暴走モードの巻

  • 2013年02月18日(月) 18時00分
調教理論が使いやすい特別レースまで待てばいいのに、未勝利戦、障害戦、そして調教理論が使えない新馬戦までやみくもに手を出してしまうオオヤブ。しかも賭け金はその都度増えていくばかり。そして、もはや後戻りができなくなったオオヤブに決断の時が訪れた!?
◆受けた恨みは墓場まで――オオヤブのしつこさは大物並み!?
 歴史上の大人物には、「しつこい」、「受けた恨みは一生忘れない」という粘着性気質が多分にあったといわれている。大物は「ドッシリと構えて度量が広い」というのは大嘘で、実はみみっちくて吝嗇家(要はケチな人)だったりするというのは意外で面白い。

大物かもしれないオオヤブ

大物かもしれないオオヤブ

 そうした観点だけで見れば、しつこい、受けた恨みはずっと忘れない、ケチ、お調子者、バカ舌、天然、ドスケベ、遅刻魔(後半は違うか)というオオヤブが、大物たりえる可能性も無きにしもあらずだ(バカと天才は紙一重なんて言葉もあるしなあ)。というわけで、これからオオヤブの過去の「粘着性逆恨み伝説」をいくつか披露してみようと思うが、それらはいわゆる大物の所業のようには決して思えず……。まあ、ドン引きしないで読んでいただきたい。

 オオヤブが一人暮らしをしていた20代前半のある日、ティッシュが散乱していてまるでゴミ溜めのような部屋に友人が泊りに来た。しかし当のオオヤブはバイトがあったので、友人を残してそのままバイトへ。朝、帰宅してみると友人はすでに帰途についていた。なんとなく嫌な予感がしたというオオヤブは、貴重な食料ストックの中から、大好きな『サッポロ一番みそラーメン&卵1個&微量の増えるわかめちゃん』が無くなっていることを発見。しかも大切な小銭貯金から120円が紛失している(けっこうマメに総額を数えていたんだな)。犯人はその友人なのだろうが(玄関の鍵が開けっ放しだったので100%とはいえない)、「丼と鍋ぐらい洗ってけよ!」という捨て台詞を吐きつつ超激怒したオオヤブは、その友人とそれ以来ずっと絶縁したままだという。そのほとぼりは一向に冷めず、15年以上経った今でも思い出すとイライラして「眠れなくなっちゃう(←古い!)」らしい。どうやらこの怒りは墓場まで持っていく覚悟のようだ。気持ちはわからないでもないが、もうそろそろ時効じゃないの?

 飲食店での逆恨みエピソードにも事欠かない。普段からけっこう贔屓にしていた中華料理屋で、水餃子を頼んだ、頼まないで揉めたオオヤブ。結局頼んでいない(オオヤブ曰く)水餃子をしぶしぶ食べる羽目になり、帰りのレジで再び店員とバトル。その水餃子自体は超美味くて至極満足したようだが、以後、一度もその店には行っていないとのこと。こうした自分への不届きがあった店には二度と行かないのがオオヤブのポリシーなのである。こいつが某サイト(飲食店の評価サイト)のヘビーユーザーだったらと思うとゾッとするぞ。

お茶が昼飯代わり!?

お茶が昼飯代わり!?

 こんな性格なので、自分がこうしてオオヤブのプライドを逆なでするようなことを書き連ねていることにも因縁をつけられそうだが、このあたりはOKなんだそうだ。攻撃的なのか、自虐的なのか、まったくもって「地雷原」がつかみづらい男である。まあ、ここでは事実しか書いていないんだから文句をいわれる筋合いはないのだが、今日の1Rのような勝負時に思い切りよく勝負ができず最悪の結果になってしまうと、こいつの粘着性気質が大いに発揮される。

「カレー食いてぇ〜」なんて言いつつ、顔では笑っていても内心は引きずりまくりで、「最初なんだから様子見でいいんじゃね、とかいいましたよね?」とこちらに言いがかりはつけてくるし、2着に敗れた馬の鞍上の蛯名にも「追えねえなぁ、クソッ」とやさぐれる始末。中山にいながらにして、浅草ウインズ周辺の飲んだくれ毒舌・競馬オヤジとリアルにシンクロしてしまっている。

5Rの払戻で昼飯の予定が…

5Rの払戻で昼飯の予定が…

 そんなこんなで、ブツブツと文句を言いながらも待望の昼飯をかけて5Rに挑んだオオヤブだったが、予想の歯車がまったくかみ合ってこない。5Rで追い切りがA・B評価の馬は1.ナカヤマシャイン、3.グレイスヒーロー、4.パシャドーラ、5.ダイメイハルオ、7.ポッドローザ、8.ヒカルハノハノ、11.コスモピースフル、12.ニシノアイボウ、13.ネコタイショウ、16.サトノマーキュリーの10頭。

 その中で、唯一のA評価1.ナカヤマシャイン、B評価でも前走2着時以上の追い切り時計を叩き出している16.サトノマーキュリーの2頭に軸候補を絞る。結局、追い切りがA評価でもあり、前々走の好走時と追い切り時計を比較しても遜色なく、5番人気で妙味もありと踏んで、1.ナカヤマシャインを軸にした馬連と、2着付の馬単流し(今日の軸馬は2着の傾向が強いと踏んで)で勝負することに。しかし結果は……

 肝心の1.ナカヤマシャインは5着で、もう一方の軸候補だった16.サトノマーキュリーが1着。1.ナカヤマシャインに騎乗していたのはまたも蛯名。初回の100本ノックから蛯名との相性がすこぶる悪い。

◆自信満々に90点買いを敢行してみたものの……
調教チェックは真剣です

調教チェックは真剣です

 4Rと5Rにかけては内馬場での観戦。そこからスタンド側への移動中、地下フードコートで美味そうにカレーを食べる他人の幸せそうな顔を横目に見つつも、スマホで6Rの調教チェックに余念がないオオヤブ。だが、その6Rは新馬戦。オオヤブの調教法則は新馬戦では使えないはずなのだが?

『あんだって(←志村けん風)、新馬戦? 新馬戦だからこそ調教が大事。買う買う! もちろん買いますよ。あたりまえ体操ですよ(←「買う買う」に引っかけた?)』

 その6Rの新馬戦。追い切りのA評価はなんとゼロ。中間そして最終追い切りでB評価だった馬が2.タガノアムール、3.トーアアナスタシア、4.レオアストリア、6.ホーリーチャリス、10.オリアーナ、11.ディアルーモの6頭。中でも2と3にB評価が2回あることに気付いたオオヤブは、この2頭の中から2.タガノアムールを軸にチョイス。ここから馬連と馬単流しで5000円を投入する(掛け金が増えている!)。

新馬戦に手を出すと…

新馬戦に手を出すと…

 3.トーアアナスタシアの鞍上が相性最悪の蛯名ということで、2.タガノアムールの剛腕・内田博に託したようだが残念ながら見せ場すらなく9着。しかし蛯名の3.トーアアナスタシアも13着だから、そもそも軸の絞り込みですでに間違っている。もはやオオヤブの必勝法自体、破綻しているのだろうか?

 さて、ここまで約19,500円を投資して、返還を含め3,950円の回収。12Rの半分の6Rで、持ち金30,000円の約半分の負けだから、順調かつキレイ(?)にやられているともいえるが、1R以外見せ場がないのは問題だろうよ、オオヤブ。

『フフフフ、そう心配しなくてもノープログレム(←ルー大柴風)。この7Rでキッチリと取り返して見せますよ。ここは2度目の勝負時。3連単でトゥギャザーしようぜ!』

 と、訳のわからないことをいいながら、7番人気の11.アイアムネフライトを3連単の1頭軸にして相手6頭のマルチ買い。しめて9,000円の大盤振る舞いである。

今日のメイチ勝負!

今日のメイチ勝負!

『11.アイアムネフライトは前走12着時と調教パターンは同じですが、今回は追い切り評価もAで時計が違い過ぎます。しかも、3走前の3着時とほぼ同じ時計。3走前は芝レースでのものですが、新馬戦のダートで2着の実績があり、ダートも問題ないでしょう。人気も無さそうなので、トゥギャザー確実! な〜んかコーフンするなあ』

 レースはダートなのに、どうして芝の3着時の追い切りと比較して、ダートの2着時のそれと比較しないのか? 天才にして大物(?)のオオヤブにしかわからない深謀遠慮があるのだろうが、それにしても90点買いとは勝負に出たもんだ。確かにこいつは当たればデカい。

 しかし、このオオヤブの目算はまったくの見当ハズレで、3着までを3番人気以内が占めるガチガチの決着。アテが外れたオオヤブはもうノックアウト寸前!

『うっへえ、どのレースも予想の逆ばかりの結果でなんか気持ち悪くなってきた。レッドブルなんて飲まなきゃ良かった。空腹なんでここまで酸っぱいものが浮いてきてますもん』

◆ついに禁断の最終兵器が投入される……のか!?
 残金は5,450円。メインはまだ先なのに、もはや風前の灯。このまま8R、9R、10Rをやり過ごしてメインのAJCCにすべてを賭ける手もある。しかし、ここまで追い詰められてもオオヤブは立ち止まらなかった。

「なぜ競馬をするのか?」の問いに「そこにレースがあるからだ!」と答えた、あの激烈競馬バカが帰ってきたようだ。暴走モード突入ってな感じである。

8Rは本線的中なのに…

8Rは本線的中なのに…

8Rは未勝利時に1、2着したときと同じ調教コースで同じような追い切り時計を出した3.ミヤビエスペランサと、未勝利を勝ち上がったときと同じ調教パターンに変えてきて、その時と同じような時計を出した7.コパノウイリアムのどちらかが軸になりますが、調教コメントに「さらに上昇」とある7.コパノウイリアムを軸にします。買い目は馬連で3-7が本線といきたいところですが、絶好調の北村宏の5.ハーコットを本線に1500円。3-7は1000円で、他は2.ロックシンガー、6.ダイワアクシス、8.ダイゴロー、13.フェアブレシア、16.バーチャルトラックに500円ずつ流します』

 レースはオオヤブの予想通り、本命にした7.コパノウイリアムが3馬身差の圧勝。2着に5.ハーコットが入って本線的中!

 だが、配当は4.9倍なので、払い戻しは7,350円。残金は7,800円とそれほど増えなかったものの……、

『これで勢いが出るはず。しかも9Rからは特別レース。ボクの調教理論が使えるレベルの馬たちばかり。腹も鳴りますが、腕も鳴りますねえ』

 まるで笑点気取りの言い回しでご機嫌になっていたオオヤブだったが、次の9Rは大誤算。

波に乗れないオオヤブ…

波に乗れないオオヤブ…

 前日予想では軸候補だったものの、蛯名騎乗で嫌った5.ダービーフィズが1着。もう1頭の軸候補だった2.アドマイヤスピカと、前走のジュニアC・2着時よりも稽古が上昇しているように思えた6.マイネルブルズアイを2頭軸にした3連複と、6からの馬連を購入していたオオヤブはこの結果に頭を抱える。2と5の2頭軸3連複なら、3着の10.モンテエベレストを押さえていただけに、初志貫徹していれば33.8倍を500円分的中していたことになる。

 この9Rでは7,800円の資金から7,500円を投入していただけに(バカ!)、残金は300円。完全に追い詰められた。どうするオオヤブ? 2回目にしてもうアレが出ちゃうのか!?

『出〜かける時は〜わす、あれっ? おかしいな。無い無い。財布に無い。あれれ? 落とした? そんなわけないよなあ。今日使ってないし。ヤバイ。嫁に抜かれたかも』

 競馬の予想は当たらないが、この予想はビンゴで、オオヤブを誰よりも知る嫁は虫の知らせを感じたのか、出かける前に財布からそっと「最終兵器」を抜いていたという。この企画的にはおいしくないのだが、実に賢明で冷静な嫁ではある。

オオヤブ渾身の土下座

オオヤブ渾身の土下座

『そんなわけですから、全財産300円の僕にお金貸してください。チャンスをくだちゃ〜い!』

 と、土下座して頼むので、仕方なくオオヤブにプライベート・マネーから10,000円を援助。だって、メインのAJCCの前にノックが終わってもね〜。

 ということで、オオヤブのパラメーターは10,300円に復活。しかしもう後が無い。これも無くなったら今月のオオヤブお父さんはこづかいゼロ(+借金)。大好きなサッポロ一番でさえ、まともに食えない極貧サラリーマンライフを過ごさなくてはならないのだ。

『じゃあとりあえず、この金でカレー食っとく?』

貸した金は払い戻しじゃないっつーの!

現在の馬券的中数 5本
ゴールまで残り 95本

次回のオオヤブ

次回のオオヤブ

【次回予告】
なんとか軍資金を調達したオオヤブが、いよいよメインのAJC杯に挑む第2回馬券100本ノックの最終章。最後の直線でこだまするオオヤブの絶叫!

新降着制度に揺れたAJC杯。なかなか確定ランプが点灯せず業を煮やしているスタンドのファンの中に、ひとりほくそ笑むオオヤブの姿があった……。


【馬券100本ノックのルール】
・netkeiba.comのコンテンツを使って馬券を的中させれば『1本』。馬券の種類は問わない。
・万馬券であれば1本プラス、10万馬券ならば10本プラス。
・100本に到着するまで本企画は終わらない(不人気で連載終了の可能性は僅かにあり)。
・馬券を購入できるのは月に1日。どのレースを買ってもいいが、重賞は必ず買う。
・購入資金はオオヤブのお小遣い3万円以内。足りなくなったら・・・・・・

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【主役:オオヤブ】 妻子持ちの36歳。一応、雑誌・書籍の編集業に携わっている。若かりし頃にイギリス留学経験もあり、ニューマーケットで馬券の研さんを積んだ、なんてことはまったくない3度のメシより競馬好き。ギャンブル全般に造詣が深いと本人は思っているが、周囲の見方は単なる「下手の横好き」。

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