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第7回 ヤブノミクスとデフレスパイラルの巻

  • 2013年02月25日(月) 18時00分
9Rまでで金をほとんど使い果たし、公的資金投入を懇願するオオヤブ。お父さんの限度額を超えた戦いは遂に佳境を迎える。後々さまざまな議論の対象にもなったいわくつきのAJCCで、オオヤブが本命にしたのはあの馬。果たしてその結果は?
◆メインの前になんとか資金を増やそうと四苦八苦!
 9R・若竹賞の不的中で、3万円あったオオヤブの残金はついに300円。後先をまるで考えていない無鉄砲さにあきれつつも、オオヤブたっての土下座懇願で仕方なく公的資金(1万円)を投入することになってしまった。ということだから、ここからはメインのAJCCまでじっくりと馬券検討をして、乾坤一擲の勝負をするのかと思いきや、

メインまで待てないオオヤブ

メインまで待てないオオヤブ

10Rの若潮賞、少しだけ買っときます。だって、AJCCでもっと大勝負したいしぃ〜。そのために資金が増えれば万々歳! どーですか、お客さ〜ん』

 と、これまでのスタンスをまったく変えようとしないマイクパフォーマンス。親の心子知らずというか、それともオオヤブの心親知らずなのか、投資なんてするんじゃなかったが後悔先に立たず。お前、トレーダーにだけはなるなよ。たぶん殺されるから……。

『若潮賞なんですけど、ここは買い目をググッと絞ります。ボクの調教法則で残るのは4.ミエノゴーゴー、6.ウインクリアビュー、9.クラックシード、10.フェスティヴタロー、11.プレノタート、12.アルファメガハート。この中でとくに良かったのが10.フェスティヴタローと11.プレノタート。この馬連1点で行こうかなと思うんですが、プレノタートに乗っているエビショーと今日は相性がよくないので、困った時の外国人、ベリー騎乗の4.ミエノゴーゴーも加えました。買い目は10-11の馬連1点と、この2頭は共に7枠なので、ミエノゴーゴーが入る4枠との枠連4-7を1点の計2点買い。占めて1,800円で、どうだ!バカヤローッ!!』

まさに悪循環のオオヤブ・・・

まさに悪循環のオオヤブ・・・

 2点なのに、どうして投資金が切りよく1,000円や2,000円じゃなくて、1,800円なのか意味不明なのだが、この期に及んでたったの2点に絞り込むというのは、リスクがデカすぎやしないか。元本割れしているので、一発で取り返そうという焦りも多分にあるのだろうが、そうした余裕のないヤツに勝利の女神が微笑むわけもないのが博打ってもの。

 肝心のレースはフェスティヴタローが2着に入ったものの、ミエノゴーゴーは9着でプレノタートは10着(ついでに4枠同枠のシンボリカージナルも11着)でドボン。得てしてこうなるよなあ。

◆オオヤブの目に留まったのはあの中山巧者
調教を捨ててパドック派に転身!?

調教を捨ててパドック派に転身!?

『さって、お次はAJCC。切り替え、切り替え。メインでガツンと取り返して、借りた1万円にのしつけて返しますよ。だって、このレースは調教で「これだ!」と思った馬がいるんですよぉ』

 お前の直観から来る「これだ!」は信用ゼロなんだが、その狙い馬ってサイトの評価や時計とか見て判断してんだよな?

『もちろんですよ。追い切りがA評価の馬がゼロなので、B評価からセレクトしたんですが、6.ゲシュタルトが過去のケイコと比較してもグッド、グッド! 去年のAJCC・3着時、一昨年の中日新聞杯・2着時と遜色ない時計が出ているし、この馬、負けているときは追い切り時計もあんまり良くないんですって。つまり、調教がレースに直結する馬で、かつ中山の芝中距離は滅法得意の舞台。いつゲシュタルト買うの、今でしょ!』

 出た、東○ハイスクール! なるほどオオヤブの理屈はなんとなく利に適っているような気もしてくるが、こいつの講釈が超有名予備校講師級ではないのは明らか。でもまあ肝心なのは解答と結果のほう。「netkeibaハイスクール」の新米バカ講師「ノックのオオヤブ」はどんな買い目を導き出すのか!?

借金している身で攻めるが・・・

借金している身で攻めるが・・・

 『昨日の夜の段階では、4.アドマイヤラクティ、5.トランスワープ、6.ゲシュタルトの3頭の馬連ボックスと、この3頭を軸に、ここからそれぞれ3.ダノンバラード、10.マルカボルト、11.ネコパンチに流す馬連の計12点。これでいいかなとは思っていましたが、ここは一発逆転を狙って6の1頭軸マルチの3連単を買うことにしました。ヒモは3、4、5、10、11の5頭で計60点。1番人気の9.ルルーシュ? いらん、いらん! 調教が馬なりばかりで、やっぱ藤沢厩舎はケイコが軽いなあなんて思ってたらマイナス4キロ。まだ若干太いですよ。もうひと絞りあってもいいんじゃないかな。まあ、とにかくここは穴狙い! 人間、安全策を取っていたら進歩がないんです。やるからには上を狙わなきゃ! やるなら今しかねえ〜』

 浪人時代、偏差値40チョイだった男にしては野望が果てしないが、ずいぶんと勝負に出たもんだ。しかし、そのAJCCはみなさんご承知の通り、どうにもこうにも後味の悪い結果になってしまった。

 レースはスタート後にネコパンチが飛び出し、オオヤブの軸馬ゲシュタルトが2番手につける。先行集団はその他にマルカボルト、トランスワープ、そのやや後方にダノンバラードと、オオヤブの買った馬はアドマイヤラクティ以外ほぼ前付け。3コーナー過ぎにはゲシュタルトが敢然と先頭。こりゃもしかするかも、と思ったら、直線でダノンバラードが急に内側に斜行。トランスワープとゲシュタルトがそのあおりをモロに食らってしまった。勝ったのは斜行したダノンバラード。トランスワープこそ、そこからしぶとく脚を伸ばして2着となったが、ゲシュタルトはズルズルと後退して9着惨敗。

ボー然自失のオオヤブ

ボー然自失のオオヤブ

 オオヤブも直線に入って声を出そうとした瞬間の惨劇に「ぶぁぁぁぁ〜っ、やられたぁ〜」とボー然自失。レース後、確定するまでかなり長い時間がかかったが、たとえダノンが降着になっても的中とならないだけに、もはやどうしようもない。しかも前夜の予想通りに買えば、降着の有無に関係なく馬券は的中していたのだ。これにはオオヤブも嫁の裏拳以上のダメージを受け、スタンドでひとり自嘲気味に笑っているしかなかった。

『ダノンのあれは……。もし斜行が無かったとして、ゲシュタルトの脚が残っていたかは正直微妙な感じもありますが、気持ちは良くないですよね。トランスは不利を受けてあれだけ伸びているわけだし、あれで降着じゃないんですね? でも、ああした斜行はもちろんいけないし、決して許されることじゃないですが、出稼ぎに来ているベリーの執念もまた見えたような気がするんです。その点、東海Sの横山典は何なのよ! わざわざお手馬のルルーシュ蹴ってサイレントメロディに乗りに行って、最後方からソロッと回ってきただけって……。調教評価は唯一のAでイケると思ったのに〜〜。勝てないと思ったら無理しないというのはわかるよ。でもこっちは馬券買ってるんだからさあ。ちょっとぐらい執念見せてくれよ〜〜。どうかしてるぜっ!』

こっそり東海Sも購入

こっそり東海Sも購入

 て、お前、東海Sも買ってたの? でもそんな金あったっけ?

『中山10Rが終わった時点で残金は8,500円。AJCCに6,000円で、東海Sには2,200円投入。サイレントメロディから馬連と馬単1着付けで11点流ししちゃいました。テヘ!』

 ということは残金が300円。公的資金分がまるまる泡と消えたわけだ・・・。

 残金を考えればもはや絶体絶命だし、帰って家族サービスでもしてちょうだい。300円あれば、オオヤブ家が大好きなガリガリ君だって家族4人分買えるじゃないの。

◆往生際が悪いのか不屈の精神か最終レースで何かが起きる?
『さ〜て最終ですよ。最終。まだ300円あります。あきらめてませんよ。ボクはこう見えてけっこうしつこいんですからっ!』

 わかってるよ。やっぱ最終やるのか。そうだろうな。まあ、お前のしつこさは重々承知。しつこいといえばお前さあ、昔、気になっていた女の子がバイトしていたマ○クに1か月間通い詰めたなんてこともあったよなあ。まるでストーカーだな。

最終レースやけくそ馬券

最終レースやけくそ馬券

『3か月ですよ、失礼な! で、その最終ですが狙いは13.トーセンナスクラ。AJCCで不服申し立てをした大野の心がポキッと折れていたらヤバそうですが、そうでなければ来るのはこの馬っしょ。相手は2.フォースフルの馬連1点に200円。154倍なので的中すれば3万円になってチャラ。よ〜し、本日最終ノック、バッチ来いや〜!』

 1万円を借りているので、本当は4万円がチャラ線。メインのショックですでに借金の存在なんてどっかに吹っ飛んでいる。そんなお前を竹内力(萬田銀次郎)にシメてもらって、エスポワール号に乗船させて利根川と「限定ジャンケン」させたいわ。ついでにウシジマくんも呼びてぇ!

 で、最終レースは言わずもがな。オオヤブの本命トーセンナスクラは1着だったものの、2着には2番人気の10.クレバーデステニーが入って不的中。100円を残して第2回の100本ノックは終戦となった。

もはや立ち上がれないオオヤブ

もはや立ち上がれないオオヤブ

 がっくりとスタンドで跪くオオヤブ。心が折れたのは「オオノ」ではなく「オオヤブ」のほうだった。でも、AJCCにしろ、最終にしろ、目の付け所自体は悪くない。1Rのショックを引きずり、なんとか盛り返そうとして負のスパイラルに陥ったのが敗因じゃないだろうか。すべてを冷静に対処できていれば、あと最低2本くらいは的中数を増やせたかもしれない。

『この残った100円で、帰りにハンバーガー食ってっていいっすか? まだあの子あそこで働いているかな。もう10年以上経っているけど。ハァ〜(←ため息)』

 オケラ街道を正真正銘のオケラになってトボトボと歩く、「人間デフレ・スパイラル」オオヤブ。「アベノミクス」ならぬ「ヤブノミクス」が訪れる日は来るのだろうか?

現在の馬券的中数 5本
ゴールまで残り 95本

【オオヤブ・ノート必勝三か条 〜調教〜】
1. 好走時と最終追い切りの比較で、軸候補が1〜3頭まで絞り込める!
2. 「A」評価をうのみにするより「B評価」にお宝あり
3. 三角木馬に乗ってムチで目一杯に追われるボクの調教は「E(イィ〜)」評価

オオヤブに未来は・・・

オオヤブに未来は・・・

【次回予告】
2月といえばフェブラリーS。今年初のGIに熱い思いを寄せるオオヤブは、その日をノック本番に見据えてnetkeiba.comの研究に余念がない。

そして発見したのが究極の他力本願打法。新たな武器を携えてフェブラリーSに乗り込もうとしたのだったが……。


【馬券100本ノックのルール】
・netkeiba.comのコンテンツを使って馬券を的中させれば『1本』。馬券の種類は問わない。
・万馬券であれば1本プラス、10万馬券ならば10本プラス。
・100本に到着するまで本企画は終わらない(不人気で連載終了の可能性は僅かにあり)。
・馬券を購入できるのは月に1日。どのレースを買ってもいいが、重賞は必ず買う。
・購入資金はオオヤブのお小遣い3万円以内。足りなくなったら・・・・・・

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【主役:オオヤブ】 妻子持ちの36歳。一応、雑誌・書籍の編集業に携わっている。若かりし頃にイギリス留学経験もあり、ニューマーケットで馬券の研さんを積んだ、なんてことはまったくない3度のメシより競馬好き。ギャンブル全般に造詣が深いと本人は思っているが、周囲の見方は単なる「下手の横好き」。

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