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第26回 さりげなく馬耳東風の巻

  • 2013年07月08日(月) 18時00分
オオヤブに馬券をレクチャーする……いやいや、そのたるみ切った予想と腹をもう一度シメていただきたく「臨時コーチ」をお願いした日刊競馬の柏木さんが、オオヤブの「単勝3刀流」をいきなり一刀両断! このあと、仏のような柏木さんが鬼コーチに変貌してしまうのか!?


◆単勝を多点買いするよりも複勝総流しの方がいい?

 今日はオオヤブを「馬券の鬼」に変えていただけるんですよね、柏木さんっ!

「そんな仰々しいものじゃないですよ」

 と、謙虚な柏木さんだが、せっかくですからオオヤブを思い切りシバいてやってくださいっ!

「じゃあ、次の東京6R。とりあえずオオヤブくんの好きなように、今まで通りの方法でいいから馬券を買ってみなさい」

 大御所を前にして、緊張感ありありのオオヤブ。それでもこの男がある意味で「大物」なのは、どんな人間を前にしても、自説や講釈を滔々と自信満々に述べられるところにある。なので、柏木さん相手でもまったくひるまずに、

『それじゃ僕の単勝3刀流を柏木さんに披露したいと思います。で、この6Rですが、netkeiba.com上で調教評価がB以上だった馬が9頭もいます。その中でこの条件での成績がいい騎手が乗っている馬、戸崎騎手の6.ピュアプロスパー、内田騎手の4.ユニフィケーション、三浦騎手の5.カミナリコゾウの3頭の単勝を買います。3連単は軸を戸崎騎手の6.にして4.5.10.14.16に流します。こんなもんでいかがでしょう、柏木コーチッ!』

 と、お伺いを立てるオオヤブだったが、ここで柏木さんのメガネの奥のやさしそうな目がキラリと光った(ように見えた)。

柏木さんにダメ出しをくらう

柏木さんにダメ出しをくらう

「オオヤブくんは的中させることばかり考えてるように見えるな。うん、それはやっぱり良くないよ。これからも長く競馬を楽しみたいなら、当てることはもちろんだけど収支もちゃんと考えないといけない。それがこの企画の趣旨でしょ? だからその単勝3刀流だっけ? とても効率が悪いよね」

 さすが、柏木さん! バッサリと言い切ってくれました。俺がオオヤブに言いたかったのもまさにそれそれ! さすがに憧れの柏木さんにダメ出しされたのがショックだったようで、

へこむオオヤブ

へこむオオヤブ

『やっぱりそうなんですかねえ……。というか、そうなんでしょうねえ。でも、今の僕から、このやり方を取ったら何も残りません……。どうしたらいいんでしょうか、柏木コ〜チ!』

「毎レース、単勝を3点買うくらいなら複勝総流しの方がずっといいよね。ねえ、この企画って、複勝とか全通り買っちゃいけないんだっけ?」

 か、柏木さん、そ、それはちょっと……。それをやっちゃうと、この企画の馬券を100本的中させればクリアというゲーム性の意味が無くなります。というか、それはもはや予想じゃないっす。せめて単勝なら最低1頭、複勝なら最低3頭は買わずに外れる余地を残してくれないとマズいです。それでもやっぱり限度ってもんがありますが。

「ああ、それは確かにそうなんだけど。でも、複勝総流しとか多点買いって、言うほど悪い方法じゃないんだよ」

このひと言に、藁にもすがりたい一心のオオヤブが食いつく。

『複勝は配当も低いし、点数が多いと僕の単勝3刀流より効率が悪そうですが……』

 うんうん、確かにオオヤブの意見も一理ある。

「毎レース、複勝の多点買いをするんじゃなくて、たとえば荒れると踏んだレースでそういう買い方をすればいい。予想通りに波乱になったら、配当だってつくし、収支もプラスにできる。なんといっても当たりが3通りあるんだから、パーフェクトに的中すれば3本減らせるし、企画的にもいいじゃない」

な、な、なんという深謀遠慮。やみくもに複勝を買いまくれということじゃないのね。毎レース、バカのひとつ覚えのように単勝を買っている短慮軽率なオオヤブに爪の垢を煎じて飲ませたいっ! と、思っていたら締切のベルが。柏木さんの馬券レクチャーに耳を傾けっ放しのオオヤブ以下、6Rを買いはぐってしまった。

「そもそも6Rは勝負じゃなかったんでしょ。ならいいじゃない。とりあえずレースを見よう」

 慌てず、騒がず、「静」という文字がピッタリの柏木さん。でも、そんな柏木さんのおかげか、予想が外れていた6Rの馬券を買わずに済んだオオヤブはホッと一安心。

『うわっ、狙っていた馬が2着でハズレ! セーフ! 危ない、危ない。柏木さんのコーチングに集中していたおかげで、なんとかマイナスを回避できました。じゃあ、次の7Rは混戦だし、柏木さんのいう複勝で勝負してみてもいいかなぁ……』

 あれれ、どうした? なんかビミョーな感じだな。

◆単勝にこだわらずレースに合った馬券を買いなさい!

 仕切り直しの東京7R、複勝買いを躊躇している感じのオオヤブを見て柏木さんがひと言。

アドバイスをもらう

アドバイスをもらう

「ここは単勝オッズも割れて混戦でしょ。確かに荒れそうなんだけど、複勝の配当はどの馬もそこそこ程度。こういうレースは逆に買い目を絞っての単複勝負に向いているんだよ。複勝の多点買いというのは、被った人気馬がいるときが面白くて、もしその馬が馬券圏外に消えて穴馬が入れば複勝といってもかなりの配当が付くわけでしょ。そういうレースかどうか見極めることが大事。でもかなり難易度は高いよね」

 というわけで、7Rは複勝勝負ではなく単複での勝負にしたオオヤブ。しかし、どうしたわけか買ってきた馬券は単勝のみ。

『僕がこのレースでもっとも気があった馬は4のサクセスセレーネ。なんといっても調教評価がAですから。平場の500万でA評価はそうそう見ませんし、配当を見たら4の単勝オッズは8倍あるかないかで、複勝は2〜3倍。単複で1000円ずつ買おうとは思ったんですが、これまでのマイナスを考えると、どうしても複勝を買う気が起きなくて、単勝のみ2000円購入しました。これが当たればほぼチャラなんですよ』

 おいおい、巡り巡って単勝1点買いなんて、ずいぶんと思い切りの良いことを(無謀だろ!)。

「買ったのはオオヤブくんの自信のある馬なんでしょ? それならそれでいい。でも欲をかき過ぎたらいけない。ここまでマイナスだからじゃなく、ここからスタートと考えないと」

 アドバイスしてくれる先生が柏木さんとはいえ、オオヤブがどこか吹っ切れないでいるのは、自分の「プライド」がまだ残っているからだろう(つーか根は相当頑固だし)。巷で「馬券師」といわれる人は、自分のスタイルに強烈なプライドを持っている自信家タイプが多いが、オオヤブは馬券好きのお父さんに毛が生えた程度なんだから、もっと素直に柏木コーチのアドバイスを受け入れればいいのだ。錆びついた武器とプライドを一度全部取り払ってこそ、新たな「馬券バカ」オオヤブが誕生するんじゃないのか! しかし、そんなオオヤブを見守る柏木さんは温かい。

「馬券の種類は8種類。複勝に限らず、レースによって使い分けるのが重要なんだよ。単勝3刀流にダメ出しをして複勝総流しなんていったけど、要はひとつの方法にこだわらず、そのレースに合った馬券を買いなさいということなんだ。オオヤブくんがこのレースは単勝と判断したらそれでいいし、ワイドでも馬連でもいい。馬券は柔軟性が大事。頭がガチガチじゃ当たらないよ」

7Rもハズれる

7Rもハズれる

 さすが、頑固で思い込んだら一直線というオオヤブの弱点が完全に見抜かれている。しかし、7Rでオオヤブの買った4.サクセセレーネは9着。単複で買ってても当たらなかったんだから、頑固がどうこうというより、そもそも予想にセンスがないのが問題じゃないの?

「当たらなかったねえ。でもこのあとの特別戦には面白いと思っている穴馬もいるし、本当に楽しみなのはこれからだよ」

『そ、その馬教えてください! 思いっ切り乗っからせていただきます』

 あれ〜、オオヤブさん、とうとう完全にプライド捨てちゃいました?

現在の馬券的中数 26本
ゴールまで残り 74本

特別戦に突入!果たして…

特別戦に突入!果たして…

【次回予告】
ついに特別戦に突入。皮切りとなるレースは、いつもは買わない障害レース(東京ジャンプS)だったが、柏木さんのひと言で参戦決定! ここでオオヤブが痛恨の結果に身悶えることになった――。




【馬券100本ノックのルール】
・netkeiba.comのコンテンツを使って馬券を的中させれば『1本』。馬券の種類は問わない。
・万馬券であれば1本プラス、10万馬券ならば10本プラス。
・100本に到着するまで本企画は終わらない(不人気で連載終了の可能性は僅かにあり)。
・馬券を購入できるのは月に1日。どのレースを買ってもいいが、重賞は必ず買う。
・購入資金はオオヤブのお小遣い3万円以内。足りなくなったら・・・・・・

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【主役:オオヤブ】 妻子持ちの36歳。一応、雑誌・書籍の編集業に携わっている。若かりし頃にイギリス留学経験もあり、ニューマーケットで馬券の研さんを積んだ、なんてことはまったくない3度のメシより競馬好き。ギャンブル全般に造詣が深いと本人は思っているが、周囲の見方は単なる「下手の横好き」。

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