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ベテラン相手に4歳のコパノリッキーが圧倒/かしわ記念

  • 2014年05月06日(火) 18時00分
かしわ記念

7〜8歳の中央4頭を相手に強いレースを見せた4歳のコパノリッキー(撮影:武田明彦)





 地方馬の出走が3頭しかなく、8頭立てとなったJpnIのかしわ記念。中央との交流となった1996年以降では、アブクマポーロが勝った1998年が9頭立てだったが、それを下回り過去最低の出走頭数となった。

 近年、地方で行われるGI/JpnI競走では、地方のトップクラスの多くが勝負にならないと見て、日程が近い地方限定の重賞にまわってしまうという傾向があり、出走してくるのはオープンでも下のほうのクラスか、もしくは旬を過ぎた馬がほとんどという状況。ますます格差は広がるばかり。昨年に続いて中央の5頭が掲示板を独占したばかりでなく、6着以下の地方馬には5着馬から大差がつくという結果になった。

 そうした兆候は以前からあって、2009年から2012年の4年間で毎年1頭だけ地方馬が掲示板に載っていたのだが、それはいずれもフリオーソ。中長距離路線ではそのフリオーソが、短距離路線ではラブミーチャンが、ともに引退した今となっては、こうした結果になってしまうのも仕方ないのだろう。

 先日のかきつばた記念では兵庫のタガノジンガロが今年初めての地方馬による交流重賞勝ちとなったが、大雨で水が浮いた馬場に助けられた面は否定できない。

 今後地方馬では、東京ダービーのあと北海道・田中淳司厩舎に戻ることが決まっているハッピースプリントや、芝路線のプレイアンドリアルらに期待ということになるのだろう。

 さて、かしわ記念だが、逃げるかと思われたコパノリッキーがスタートで後手を踏んだ。田辺騎手によると、ゲートの中で落ち着かず、後ろの扉を蹴っていたという。

 スタート後の直線では、セイクリムズン、ゴールスキー、ワンダーアキュートと3頭が前で並び、アドマイヤロイヤル、コパノリッキーが続く形となった。実力差がはっきりしている地方馬は、あえて勝負にはいかず。

 1〜2コーナーを回るところで、コーナーワークで先頭に立ったのは、前3頭のうち最内枠のセイクリムズンだった。セイクリムズンがハナを切ったのは、2012年5月のさきたま杯以来2年ぶりのこと。コパノリッキーが出遅れて、互いに譲り合って押し出される形での逃げ。それゆえペースはあまり上がらず、前半1000mまでのハロンごとのラップはいずれも12秒台。マイルあたりの距離だと、普通は先行争いで2ハロン目に11秒台を記録するものだが、今回の2ハロン目は12秒2。かしわ記念を2000年まで遡ってみたが、2ハロン目が12秒台だったことは一度もなかった。

 1000mから1200mのところでようやく11秒9というラップになったが、これはペースが遅いと見たコパノリッキーの田辺騎手が前をつかまえに行った3コーナーあたりのところ。

 アドマイヤロイヤルが遅れをとり、4コーナーではそれ以外の4頭が横一線。仕掛けて外から並びかけたコパノリッキーの手ごたえが抜けてよく見えた。コパノリッキーは砂をかぶるとレースをやめてしまうという面があるらしく、2コーナーを回りきるあたりからすでに外に進路をとっていた。「外を回すロスも考えたんですけど、早めに負かしにいきました」と田辺騎手。船橋コースは3〜4コーナーがスパイラルカーブになっているため、楽にコーナーを回ることができたという面はあったかもしれない。仮にこれがコーナーのきつい川崎コースだったら同じようなレースができたかどうか。

 そして田辺騎手が直線でムチを入れたのは2回だけ。接戦の2着争いを尻目に、コパノリッキーは最後の100mだけで楽に2馬身突き放した。

 ワンダーアキュートが2着に入れば馬連複1.7倍という決着のところ、セイクリムズンがハナ差で2着を確保した。セイクリムズンは前々走の黒船賞では3連覇を果たし、ダート重賞9勝のうち7勝が1400m戦で、あとの2勝は1200m。マイル戦(それ以上の距離も含めて)での連対は今回が初めてのこと。服部調教師は昨年あたりから、「年齢を重ねてズブくなってきているので、マイルくらいの距離のほうがいいのではないか」と話していたが、2着とはいえようやくマイル戦で結果を出した。今回は騎乗停止中の岩田騎手に替わって、元南関東の戸崎騎手。先に書いたとおりの平均的にゆったりしたペースに持ち込み、ラチ沿いぴったりの経済コースを回ってきての好走といえるだろう。

 1番人気で3着だったワンダーアキュートは、「状態も良かったし、いいレースをしていたけど、最後がちょっと甘くなったかなあ」(武豊騎手)というのは、さすがに8歳という年齢的なことがあってのことなのかどうか。とはいえ、唯一のJpnI勝ちである2012年のJBCクラシック(川崎)以降、GI/JpnIを中心に使われてきて、3着を外したのが前走フェブラリーSのみという安定ぶりには恐れ入る。

 それにしても7〜8歳の中央4頭を相手に強いレースを見せたのが、4歳のコパノリッキーだったというのは、ダート路線の今後に向けて明るい話題だ。次走は、JpnIIのさきたま杯か、JpnIの帝王賞となるようだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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