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エキマエが3連勝で重賞初制覇/兵庫チャンピオンシップ

  • 2014年05月07日(水) 18時00分
兵庫チャンピオンシップ

気性面での成長と戸崎騎手の冷静な騎乗が勝利につながったエキマエ(撮影:斎藤 修)





 近年、地方競馬で行われるダートグレードは、中央の強力なメンバーが揃えば揃うほど、対照的に地方馬はトップクラス不在という傾向にある。今回もそれはオッズに現れていて、地方馬は全馬が単勝万馬券。結果もそのとおり、中央5頭が掲示板を独占し、地方最先着の6着には大差がついた。

 ただ今回、地元兵庫勢の有力馬不在は仕方のない面はあった。そもそも一冠目の菊水賞が、重賞勝ちのない馬同士での争いだった。この世代の兵庫で2歳時から活躍が目立っていたのは“トーコー”軍団。大晦日の園田ジュニアカップを制したトーコーポセイドンは仕上がりが遅れ、年明けの笠松・ゴールドジュニアを圧勝したトーコーガイアは放牧先からの帰厩が遅れ、揃って菊水賞には間に合わず。牝馬のトーコーニーケはグランダム・ジャパンのタイトルを目指して遠征に出た。そして迎えた菊水賞は、ニホンカイセーラがクリノエビスジンに6馬身差をつけ、さらに3着には10馬身差がついた。数字だけを見ればニホンカイセーラが強い勝ち方をしたと言えそうだが、実際のところはその前にゴールするべき馬が出てなかったということ。その実績上位馬たちは、さすがにぶっつけで中央の実績馬に挑戦とはならなかった。

 ただ高知のクロスオーバーは、中央のチューリップ賞への挑戦で先団を追走するスピードを見せ、佐賀に遠征しての重賞勝ちもあるだけに、この馬だけは地方馬でも単勝万馬券にはならないかなと考えていたのだが、実際には地方馬の中では2番人気の173.5倍。さすがに地方競馬IPATの発売で、中央のファンが多く投票するようになると見方はシビアになる。かつての地方のシステムのみでの馬券発売であれば、もう少しオッズは低かったと想像するのだがどうだろう。地方馬でもっとも人気を集めた(と言っていいのかどうか)ニホンカイセーラの106.7倍は、菊水賞での勝ち方と、地元の応援もあってのことだろう。

 クロスオーバーは積極的に3番手の内を追走し、掛かるクセがあるというニホンカイセーラはペースが遅くなった1周目のスタンド前で押さえきれず先団の直後まで進出。しかし向正面でペースが上がったところで2頭とも圏外に去り、中央5頭の勝負に持ち込まれた。

 地元のベテラン川原正一騎手が手綱をとったランウェイワルツが3コーナーからのロングスパートで、直線では一旦先頭に立って勝ったかに思えた。しかし道中2番手のエキマエが差し返しての勝利。終わってみれば、ダート3勝馬同士の決着だった。

 勝ったエキマエは、逃げたエスメラルディーナの直後を追走。1周目のスタンド前のペースが落ちたところでも折り合い、今回初騎乗となった戸崎騎手も落ち着いていた。最後に差し返したのは、道中を楽に追走できて、余力があったのだろう。それにしてもこの馬はこれで通算4勝目なのだが、デビュー以来人気になったことがなく、デビューから3戦目の初勝利が単勝12.3倍の6番人気、2勝目の前々走500万下こそ6.3倍の4番人気だったが、そこを勝って臨んだ前走ヒヤシンスSは、なんと61.1倍、12番人気での勝利だった。さすがに今回は実質中央5頭の勝負で、単勝2.5倍、エスメラルディーナに続く2番人気だった。デビューから6戦目の樅の木賞まで最高が6番人気だったというのは、気性的な幼さを見せていたゆえだろう。初ブリンカーの樅の木賞が3着で、その後このレースまで3連勝。「ブリンカーをつけてから集中して前に行けるようになり、気性面での成長が大きかった」と中川公成調教師。加えて戸崎騎手の冷静な騎乗が今回の勝利につながったようだ。

 2着ランウェイワルツの3コーナーからのまくりは、同じ川原騎手で新春賞(園田)を連覇したニシノイーグルを思い起こさせた。完全にハマったと思ったが、今回は差し返したエキマエのほうをほめるべきだろう。

 1番人気に支持され、好スタートからレースを引っ張ったエスメラルディーナは、ゴール前で失速して3着。フィリーズレビュー3着ながら、桜花賞ではなくここに参戦したのは、ダートのほうがより期待が大きかったこともあったが、芝では脚元にも不安があったと斎藤誠調教師。園田初参戦のウィリアムズ騎手は「いい感じで走ってはいたが、深いダートがタフだった。最後の50mで止まってしまった」と。「距離は1600mくらいまでかなあ」と斎藤調教師。

 良馬場での勝ちタイム2分00秒2は、このレースとしては平均的なもの。昨年このレースを圧勝したコパノリッキーが、今年になってフェブラリーS、そしてこの前日に行われたかしわ記念と、GI/JpnIを連勝したため、このレースが出世レースのように言われたが、過去のこのレースの勝ち馬で、その後にGII/JpnII以上を勝ったのは、2000年のミツアキサイレンス(笠松)、2003年のビッグウルフ、しばらくあいて2012年のオースミイチバン、そして昨年のコパノリッキーと4頭。今年の中央勢はいずれもダートに実績のある粒ぞろいではあったが、少なくとも昨年のコパノリッキーほどのインパクトはなかった。とはいえ、勝ったエキマエはこれで3連勝と成長がうかがえ、2着のランウェイワルツもロングスパートで直線先頭というレースぶりが印象的だった。今後のさらなる成長に期待したい。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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