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ダノンレジェンドが押し切り重賞連勝!/黒船賞・高知

  • 2015年03月18日(水) 18時00分

(撮影:武田 明彦)



今後ダート短距離路線で中心的存在となる可能性を感じさせるものだった

 JRA勢は、JBCスプリントのタイトルがあるタイセイレジェンド、ドリームバレンチノ、さらにダート重賞9勝のセイクリムズンという実績馬に、新興勢力が2頭。昨年12月19日付のコラム『地方競馬に吠える/交流重賞出走馬の選定で進歩』で触れたように、今年から地方で行われる交流重賞(GI/JpnIと2歳・3歳戦は除く)におけるJRA所属馬の選定方法に変更があり、JRA枠のうち、まず3頭は従来通りの方法で選ばれ、残りの枠は近走の賞金で選ばれるようになった。

 今回勝ったのは、その近走の賞金で選定馬になったと思われるダノンレジェンド。佐賀記念でも実績を重ねたベテラン相手にマイネルクロップが重賞初制覇を果たしていたように、今年の地方のダートグレードでは、近走の賞金で選ばれた新興勢力がどれくらい活躍するかという視点で見るのも面白いかもしれない。

 勝ったダノンレジェンドは、ここ3走は逃げていたものの、今回は3番手から。逃げて結果を残しているとはいえ、必ずしもスタートがいいわけではなく、ゲートの出はのっそりとしている。それでもじわじわとスピードを上げて先頭に立っていた。今回はさらにスタートがイマイチで、内のドリームバレンチノ、外から寄ってきたタガノジンガロに挟まれそうになったものの、しかしそこで加速できたことで3番手につけられた。しかもうまく外に持ち出せたことで、馬群に揉まれることなく勝ちにつながった。

 前走カペラSの逃げ切り圧勝は12番人気だったが、昨年3月のなにわSは2番手から、10月のテレビ静岡賞は逃げて、ともに強い勝ち方をしているように、力を発揮できる時とそうでないときの落差が大きかったというだけ。それがテレビ静岡賞から着けるようになったブリンカーの効果もあって、安定して力を発揮できるようになってきたということのようだ。ゲートの出があまりよくないだけに、“揉まれなければ”という心配は今後もつきまとうが、頭数は多くても能力差に開きがある可能性が高い地方のダートグレードならその心配も少ない。今回の、4コーナー手前で直後に迫っていたドリームバレンチノを一瞬にして突き放し、2馬身差をつけての完勝は、今後ダート短距離路線で中心的存在となる可能性を感じさせるものだった。

 ドリームバレンチノは、休み明けで59kgでということを考えれば、むしろ褒めるべきは勝ったダノンレジェンドで、2着は合格点をあげてもいいのではないか。これで地方のダートグレードでは6戦オール連対。地方の小回りで安定した能力を発揮しており、一昨年のJBCスプリント(金沢)がダート初参戦で、今にして思えば芝からダートへの華麗なる転身だった。近年では、脚元への負担が少ないことからダートを使うという中央の調教師も少なくなく、ドリームバレンチノもそれで現役寿命を延ばしているといってもいいかもしれない。ただGI/JpnIを勝ってしまうと斤量を背負わされることが多くなり、今後もレースを選んでということになるのだろう。加用正調教師の管理馬では2007年に黒船賞を制したリミットレスビッドがダート短距離路線で11歳まで現役を続けた。

 3着には兵庫のタガノジンガロ、4着には浦和のジョーメテオが入り、年末の兵庫ゴールドトロフィーでもそれぞれ4着、2着に入った実力をあらためて示した。ともに中団の同じような位置を追走し、3〜4コーナー中間ではジョーメテオのほうが前にいたのだが、4コーナーで外を回って進出したジョーメテオに対して、タガノジンガロは内を突いたというコース取りの差が着順の違いになった。外を回したジョーメテオの東川騎手は、おそらく高知特有の砂の深い内を通りたくはないと思ったのだろう。そして内を選択したのは木村騎手のタガノジンガロで、4コーナー手前ではすでに手応えのなくなったセイクリムズンがすぐ前にいて、内に行かざるをえないということもあったかもしれない。それでも馬場の内目を通ったのは4コーナーを回るところだけ。直線を向いてすぐに外に進路を変えているので、砂の深いところを通ったロスはほとんどなかったように思われる。それにしてもドリームバレンチノに半馬身差まで迫った直線での脚は見どころがあった。

 中央の新興勢力では明暗が分かれ、1番人気に支持されたワイドバッハは5着。スタート後の位置取りが最後方になったのはいつものことだが、1コーナーを回るところで外に膨れてさらに置かれてしまった。コース形態にもよるが、この馬に地方の小回りは合わない。とはいえコーナーがゆったりしていて直線も長い門別のようなコースならこなせる可能性もあり、もし出てきたときにはもう一度狙ってみてもいいかもしれない。というのは、この馬を本命にしてしまった反省と負け惜しみです、はい。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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