クロスクリーガー9馬身差圧勝の評価は?/兵庫チャンピオンシップ
◆中央馬のほとんどが初めて経験する地方の小回りコース
近年では3歳のこの時期でも中央のダート路線の層がかなり厚くなっていて、それはこのレースの過去3年、いずれも中央馬5頭が掲示板を独占という結果にも顕著に表れている。この兵庫チャンピオンシップを見る限り、そうした傾向は2008年ごろからのようで、08、09年も中央馬が上位4着までを独占。2010年には地元兵庫の馬が3着に入ったものの勝ち馬からは9馬身差、2011年にも地元馬が2着に入ったが6馬身の差をつけられていた。
その2008年からの7年間では、伏竜Sを勝ってきた馬が活躍しているという傾向もあった。2010〜12年の3年間こそ伏竜Sの上位馬の出走はなかったが、それ以外の4年間は伏竜Sの勝ち馬が2勝2着2回と必ず連対していた。
そして今回は、その伏竜Sの1〜3着馬が揃って出走。1着がクロスクリーガーで、2着のリアファルはクビ差、3着(同着)のタンジブルは3馬身半とやや差があった。おもしろいのは今回の単勝オッズ。その3頭が一桁オッズで人気を集め、順に1.6倍、2.6倍、7.5倍と、伏竜Sの着差がそのまま単勝オッズにも反映されていた。
しかし結果は極端なものとなった。外枠からクロスクリーガーがハナを主張し、リアファルがぴたりとマークするように2番手。1周目のゴール板あたりから3番手以下は徐々に離された。3番人気のタンジブルはスタートでダッシュがつかず最後方に取り残されたことで苦しい競馬になった。ところが3コーナーあたりからクロスクリーガーがリアファルとの差を徐々に広げ始め、直線を向いて追い出されると9馬身差をつけてのゴール。1、2着の着順こそ伏竜Sのままだったが、着差は大きく開いた。クロスクリーガーは文句のつけようのない圧勝で、その強さだけが目立ったレースだった。
ただ兵庫チャンピオンシップは上位馬の着差が大きく開く印象があり、調べてみると、昨年こそ勝ったエキマエと2着ランウェイワルツがクビ差の決着だったが、それ以前の4年間の1〜3着馬の着差は、2013年(勝ち馬コパノリッキー)が6馬身+9馬身、2012年(オースミイチバン)が2馬身半+2馬身半、2011年(エーシンブラン)が6馬身+5馬身、2010年(バーディバーディ)が5馬身+4馬身というもの。
とはいえ、着差をつけて勝った馬が、その後もそれにふさわしい活躍をしているかというとそうでもない。コパノリッキーこそチャンピオン級の活躍をしているが、ほかではオースミイチバンがダイオライト記念を、バーディバーディがユニコーンSを勝ったのみ。実力以上に着差が開いてしまうレースのようで、このレースでの圧倒的な勝ち方の印象は、その後にはあまりつながらないというのがこれまでの傾向だ。理由として考えられるのは、中央馬のほとんどが初めて経験する地方の小回りコースで、その巧拙の差が実力以上の着差となってしまうのかもしれない。
さらに調べてみると、このレースの勝ち馬のみならず、このレースに出走していた馬で、その後のジャパンダートダービー(JDD)で3着に入った馬は、過去5年では皆無。以前では2006年の2着馬フレンドシップがJDDを勝ち、2003年の勝ち馬ビッグウルフはJDDも勝ち、2002年の勝ち馬インタータイヨウはJDDで2着という成績があったが、当時と今では3歳ダート路線の状況が違ってきている。
あくまで今回のクロスクリーガーのレースぶりを否定するものではなく、その評価は今後に委ねたい。
今回は中央馬に掲示板を独占されることはなく、地方最先着は、菊水賞2着だったコパノジョージが4着。そしてここまで7戦全勝で注目されたインディウムは5着だった。
インディウムはもともと翌日の3歳特別戦を使う予定で、おそらく格下の地元馬相手を想定した調教だったのだろう。その特別戦は頭数不足で不成立となり、兵庫ダービーへ向けてローテーションを崩したくなかったとのことで出走したようだが、それゆえ無敗馬にもかかわらず地元専門紙の評価も▲や△までだった。とはいえ立場的に恥ずかしいレースをするわけにもいかず、向正面から勝負にいったぶん、一旦は交わしていたコパノジョージに3コーナー過ぎで抜き返されての5着だった。冒頭でも触れたとおり中央馬の層は近年格段に厚くなっていて、3歳のこの時期でも地方馬は生半可なレベルの馬では通用しなくなっている。
インディウムについては、むしろこれで“無敗の連勝”という足枷がなくなり、中央の強い相手と対戦する中で力をつけていくことを期待したい。