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得意の良馬場で強さを見せたノーザンリバー/さきたま杯

  • 2015年05月28日(木) 18時00分

(撮影:武田明彦)



昨年逃したJBCスプリントのタイトルを

 ノーザンリバーによる連覇は、勝ちタイムがまったく同じ1分26秒7。ただしそのレース内容はかなり違っていた。昨年は最後の100mだけ脚を使って、ようやくゴール前で先頭のトキノエクセレントをクビ差だけとらえてという辛勝。1コーナーを回るところで他馬に寄られて態勢を崩す場面があり、また道悪が得意ではないということもあっただろう(昨年は重馬場)。

 対して、良馬場で行われた今年は、先行争いの地方馬3頭を前に見る4番手を追走。3コーナー過ぎで手ごたえ十分のまま先頭に並びかけると、直線では残り100m手前から他馬を突き放し、中団から押し上げてきたトロワボヌールに4馬身差をつけてという完璧な競馬だった。

 昨年も今年も先行した前の3頭は地方馬で、そのラップを並べてみると……

2014年:12.1-12.0-11.9-12.3-12.1-12.7-13.6
2015年:12.0-11.5-11.9-12.7-12.2-12.6-13.8

 昨年は最初の3Fが36秒0で、今年は35秒4。昨年は2番枠のナイキマドリードがすんなり先頭に立ったが、今年は2番枠に入ったリアライズリンクスがハナを主張し、ナイキマドリードが4番枠から譲らない勢いで競りかけ、1コーナーを回るところまで先行争いが続いた。しかも乾いた良馬場で、重馬場の昨年よりも速い35秒4だ。実際のタイム以上に厳しいペースだったと考えられる。それをやや離れた位置から見ていたのがノーザンリバーで、さらにうしろを追走していたトロワボヌールらには絶好の展開となった。

 勝ったノーザンリバーの昨年秋は、1番人気に支持されたJBCスプリントが5着、続くカペラSが12着敗退と力を発揮できないでいた。しかし4カ月の休養を挟み、東京スプリント(3着)を叩いた今回は本来の力を発揮できる状態にあったのだろう。今年7歳だが、あらためてダートスプリントチャンピオン、つまり昨年逃したJBCスプリントのタイトルを狙うことになりそうだ。

 牝馬のトロワボヌールは54kgという斤量に恵まれたとはいえ、このメンバーに入って、しかも初めて経験する1400m戦での2着はよく走った。ただ、前走マリーンCがサンビスタに4馬身差の2着で、今回も同じ4馬身差。一線級と互角に張り合うにはもう一段階のステップアップがほしい。

 ダートグレード初挑戦にもかかわらず僅差2番人気に支持されたリアライズリンクスは3着。前走プリムローズ賞の勝ちタイムが乾いた良馬場で1分26秒0。そのままさきたま杯でも通用するレベルでの楽勝だったので予想では本命にしたのだが、今回はそのタイムから1秒6も遅れてのゴールだった。楽に逃げられたプリムローズ賞の前半3ハロンが36秒1だったのに対して、今回は先にも示したとおり35秒4。そのラップでナイキマドリードに突かれてという流れは、やはり相当に厳しかった。普通ならズブズブになってもおかしくない展開だが、それでも3着に粘ったということでは、次に向けて期待の持てる内容だったともいえる。この経験は次につながるはずだ。

 あわやと思わせたのが、そのリアライズリンクスから半馬身差で4着だった岩手のラブバレット。4コーナーあたりでは一瞬先頭に立つ場面があり、勝てるかのような勢いもあった。昨年3歳時は正月の金杯(水沢)を制したものの、4月以降のシーズンは勝ち切れないレースが続いて夏以降は休養。しかし今年冬休み明けからの2連勝でまるで馬が変わったかのように力をついていた。地元に戻ってのクラスターCあたりでもおおいに期待できそうだ。

 ドリームバレンチノは5着。東京スプリントの惨敗は何かしら原因があってのことと思ったのだが、今回も中団まま伸びず。年齢的なことがあるのかどうか、勝負どころからの闘争心が見られない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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