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1200mなら相当な能力を発揮するシゲルカガ/門別・北海道スプリントC

  • 2015年06月12日(金) 18時00分

(撮影:田中哲実)



転機は2走前の千葉S

 東京スプリントでは2番手を追走したダノンレジェンドに完璧に差し切られたシゲルカガだったが、今回は道中2番手との差を3馬身ほどに保っての逃げに持ち込み、見事に逃げ切ってみせた。

 勝ちタイムの1分12秒5は、このレースが門別1200mで行われるようになった過去5年と比較してもっとも遅いもの。とはいえ、この日はパサパサに乾いた良馬場。他の1000〜1200mのレースを見ても、普段より少なくとも1秒は時計を要していた。現在でもコースレコードとなっている2010年ミリオンディスクの1分9秒6は極端に速かったが、それ以外は1分11秒台が3回で、2013年のセレスハントが1分12秒2というもの。馬場差を考えれば、今年は標準的な勝ちタイムだったともいえる。

 ただ勝ち馬のレース内容は例年とまったく違うもの。過去5回で逃げ切り勝ちは一度もなかった。2009年のミリオンディスクが4コーナー4番手からの抜け出しだったが、ほか4回はすべて4コーナー6、7番手からの差し切りというもの。今回のレースのラップタイム(逃げ切りなので、すなわちシゲルカガのラップタイム)を前後半で分けると、34秒8、37秒7で、計1分12秒5。前後半の差が2秒9もある。飛ばせるだけ飛ばして行って後続に脚を使わせ、自身はなんとか粘り込むというレースだ。

 過去5年の勝ち馬の前後半のラップ差(レース自体のラップ差ではない)は、0秒7〜2秒2。前後半の差が2秒9というシゲルカガのような前がかりのラップで飛ばしていけば、普通はバテてしまうものなのだ。いや、実際にはバテているのだが、道中後続との差をある程度開いておいて、あとはどこまで耐えられるかという競馬だった。

 それを考えると、シゲルカガの転機は、ダートに転向した2走前の千葉Sにあったといえる。シゲルカガは、2歳時に2度ダートを使われたことがあるものの、その千葉Sの前までに挙げた勝利はすべて芝の1200m戦。もちろんすべて逃げ切りだ。千葉Sのときには芝1400m戦も選択肢にあったとのこと。しかしそれまで1400mでは4着が最高という成績で、一本調子で逃げるこの馬に1400mは長いと判断され、久々のダート戦となった千葉Sも逃げ切り勝ち。そこから東京スプリントでの2着、今回の勝利へとつながることになった。

 前半飛ばして行っても1200m戦ならある程度は持ちこたえられる。それがシゲルカガの強さといえそうだ。

 2番手を追走し、最後3/4馬身差まで追い詰めたのが、今回北海道への転入初戦となったポアゾンブラック。昨年9月にはエニフSを逃げ切っているように、この馬もダートでのスピードはかなりのものがある。盛岡の南部杯でもベストウォーリアの2着があった。しかしその後は地方のダートグレードに登録しても賞金的に除外されることが何度かあり、中央にいては機会を逸するばかりということでの転厩だったのだろう。地方所属としてなら除外されることもほとんどなく、今後、この路線での活躍が期待される。

 それにしても、ポアゾンブラックがもし勝っていれば、2歳戦以外でホッカイドウ競馬所属馬がダートグレードを勝つのは、2000年にこのレースを13歳(旧年齢表記)で制したオースミダイナー以来となるところだった(馬インフルエンザのため地方馬のみで行われた2007年のブリーダーズゴールドCは例外)。そういう意味ではまことに惜しい2着だった。

 そしてダートグレード3連勝中で断然人気に支持されたダノンレジェンドは、ゴール前猛追したものの、2着のポアゾンブラックに3/4馬身及ばずの3着。4コーナー7番手は例年であれば勝利圏内だが、今回はシゲルカガからかなり離されての位置取りだった。たしかにゴール前猛追した末脚を見ると負けて強しという内容だったが、逃げたのがシゲルカガでは、せいぜいポアゾンブラックの直後くらいの位置で追走できないと差し切るのは難しかった。

 東京スプリントのときが、逃げたシゲルカガから2〜3馬身ほどの差を保っての追走だったものが、今回はさらに離れて中団からの追走。5番枠からの発走で、一旦位置取りを下げて外に持ち出してということで、その位置取りになったようだ。もともと馬群に揉まれると走る気をなくすところがあり、それを考えての作戦だったのかもしれない。ハイペースで逃げても粘れるライバルに対し、今回は道中で差をつけられすぎたというのが敗因だろう。

 さて、これでJBCスプリントの前哨戦、東京盃が楽しみになった。東京スプリントの上位3頭、ダノンレジェンド、シゲルカガ、ノーザンリバーが、同じ舞台での再戦となりそう。シゲルカガが逃げて、ダノンレジェンドが追うという、おそらくは東京スプリントと同じような展開。そして中団からこれらを追走することになるであろうノーザンリバーも、さきたま杯連覇を果たして調子を上げている。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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