スマートフォン版へ

オータムセール終了

  • 2015年10月08日(木) 18時00分
生産地便り

会場の風景



庭先取引から市場取引への移行を強く実感

 今年最後の1歳馬市場となるオータムセールが、10月5日(月)より7日(水)までの3日間の日程で新ひだか町の北海道市場にて開催され、盛況のうちに幕を閉じた。

 3日間とも幸いに秋のカラッと晴れ渡った爽やかな気候に恵まれた。初日の出足はやや鈍かった印象だが、中盤より落札がどんどん増え、売却率は64.07%まで伸びた。

 昨年、オータムセールとしては史上初めて62.02%の売却率を記録したが、今年もこと売却率に関しては勢いが衰えていなかった。初日の数字だけで見て行くと、231頭(牡99頭、牝132頭)の上場に対して、落札されたのは148頭(牡72頭、牝76頭)。売り上げ総額は税込で4億5036万円と、前年よりも2946万2400円の増加であった。ただし、初日に限っては、平均価格が前年よりも14万5645円減少し304万2973円となった。

 初日は前年比で上場頭数が10頭増えたがそれ以上に落札頭数が16頭増加したため、売却率を4.34%押し上げた形である。

 なお初日の最高価格馬は187番「バシマーの2014」(父スマートファルコン、母バシマー、母の父Grand Lodge、牝鹿毛)の1404万円(税込)。ノーザンファーム生産馬で販売申し込み者は(有)ノーザンレーシング。落札者は石川達絵氏。

生産地便り

初日最高価格馬187番立ち姿


 また牡馬の最高価格馬は、243番「マックスロンシャンの2014」(父プリサイスエンド、母マックスロンシャン、母の父ネオユニヴァース、黒鹿毛)の1296万円(税込)。生産者は(有)北島牧場、販売申し込み者は(有)二風谷ファーム、落札者はノーザンファーム。

生産地便り

初日牡馬最高価格馬243番落札場面


生産地便り

初日牡馬最高価格馬243番立ち姿



 初日の1000万超の落札馬はこの2頭のみであった。

 オータムセールは3日間のうち最初の2日間が「新規申し込み馬」である。平均価格こそ微減したものの、まずまずの数字を残した初日に続いて、2日目は、従来この市場にほとんど縁のなかったいくつもの大手牧場からの多頭数上場があり、一気に盛り上がった。

 2日目は222頭(牡128頭、牝94頭)が上場され、落札は160頭(牡75頭、牝85頭)。総額6億9811万2000円を記録し、平均価格も436万3200円と、ほとんどサマーセールの数字に近づく勢いであった。とりわけ牡馬に関しては、初日の72%に続いて2日目もほぼ80%に迫る売却率を記録し、平均価格も530万6400円とオータムセールとしては出色の数字を叩き出した。

 牡牝合わせると売却率は72%だが、前年2日目の68.42%を超える数字が出てくるとは思わなかった。平均価格もまた前年比で133万円も急上昇し、ピークに達した感があった。

 この活況の原動力を演じたのが、まずダーレー・ジャパン・ファームと、社台ファーム及び(株)社台ブラッドメアからの上場馬たちだ。

 ダーレー・ジャパン・ファームは24頭もの大量エントリーで、うち4頭は欠場したものの、20頭が上場。19頭を売却した。のみならず、8頭が税込1000万円を超える落札価格となり、今市場における存在感は圧倒的であった。

 一方の社台ファームと社台ブラッドメアも、合わせて14頭を上場し、完売する好成績であった。その他、トウショウ牧場(8頭完売)、シンボリ牧場(5頭完売)なども、確実に売れていた。

 2日目は1000万円超も続出し、11頭に及んだ。最高落札価格馬は261番「ラヴァリーノの2014」(父ストリートセンス、母ラヴァリーノ、母の父Unbridled's Song、牡鹿毛)の1944万円(税込)。ダーレー・ジャパン・ファームの生産、申し込みで、落札者は増田雄一氏。

生産地便り

二日目最高価格馬261番落札場面


生産地便り

二日目最高価格馬261番立ち姿



 牝馬の最高落札馬は350番「ゴールデンプライズの14」(父キャプテントゥーレ、母ゴールデンプライズ、母の父ホワイトマズル、芦毛)の1620万円。社台ファーム生産で(株)社台ブラッドメアが販売申し込み者。落札者は原禮子氏。

生産地便り

二日目牝馬最高価格馬350番落札場面


生産地便り

二日目牝馬最高価格馬350番立ち姿



 3日目は、サマーセールからの再上場馬が出てくるため、従来は平均価格、売却率ともにやや落ち込む傾向があったのだが、今年は、初日と2日目の勢いが持続し、3日目もまずまずの結果であった。203頭(牡86頭、牝117頭)が上場され、124頭(牡57頭、牝67頭)が落札され、売却率は61.08%と6割を堅持した。

 総額3億3637万6800円は、昨年同日よりも約800万円の減だが、これは上場頭数が51頭、売却頭数も24頭それぞれ少なかったことによる数字だ。

 その結果、平均価格は前年同日と比較すると37万5797円増の264万8413円となった。

 3日目になれば流石に1000万円超の落札馬は少なく、1頭のみ。532番「ロサンジェラの2014」(父プリサイスエンド、母ロサンジェラ、母の父Red Ransom、牡鹿毛)の1188万円で、この馬が最高価格馬であった。生産者は(有)谷川牧場。落札者は井出登氏。

生産地便り

三日目最高価格馬532番落札場面


生産地便り

三日目最高価格馬532番立ち姿



 3日間を通じて656頭(牡279頭、牝377頭)が上場され、432頭(牡204頭、牝228頭)が落札されたことになる。売り上げ総額は前年より2億4647万7600円増加し、14億7690万円であった。また売却率は3.83%増の65.85%を記録し、予想以上の好成績となった。加えて平均価格も前年比で60万円近くも上昇し、341万8750円であった。

 オータムセール全体を振り返り、日高軽種馬農協の木村貢組合長は、「大手牧場からのブラックタイプの濃い上場馬が数多くいたとはいえ、この結果は予想以上の出来でした」とし、「国内経済の好調さや中央地方いずれも馬券売り上げが堅調であることも背景にあると思いますが、この結果を何とか来年以降も持続させてより良い市場になるよう努力してまいります」とコメント。とりわけオータムセールの結果は、嬉しい誤算というか、戸惑いを覚えるほどの数字であったようで、「99点くらいは付けられると思います」と笑顔で締めくくった。

 これで日高軽種馬農協主催の4市場(トレーニングセール、セレクションセール、サマーセール、オータムセール)は全て終了し、最終的には全体で2393頭が上場されて、1576頭が落札、総額で13億6405万円増の84億1320万円を記録した。バブル全盛期の数字までは及ばないものの、今年はどの市場においても「サラブレッドの流通が庭先取引から明らかに市場取引へと移行してきていること」を強く実感させられた1年であった。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング