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コースと距離が大きく変わってプラスが加わる/優駿牝馬

  • 2016年05月21日(土) 18時00分


自分に合ったリズムで追走できるはず

 人気を分ける西のシンハライト、東のチェッキーノともに、特に大きな死角を抱えるわけではない。東京2400mになるからといって評価は下がらないが、コースと距離が大きく変わってプラスが加わるはずのデンコウアンジュに期待する。

 2歳の10月に「アルテミスS」1600mで、当時すでに断然の評価を受け始めていたメジャーエンブレムを、大外から鮮やかに差し切っている。あの時点でメジャーエンブレムも自己最高の1600mを1分34秒1(上がり34秒2)だったから、失速したわけではない。デンコウアンジュは鋭い切れ味で一気に差したというより、速い脚が長続きした印象があった。中味は「60秒8-上がり33秒3」だった。

 そのあと、「阪神JF→チューリップ賞→桜花賞」と1600m戦を3連敗しているが、阪神JFは先行したら末脚がなし崩し。チューリップ賞は出負けして追い込み、シンハライトと0秒3差の1分33秒1(時計が速すぎた)。桜花賞はインに詰まり、馬群をさばけずロスの多い競馬。チューリップ賞の中味は悪くないものの、アルテミスSこそ勝っていても、マイルの速い流れを追走は合わない印象が濃い。

 ちょっと期待を裏切っている形の父メイショウサムソン(社台SS→イーストスタッド)は、4世代目の産駒デンコウアンジュが初めての重賞勝ち馬となったが、マイラー型を送る可能性は低いから、当たり前でもある。まして母の父になるマリエンバード(凱旋門賞馬。父カーリアン)は、スピード能力が足りず6年間だけで再輸出された、不成功種牡馬。完成度が高いわけでもなく、デンコウアンジュは2歳時のマイル戦で秘める能力の一端は見せたが、ここまであまり合わない条件のレースばかりに出走してきたと考えたい。

 今度は、1戦1勝の東京コース。距離は一転、2400mに延長するから、自分に合ったリズムで追走できるはずである。折り合いの心配はない。アルテミスSと同じようなレースができて不思議ない。

 デンコウアンジュの祖母の父は、なんともう「12頭」ものオークス勝ち馬の血統表に顔を出している天才種牡馬サンデーサイレンス。直仔の勝ち馬は3頭なのに、父方、母方を合わせた孫の世代が9頭もオークスを制しているのだから(目下8連勝中)、その影響(遺伝)力たるや信じられないところがある。デンコウアンジュは、血統表の3代前にサンデーサイレンスが顔を出すだけだが(ひ孫世代になる)、ほかの種牡馬ならともかく、サンデーサイレンスの血が入っているのは無形の強みだろう。

 オークス向きの種牡馬というなら、1970年代に産駒が4連勝しているのはパーソロン。デンコウアンジュの3代母もまた無類のオークス血統パーソロン産駒であり、4代母の父ハードリドンもオークス勝ち馬リニアクインを送っている。古い牝系などといわれるが、デンコウアンジュの牝系はオークス血統の積み重ねだった。

 追い込み競馬ではなくても、川田騎手はジェンティルドンナのイメージで乗ればいい。2強が大本線。伏兵には、同じメイショウサムソン産駒のフロンテアクイーンを加えてみたい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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