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今週、大注目の音無厩舎2頭 弱点克服のアメリカズカップ/吉田竜作マル秘週報

  • 2016年09月14日(水) 18時00分


◆厩舎スタッフが一丸となって特訓

 競馬場に行けば、ごくごく当たり前にサラブレッドがいて、ターフを疾走する。ファンからすれば週末のいつもの日常だ。この「日常」は関係者の努力によって支えられている。

 若駒に対する関係者の談話で「長距離輸送が心配」とか、「初めての競馬場がどうか」といった類いのものを目にすることがあるだろう。生まれてから2年やそこらの競走馬にとっては、初体験のことばかり。興奮状態になるのも無理はない。人に置き換えれば、遠足や修学旅行を控えた子供と同じ。かくいう記者も…いや、脱線はやめておくとして、問題はサラブレッドの場合、興奮状態がレースに悪影響を及ぼしかねないことだ。

 多くは“イレ込み”という言葉に集約されてしまうが、緊張状態が続いて発汗がひどくなる、落ち着きがなくなる、さらには水すら一切口にしなくなるなど、その状況は様々。その引き金になっているのが、戦いの場へ向かうために避けて通れない「馬運車」で、若駒たちにとっては厄介なハードルの一つとなっている。本質的に狭いところを嫌うサラブレッドにとってゲート同様、閉鎖された車内に向かうのは抵抗があるのも当然。現在は育成段階から対策を取るところもあり、馬運車慣れしてから入厩する馬も増えたと聞くが、一方で慣れてくれない馬もいる。

「育成先からなかなか馬運車に乗ってくれなくて…。鎮静剤を打ってこっちに連れてきたんだ」とは野路菊S(17日=阪神芝外1800メートル)に有力馬アメリカズカップを出走させる音無調教師。これではレースだけでなく、放牧→調教→競馬→放牧という輸送を伴うサイクルにも耐えられなくなる。そこで音無調教師は一計を案じた。

「毎週、検疫から馬運車で引き揚げてくる馬がいるだろ。降ろした後に(馬運車にアメリカズカップを)乗せる練習をさせてもらっている」

 厩舎スタッフが一丸となって特訓。先週の段階では「もう大丈夫」と音無調教師は胸をなで下ろした。どんなことでも「日常」はこういったたゆまぬ努力に支えられている。競馬の世界もそれは同じというわけだ。

 ただ、1週前の併せ馬でアメリカズカップは後れを取ってしまった。馬運車に慣れさせる特訓の影響が出たのか?

「多少太いのもあったと思うけどね。アメリカズカップが動かなかったというよりは、相手が動き過ぎたんだよ」

 その“動き過ぎた”パートナーこそ、スティッフェリオ(牡=父ステイゴールド、母シリアスアティテュード)。指揮官はこの馬の名前が出てくると心なしか機嫌が良くなる。かける期待もそれだけ大きいのだろう。

「その前の週もダノンリバティ(古馬オープン)と併せてそれなりに動けていたくらい。能力があるのは間違いない」

 スティッフェリオの注目のデビュー戦は野路菊S翌日(18日)の阪神芝外1800メートル。骨っぽいメンツが揃いそうなここを勝ち抜くようなら…。音無厩舎の2歳馬のラインアップはさらに充実することになる。

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