スマートフォン版へ

単4.9倍の攻防と池江厩舎の表と裏

  • 2016年10月27日(木) 12時00分


サトノダイヤモンドが圧勝した。
位置取りは7-8-9-5。

「菊花賞は道中8番手前後」。
池江厩舎の描いているであろう菊花賞のベストポジションをきちんと奪い取って、危なげなく駆け抜けた(ベストポジションについては先週のコラム参照)。

っていうか、ルメールが魅かれたという「3角〜4角の加速」をやっとG1で目撃できた気がした。

ディーマジェスティが離されまじと追っかけたけれど、ついて行けなかった。加速装置が発動したってことだろう。

ディープインパクトの位置
7-7-7-7 1着

オルフェーヴルの位置
8-10-6-3 1着

サトノダイヤモンドの位置
7-8-9-5  1着

サトノダイヤモンドの競馬は、入口はディープインパクトで、出口はオルフェーヴルのようだった。やはり池江師は「その位置(8番手前後)」にこだわっているように見えた。そして、力のある馬が菊花賞で1着するためのベストポジションだと改めて思った。

それは今週の「祐言実行」を読んでもわかる。
秋華賞では勝つためのベストポジションにこだわっていた福永騎手だけど、菊花賞では人気馬に一矢報いるためのベターポジションにこだわっていた。

うむ、池江師と福永騎手はやはりベストポジショニストだ。

その福永騎手がスプリンターズSの位置取りについて語っている。自分の「世界まるごとHOWマッチ」説(スプリンターズSの週のコラム参照)を裏付けてくれるような語りは、なんもなかったけれど、香港スプリント挑戦のことばは力強かった。

香港の短距離馬のレベルを誰よりもわかっている福永騎手が言うのだから、間違いない! ビッグアーサーのまるごとHOWマッチの値踏みは終わっているとみた!

その池江厩舎が今週の天皇賞ではラブリーデイとサトノノブレスを出走させる。

去年1着のラブリーデイだけど、今年は去年のような活躍ではない。
G2までは馬券に食い込めるサトノノブレスだけど、G1では歯ごたえのない走りが多い。G1で頑張れたのは菊花賞(2着)だけだ。

はたして今年の天皇賞秋でもラブリーデイは好走できるのか? サトノノブレスは大激走できるのか?

自分はけっこう期待している。

去年は、1600の得意なクラレントが逃げて、2000より1800の方が得意そうなエイシンヒカリが番手に控えて、ペースを作った。で、勝ったのは4番手を進んだ2000が得意なラブリーデイだった。

クラレントの鞍上は田辺で、エイシンヒカリの鞍上は武豊だった。今年も主導権争いを田辺のロゴタイプと武豊のエイシンヒカリがしそう。田辺の騎乗する馬は去年とは違えど、マイルで好成績を残すロゴタイプだ。

去年と同じような展開になるやもしれない。となると、今年も4番手のポジションをラブリーデイが取って、去年同様にいい走りを見せる可能性はある。正直、1着は難しいような気がするけれど、2着か3着ならルメールが粘り込ませるように思えてならない。

ルメールの天皇賞秋といえば、ダンスインザムード2着、イスラボニータ3着。
どちらも3番手を追走し、馬券圏内に走らせた。先行する馬を粘り込ませるのがルメールは上手い。

ラブリーデイは予想では6人気。去年1着した宝塚記念以来の人気だ。
とても美味しそうな人気だ。
去年の天皇賞秋と同じようなペースになれば、今年も馬券圏内で頑張れるのではないか? 去年とペースが違ったらどうなのか? そこを埋めるのがルメールの役目ではないのか?

サトノノブレスは今年の臨戦が一番よく見える。

古馬になってずっと秋はオールカマーを使っているけれど、今年が一番走る気に満ちているように思える。

4歳時
オールカマー 1人気16着
天皇賞秋   11人気8着

5歳時
オールカマー 8人気10着
アルゼンチン 7人気4着

今年
オールカマー 3人気2着

中山の鬼・ゴールドアクターにタイム差なしで食らいついた。

馬券圏内に入ったことのなかった2200のオールカマーで2着したのにも好感が持てる。

2200 0-1-0-3
2000 3-2-2-1

これなら得意の2000での上昇に期待してもいいのではないか? ちなみに着外の1は、前記した天皇賞秋の8着。それでも着差は0.3だった。得意な距離であることがうかがえる。

馬に走る気がありそうな、今年ならば、何かを期待したくなる。勝つとは思っていないけれど、3着なら…………そんな期待は持ちたくなる。

鞍上のシュタルケにも好感が持てる。トーセンジョーダンはピンナで1着した。池江厩舎の秋のG1の外国人騎手は、誰だって、と記すとシュタルケに悪いけれど、誰だっていい。ポジショニストの池江師にとっては、先入観のないスポット系外国人騎手の方が指示をしやすいのかもしれない。

もちろん穴人気になるようなら控えたいけれど、予想では10人気。単79.5倍。ぜんぜん人気がない。ひゃっほー!

と、喜んでみたものの……人気がなさすぎるような……。
理想は33.3倍の7人気で1着したトーセンジョーダンや、34.3倍の10人気で2着した去年のステファノスだ。

この単勝だと119.3倍で4着したラブイズブーシェや119.8倍で4着したオウケンサクラを思い出してしまう。どちらも馬券を買っていたからよ〜く覚えている。だから願う。寄せるなら、30倍の方へ! よろしく!

(ヘヴンリーロマンスは単75.8倍で1着したけど、今回は勝つとは思ってないので、もうちょっと売れて欲しいのであります。それにみんなに注目されてる池江厩舎なのだから、デキがよければ自然に伝わって、売れるはず。だからもう少し人気になって欲しいのであります)

というわけで、今年の天皇賞秋は、池江厩舎の2頭に注目することにした。

ルメールには去年同様の4番手前後、シュタルケにはその後ろの5、6番手の指示を出すとみた! サトノノブレスは父ディープインパクトなのに差しタイプじゃない。真ん中より後ろにいて、馬券圏内に入ったことはない。

シュタルケは日本の重賞で10回馬券に絡んだことがあるけど、すべて位置取りは先行〜真ん中だった。そういう騎手に池江師が差しを指示するはずがない。

------------------------
オッズ視点でみると天皇賞秋はたいそう整理できる。
------------------------

相手は簡単だ。

#1「単オッズ4.9以内に3頭いたら、その3頭の内の2頭は3着以内に走る」

#2「単オッズ4.9以内に2頭だったら、その2頭の内の1頭は3着以内に走る」

#3「単オッズ4.9以内に1頭だけだったら、何かが起こる」

つまり、天皇賞秋は3人気まで見れば、軸選びに接近遭遇できるということだ。去年もここで記したけれど、そのとおりだったので今年も記すことにした。

以下は、そのおさらい。とりあえず、#1、#2についてを記す。

07年
単4.9以内に2頭 だから馬券圏内に1頭は来る(以下略)。
メイショウサムソン 2.9 1着
アドマイヤムーン  3.8 馬券圏外

08年 3頭だから2頭は来る
ウオッカ      2.7 1着
ダイワスカーレット 3.6 2着
ディープスカイ   4.1 3着
(全部来ちゃったけど)

10年 2頭だから1頭は来る
ブエナビスタ    2.2 1着
アーネストリー   4.9 3着
(両方来ちゃったけど)

12年 3頭だから2頭は来る
フェノーメノ    3.4 2着
ルーラーシップ   4.5 3着
カレンブラックヒル 4.7 圏外
(ちゃんと2頭来た)

13年 3頭だから2頭は来る
ジェンティルドンナ 2.0 2着
トウケイヘイロー  4.4 圏外
エイシンフラッシュ 4.7 3着
(ちゃんと2頭来た)

14年 3頭だから2頭は来る
イスラボニータ   2.8 3着
ジェンティルドンナ 4.7 2着
フェノーメノ    4.9 圏外
(ちゃんと2頭来た)

15年 2頭だから1頭はくる
ラブリーデイ    3.4 1着
エイシンヒカリ   4.3 着外
(ちゃんと1頭来た)

ほら、この通り。
抜けてるところは4.9以内に1頭しかいなかった年だ。そう何かが起こった年。

05年 4.9以内に1頭
ゼンノロブロイ   2.2 2着

1着 ヘヴンリーロマンス 75.8 14人気
2着 ゼンノロブロイ   2.2  1人気
3着 ダンスインザムード 53.9 13人気

1人気は圏内に走ったけれど、1着は14人気のヘヴンリーロマンス。
何かが起こった! 単勝ビッグサプライズ!!
おまけに3着も13人気!

06年 4.9以内に1頭
スイープトウショウ 3.9 圏外(5着)

1着 ダイワメジャー   7.0 4人気
2着 スウィフトカレント 16.9 7人気
3着 アドマイヤムーン  6.0 2人気

1人気は5着に負けた。

09年 4.9以内に1頭
ウオッカ      2.1 3着

1着 カンパニー     11.5 5人気
2着 スクリーンヒーロー 31.4 7人気
3着 ウオッカ      2.1 1人気

1着は8歳馬の5人気カンパニーで、単31.4倍のスクリーンヒーローが2着した。
1人気は3着に踏ん張ったけれど、馬連は万馬券(16490円)になった。馬連が万馬券になったのはヘヴンリーロマンスが1着したとき(馬連12340円)以来で、この10年でもこの1回のみ。何かが起こった。

11年 4.9以内に1頭
ブエナビスタ    2.8 4着

1着 トーセンジョーダン 33.3 7人気
2着 ダークシャドウ   5.7 2人気
3着 ペルーサ      8.2 6人気

1人気は4着惜敗し、単33.3倍のトーセンジョーダンが1着した。単勝33.3倍は、単75.8倍のヘヴンリーロマンスに次ぐ高配当。やっぱり何かが起こった。

では、今年はどうか。
予想では、

1人気 モーリス 3.4
2人気 ルージュバック 4.1
3人気 エイシンヒカリ 4.9
----------------------------------------
4人気 アンビシャス  5.8

3人気までに3頭。
でも3人気のエイシンヒカリが微妙な場所にいる。去年と同じ雰囲気だ。

去年の週中の予想はこんな感じだった。
1人気 ラブリーデイ    3.4
2人気 エイシンヒカリ   4.9

で、確定の実オッズは上記したようにこんな感じだった。
ラブリーデイ    3.4 1着
エイシンヒカリ   4.3 着外

エイシンヒカリは基本的に人気者だから、今年も実オッズでエイシンヒカリは4.9以内に踏ん張るのではないか。

3頭だと想定すると、
モーリス 
ルージュバック 
エイシンヒカリ 
この3頭のうち、2頭が馬券圏内に走る!

仮に2頭だと
モーリス 
ルージュバック 
のどちらか1頭は馬券圏内に走る(両方の場合もある)!

極めてキャンタンだ!
本当は4.9以内に1頭で、「何かが起こる」ことを期待したいのだけれど、予想オッズと自分の肌感覚を大事にすると、今年は「1頭」の年にはならないような気がする。

つまり、何かは起こらない!
ならば、3人気までの3頭を絡めれば、なんとかなる!

何も起こらないとしつつ、ド人気薄のサトノノブレスに期待するのは矛盾しているけれど、データもゆらぐことはある。ならば矛盾も含めて飲み込むまで。


------------------------
天皇賞秋・注目馬
------------------------

表・ラブリーデイ
裏・サトノノブレス

軸選び
単4.9以内の1頭か2頭

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング