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紛れのない距離だけに信頼性は高い/ステイヤーズS

  • 2016年12月02日(金) 18時00分


長距離戦の重要度も忘れないでおきたい

 1200mのスプリント戦だと、ハナ差、クビ差、あるいは「0秒1〜0秒2」の差が重要な岐路。時計の差はつかない。しかし、菊花賞3000m、天皇賞・春の3200mとなると、明確な「タイム差」が生じる。したがって、馬場差、ペースなどは別に、長い歴史の中では「長距離こそ時計の優劣がレベルを示す」という考え方が成立する。

 近年のステイヤーズS・3600mの勝ち時計は、だいたい3分45秒台前後が一般的だが、レコードは1994年のエアダブリン(父トニービン、母ダンシングキイ)の「3分41秒6」である。この差は驚くほど大きい。

 長距離戦は競走体系の中で、主要で重要な位置から外れて久しいが、人間の競走に「もっと距離を短縮しよう」という声はない。マイル〜2400mくらいが総合の勝負としても、サラブレッドの競走にも同じようなところがあり、数少なくなった長距離戦の重要度も忘れないでおきたい。半世紀にも達する悲願の凱旋門賞制覇を、決まって、止まって差されて負けているうちは、長距離のビッグレース不要論はむなしいことでもある。

 昨年、格上がり後の初オープンにこの重賞を選んだアルバート(父アドマイヤドン、母の父ダンスインザダーク)は、全体時計こそ平凡でも、中位で折り合って仕掛けを待っていたムーア騎手がスパートの合図を送ったのは、最後の4コーナーを回る少し手前。そこから馬群を割るように抜け出して5馬身差の圧勝だった。

 典型的なスタミナ型などということはないが、ダートの中距離G1も芝のマイルのG1も勝った父アドマイヤドンの母の父は、前出エアダブリンに登場したトニービン。アルバートの母の父ダンスインザダーク(父サンデーサイレンス、母ダンシングキイ)は、エアダブリンの2歳下の半弟である。3600mを現実に楽勝しているだけでなく、少なくともライバルより血統背景にもスタミナ不安はない。同じムーア騎手で1キロ増だけ。紛れのない距離だけに、信頼性は高い。

 順当に長距離戦専門のモンドインテロと、昨年の2着時より調教の動きがずっといいカムフィーが相手本線。昨年、インから伸びかかって2着カムフィーとは0秒2差だったマイネルメダリストも、もう上昇などありえないが、この距離だから少しだけ買いたい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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