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寒風の中、騎乗訓練続く

  • 2020年12月02日(水) 18時00分

厳しい訓練を乗り越えた16名の研修生


 先日、久々にBTC研修所を訪れた。現在、在籍しているのは育成調教技術者養成研修第38期生の16名。今春20名で研修をスタートしたものの、途中で4名が退学し、この数になった。

 月が替わった12月1日は、浦河でもついに雪が積もり、辺り一面真っ白の銀世界へと風景が変貌していた。気温1度の中、研修所内の800m走路に、8名の研修生が訓練馬に騎乗して次々に入ってくる。伴走する教官は3名。前後と横について、まず左回りで常歩。時折、サラサラの雪が北風に煽られて吹雪のようになって研修生の隊列を襲う。いかにも寒そうだ。

 やがて常歩から速歩、そして、駆歩へとスピードが上がって行く。左回りの後は、右回りで、同じメニューをこなす。最後は2頭併走で次々に眼前を通過して行く。どの顔も必死である。

 16名中8名は、BTC近くにあるJRA日高育成牧場へ1歳馬の調教を学ぶために通っており、残り8名が研修所で騎乗訓練を受けている。この日の騎乗は午前のみながら3鞍。それぞれ馬を乗り換えて、同じメニューでびっしりと乗り込む。

 中込教育課長にお話を伺った。「春に20名で研修が始まりましたが、すぐに1名退学し、その後も残念ながら3名退学して、16名になってしまいました。全員揃って修了式を迎えさせてあげたいと毎年思っているのですが、どうしても中途退学者が出てしまいますね」

 師走に入り、そろそろ38期生たちは、就職に向けて、面接が近づいている。

「研修生たちは来週と再来週、交代で1週間ずつ休暇を取り、それぞれ就職希望の牧場に面接に行く予定でいます。その後、数日間自宅に帰省して家族と過ごすことになります。コロナウイルスがまた感染拡大しつつあるので、敢えて実家には帰ってくるなと仰る保護者の方もおられますが、大半は面接の後に帰省することになるはずです。後は、研修所にコロナが持ち込まれないように祈るだけですね」(中込教育課長)

 研修生たちは騎乗訓練を終えると、それぞれ騎乗馬の馬装を解き、洗い場に繋いでお湯で汗を洗い流す。丁寧に水分を拭き取り、馬服を着せて馬房に戻し、次の騎乗馬の準備に入る。何人かに「騎乗訓練は寒いですか?」と質問すると、みんな同じように「寒いです」と元気よく答えてくれた。本州、とりわけ関東以西から来ている研修生にとっては、この日の気温はさぞ辛いものであろう。だが、気温1度はまだ序の口で、年明けには、終日気温がプラスにならない「真冬日」になる日も珍しくない。これからは寒さとの闘いでもある。

生産地便り

訓練後にはお湯で汗を流す


 再び、中込教育課長に伺う。「来年度、2021年春の第39期生からは、定員がいくぶん増えそうです。一応、今のところすでに22名が入学予定ですが、その後二次募集で何名か志願者がいるので、その中から若干名を採用して、最終的には25名くらいになるかも知れません。来期は30代の研修生が2名入ることになっています」

 生産地における人手不足は深刻で、育成の現場でも、日本人が少なくなり、その穴埋めをインド人に代表される外国人騎乗者に頼っているのが実情だ。そうした状況を少しでも改善するために定員増に踏み切ったということであろう。38期生を対象にした就職説明会には各地から35の牧場が集まり、人材を確保するためにそれぞれ熱いプレゼンを展開したという。おそらくほとんどの育成牧場では「できることなら日本人の若者を雇用したい」と考えている。それが思うに任せないので、やむなく外国人に頼っているのである。

 余談ながら、参考までに、12月2日現在における浦河町の国別外国人登録者を以下に記してみよう。まず、ダントツで多いのがインドで198名。続いてフィリピン44名。以下、マレーシア、韓国、ネパールが各8名。ベトナム7名という順である。インド人が他を圧して多く、彼らのほぼ全員が馬の現場で働いているのは言うまでもない。

 ついに200名近くまで来たか、と驚く他ないが、この先も、生産地での人材不足、騎乗者不足が続けば、さらにその数は増えて行くだろう。いかにして日本人の若者をこの業界に取り込むか、早急に対策を立てなければやがて騎乗スタッフは全員が外国人ばかりになってしまいそうな気配だ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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