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【アルゼンチン共和国杯】長距離路線のエースへ上り詰める事を期待

  • 2021年11月08日(月) 18時00分

パワーアップし大幅に強くなっているオーソリティ


重賞レース回顧

AR共和国杯を連覇したオーソリティ(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 見た目にも明らかに緩い流れで、レース全体の前後半バランスは「1分15秒8-(6秒2)-1分10秒4」=2分32秒4(レース上がり34秒1)。めったにない超スローだった。

 こうなると、先行した馬が有利であると同時に、高速決着になった後半で切れ味を発揮する軽ハンデ馬の台頭もあるが、57.5キロのハンデ頭オーソリティ(父オルフェーヴル)の楽勝だった。2着が次に重いハンデ56キロのマイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)で、3着が55キロのフライライクバード(父スクリーンヒーロー)。あっけない印象の長距離のハンデ戦だったかもしれない。

 だが、昨年と同じ約6カ月の休養明けで、昨年より3.5キロ増の負担重量をこなし、昨年より着差を広げて勝ったオーソリティは、確かに相手には恵まれたが、それ以上にパワーアップし大幅に強くなっていることを認めたい。ルメール騎手とは2戦2勝。

 4歳牡馬オーソリティの母ロザリンド(父シンボリクリスエス、母シーザリオ)は、評価急上昇の種牡馬エピファネイア(11歳)の1歳下の全妹にあたり、このファミリーの血を受ける馬は目下絶好調なことは知られるが、古馬の長距離路線には強力なエース級は少ない。さらにスケールアップして欲しい。そういう期待が大きくなった。

 当初、このあとは昨年と同じように有馬記念を目標にすると思われたが、これで東京の2400m以上【3-1-0-0】。ジャパンC挑戦もあるのではないかと推測される。

 たまたまだが、相手となった2着マイネルウィルトスも、3着フライライクバードも、2008年の秋、アルゼンチン共和国杯を制した勢いに乗りジャパンCを勝ったスクリーンヒーローの産駒だった。スクリーンヒーローの代表産駒には2015年の「AR共和国杯1着→有馬記念1着」となったゴールドアクターもいる。秋のビッグレースを前に本物になった馬には、ジャパンC、有馬記念、香港遠征…など、選べるレースは多い。オーソリティのスケジュールは近日中に発表されるだろう。

 AR共和国杯の連覇はグレード制が導入される以前、別定戦当時の1976-1977年のアイフル(秋の天皇賞馬)、1982-1983年のミナガワマンナ(菊花賞馬)の2頭しかいない。現在のGIを制した実力馬だった。

 2着マイネルウィルトス(M.デムーロ騎手)、3着フライライクバード(岩田望来騎手)はスローを察知して少しずつ順位を上げ、ともに巧みな早めのスパートだったが、4コーナーで射程に入れたオーソリティに並ぶまでには至らず、逆に突き放されてしまった。

 ただ、初めて長丁場に挑戦したマイネルウィルトスの、初距離でしぶとく食い下がった内容は悪くない。今春オープン馬に成長し、これで2戦連続GIIを0秒4差に快走。最後はささって鈍ったが、初の東京コースをこなした成長力は光った。

 フライライクバードはパドックで前後に大型の馬がいたためか、ちょっと非力な印象を与えたが、再三のリフレッシュ放牧をはさみながら大事に成長をうながす手法で、いきなりGIIで好走したのは立派。今回が格上がりの一戦だから価値がある。父だけでなく、ファミリーも、母の父シンボリクリスエスも成長力を伝えている。まだ4歳、さらにパワーアップしてくれるだろう。

 近年の出世レースらしく、6着までに4歳馬が5頭も食い込んだ。中でも2歳秋から3歳春まで3連勝でスタートしたレクセランス(父ディープインパクト)に、ようやく低迷期脱出の手応えがあった。直線ちょっと寄られたが、坂を上がってからの伸びは鋭く、2着馬とは0秒1差だった。こなせる距離の幅が広いので、手薄な長距離界に狙いを定めているが、2000m級のスピードレースでも良さが生きるのではないかと思える。

 同じ4歳の注目馬ディアマンミノル(父オルフェーヴル)は、久しぶりの関東遠征だったためか、パドックからかなりカリカリしていた。それもあって前半最後方に控えるレースになると、予想外の超スローでこの馬の前半1200m通過は推定1分18秒前後になっている。さすがにこれでは苦しいが、一番外に回って上がり最速の33秒6。2着馬と差がないところまで伸びている。毎回のように最後は突っ込んでいるので、もう人気薄ということはなく買い時が難しいが、そろそろチャンスが訪れるはずだ。

 スローになるのを見通して先行したボスジラ(父ディープインパクト)、アンティシペイト(父ルーラーシップ)は、このペースだからもう少し粘って欲しかったが、もともと速い上がりのない2頭。スローすぎて他馬のスタミナを奪うことができなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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