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【ホープフルS】レースレコードに相当するタイムで快勝 文句なしのクラシック候補へ

  • 2021年12月29日(水) 18時00分

確実に来季のクラシックと結びつく一戦


重賞レース回顧

文句なしのクラシック候補になったキラーアビリティ(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 年末の中山は、横山武史騎手(23)のためにあったようなフィナーレ開催だった。「有馬記念」と「ホープフルS」を制してJRA GIレース年間5勝は、最年少記録更新だった。2021年に制した重賞レースは計9鞍(通算10勝)。19日に年間初の100勝に達したあと、最終日の最終レースを勝って通算勝利300勝に到達した。

 有馬記念は名馬の引退レースであると同時に、次代のチャンピオンを歓迎する一戦。ホープフルSは、確実に来季のクラシックと結びつく。その両レースを勝ってみせた。

 ホープフルSがGIになった過去4年間に、出走馬から皐月賞で馬券に絡んだ馬が5頭出現している。前身の「ラジオたんぱ杯2歳S、ラジオNIKKEI杯2歳S」当時を含めても、レースレコードに相当する2分00秒6「前半60秒1-後半60秒5」で快勝したキラーアビリティ(父ディープインパクト)は、文句なしのクラシック候補となった。

 今年のホープフルSは重賞勝ち馬がコマンドライン(父ディープインパクト)しかいない組み合わせ。C.ルメール騎手の年間200勝達成もかかったコマンドラインが高い支持を集めたのは当然だが、スタートで出負けしたうえ、最初の1コーナーで外からきた川田将雅騎手のフィデル(父ハーツクライ)と、再三ぶつかり合うように接触した。

 レース前は落ち着き十分だったが、キャリアは1600mの2戦、初コースの2歳馬。ルメール騎手は道中の不利には触れなかったが、リズムに乗れなかったのは間違いない。

 終始余裕のない行きっぷりで、直線も苦しいコース取り。最後は挟まってしまった。

 さすがにここまで負ける馬ではなく、立て直しての巻き返しに期待だが、530キロにまでなった馬体は父ディープインパクトというより、北米のダート巧者の母方の特徴が前面に出てきた印象もある。全兄のアルジャンナもちょっと詰めの甘いタイプに変わったが、コマンドラインもクラシックタイプではない心配が(少なからず)生じた。

 みんな成長途上なので距離適性はまだ問われないが、これで5年間のGIホープフルSで3着以内に好走した15頭中、14頭に1800m-2000mでの連対実績があったことになった。来年の参考にしたい。

 勝ったキラーアビリティは前走の萩S1800mでダノンスコーピオン(朝日杯FSでは脚を余した印象も残る3着)にクビ差惜敗だったが、今回は少し行きたがったのは1コーナーまで。前半1000m通過60秒1の流れにスムーズに乗っていた。絶好調の横山武史騎手の位置取りは指定席のような好位。スパートのタイミングもベスト。着差こそ1馬身半だが、レコードで圧勝した未勝利戦2000mで、平坦に近い小倉とはいえ後半「12秒2-11秒8-10秒8」の勝負を楽に差し切り7馬身差独走の能力は本物だった。

 母の父Congareeコンガリー(USA)は、日本に輸入されたことがあるアラジの産駒。日本産馬に活躍馬はごく少数だが、コンガリーは北米のG1を5勝し種牡馬となっても成功。日本で評価を下げた早熟系から脱している。

 2000mで連続レコード勝ちのサトノヘリオス(父エピファネイア)は、エフフォーリアの有馬記念でさらに評価を上げた父の産駒らしく、スラリと見せる好馬体。外を回って一気に進出しキラーアビリティを射程にとらえた坂下では、勝ち負けかと映ったが、最後の1ハロンで急失速して1秒2差の13着。最後は脚が上がらなかった。

 間隔が詰まっての出走で、目に見えない疲れがあったのかもしれないが、レコード勝ちした前2戦の勝負強さがまったく発揮できず、意外な凡走だった。未来に向けたきわめて重要なGIで、コマンドライン、サトノヘリオスの注目馬2頭が12、13着。勝ち抜き戦のトーナメント序盤ではめったにないこと。ぜひ、巻き返したいが、ずっと先のようでいて4月17日の皐月賞まで約3カ月半。古馬ではないから、雌伏できる時間は短い。

 逆に、若さの残るジャスティンパレス(父ディープインパクト)は、苦しくなった直線の坂でかなり斜行したが、最後まで懸命に伸びて2分00秒8の2着。賞金加算に成功すると同時に、自身の2000mの最高時計を1秒5も短縮してみせた。

 半兄のPalace Maliceパレスマリス(父Curlinカーリン)はベルモントS(12F)の勝ち馬。半兄アイアンバローズ(父オルフェーヴル)は2400mで3勝し、12月4日のステイヤーズSを2着している。距離に自信を加えた。

 3着ラーグルフ(父モーリス)は、3カ月ぶりで14キロ増の馬体重496キロだったが、快調な追い切りをこなし確実に成長していた。父モーリスの産駒も、母の父ファルブラヴ産駒も総じて…という括りだと短距離タイプが多いが、それは気性面からくるもので血統背景は異なる。モーリスの産駒にはオーストラリアの2500mのG1勝ち馬もいる。巧みにインを突いた丸田恭介騎手の好騎乗が大きかった。ラーグルフはこれで路線に乗った。

 4着フィデル(父ハーツクライ)は、コマンドラインと交錯しかかったあと、後方に下げて直線勝負。インを通ったこともあるが、上がり35秒4で0秒5差に突っ込んできた。

 きびしい流れを追走して同じ0秒5差の5着に粘った同じハーツクライ産駒のボーンディスウェイとともに、これで大きくランクを上げることになった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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