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【京成杯】菅原明良騎手の度胸ある好騎乗がもたらした鮮やかな差し切り勝ち

  • 2022年01月17日(月) 18時00分

エイシンフラッシュ産駒は5世代目にして初のJRA重賞制覇


重賞レース回顧

京成杯で優勝したオニャンコポン(父エイシンフラッシュ)(撮影:下野雄規)


 12月のGI「ホープフルS」2000mは、6番人気で2分01秒7(上がり36秒8)。1秒1差の11着にとどまったオニャンコポン(父エイシンフラッシュ)が、前回の敗戦を糧に前半控えて進む戦法に変え、鮮やかに差し切り勝ちを決めた。

 同じ中山2000mのホープフルSのレースの中身は「60秒1-60秒5」=2分00秒6。

 好位追走の正攻法でレースの流れに乗ったオニャンコポンは、勝ったキラーアビリティをマークする展開から伸び切れなかった。息の入れにくい流れに、なし崩しに脚を使わされた形だった。

 今回の2000mの流れは「60秒9-60秒4」=2分01秒3。ホープフルSより楽なペースになったが、それをあえて下げて進み、前走とは一変の切れ(上がり34秒7)を引き出すことに成功した。小島茂之調教師が「あそこで下げられるのは度胸がある。さすがだ」と絶賛した。今年出足快調の菅原明良騎手(すでに7勝)の思い切りのいい好騎乗がもたらした鮮やかな脚質転換だった。

 ホープフルSと比べると相手のレベルが低かったのは確かだが、オニャンコポンの4戦はすべて2000mで「2分04秒2→2分02秒7→2分01秒7→2分01秒3」。一戦ごとにパワーアップしていることを走破タイム短縮が示している。

 父エイシンフラッシュは、2010年のこの京成杯の勝ち馬。順調さを欠いてぶっつけになった皐月賞は3着(11番人気)でも、続く日本ダービー(7番人気)を制している。母の父は、エイシンフラッシュが3着だったその年の皐月賞馬ヴィクトワールピサ。同馬は日本ダービー3着。クラシックタイプの血統背景に恵まれている。

 オニャンコポンはここまでの4戦「6、4、6、6」番人気。1月の京成杯組はなかなかクラシックには結びつかない歴史を持つが、エイシンフラッシュ(父キングズベスト)が5世代目にようやく送り出した初のJRA重賞勝ち馬であり、この馬にかかる期待は大きい。

 2着に好走したのは、ロジハービン(父ハービンジャー)。同じハービンジャー産駒のアライバルよりずっと評価は低かったが、12月の中山2000mの未勝利戦を鋭く伸びて差し切り勝ちのあと、一段と動きが良くなっていた。外枠で揉まれなかったのも大跳びのこの馬にはプラスだった。向こう正面に入ってハロン13秒0のラップが刻まれると、緩い流れを察知した戸崎圭太騎手が外から徐々に進出を開始したのも好判断。最後は待ってスパートした勝ち馬に切れ負けしたものの、ファミリーは成長力あふれるケイティーズファーストの牝系。これからさらに良くなるだろう。

 3着ヴェローナシチー(父エピファネイア)は前半流れに乗れず、最後の直線は苦しいインに入ることになったが、少しスペースが生じた坂のあたりからのコース取りが絶妙だった。さすが勢いに乗るエピファネイア産駒の上昇度、成長力を思わせたと同時に、団野大成騎手の機敏な判断がとくに印象に残った。

 人気のアライバル(父ハービンジャー)は、大きな動きを見せる好馬体だが、今回は休み明けで初の2000m。ちょっと動きが硬い印象があったうえ、初の小回りコースで前半から馬群にもまれ通しになってしまった。母の父はディープインパクトだが、シャープな体型というより、どちらかといえば父ハービンジャーの身体つきに近い感じがする。レース後に「広いコースの方がいい(ルメール騎手)」とコメントもあり、春の評価は次走に持ち越しとなった。

 2番人気のテンダンス(父ジャスタウェイ)は、コースロスを避けて途中から巧みにインに入ったが、このペースだけに直線に向いて前にカベが生じるシーンがあった。今後の糧になるはずだが、キャリアが浅い馬同士の多頭数の中山で、イン狙い作戦はスペースに恵まれないことの方が多い。

 2着のロジハービンがスローに近い流れを読んで動いたあたりで、逆にどんどん位置を下げたのは4番人気ホウオウプレミア(父ロードカナロア)。後半に脚を残す作戦だったと思われるが、明らかに脚を余す結果になってしまった。かなり悔いが残るだろう。

 3番人気のヴェールランス(父キタサンブラック)は、数字より大きく見せる好馬体で理想的な位置で流れに乗ったが、まだ全体に非力か。中山コース向きではなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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