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【フェブラリーS】先行策が断然有利の馬場において理想のスタートを決めた福永祐一騎手

  • 2022年02月21日(月) 18時00分

昨年以上の完勝となり、海外への展望も広がった


重賞レース回顧

連覇を達成したカフェファラオ(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 1Rの3歳未勝利ダート1400m(不良)が楽な逃げ切りで「1分24秒2」。午後9Rの3歳戦ヒヤシンスSダート1600m(重)が、先行馬同士の決着で「1分35秒3」。速いタイムの決着だった。また、乱ペースにならない限り先行タイプ断然有利の馬場だった。

 フェブラリーSの全体のバランスは、前後半「46秒8-47秒0」=1分33秒8。コースレコードタイであり、レースレコード1分34秒0を更新した。

 前半1000m通過は「59秒2」。行ったきりの決着だった3歳のヒヤシンスSの前半1000m通過が「59秒5」なので、走りやすいダートコンディションの古馬GI1600mとすると、先行策を取った馬にきわめて有利な流れとなった。

 快勝した昨年と同じように好位追走を理想としたカフェファラオ(父American Pharoah)は、「最大のテーマは互角のスタート(福永祐一騎手)」にあった。理想のスタートを決め、前半から好位4番手の外になったカフェファラオに望外に近いペースが待っていた。

 同馬自身の前後半は推定「47秒4-46秒4(上がり最速の34秒3)」であり、良馬場で自身の前後半推定「47秒1-47秒3(上がり35秒6)」だった昨年より、馬場コンディションを考えればはるかに楽な展開(追走)となった。

 好位抜け出しは昨年(上がり35秒6-12秒1)と同じだが、今年は(上がり34秒3-11秒8)であり、昨年以上の完勝となった。もう少しペースが速ければ、1分33秒8のコースレコードタイ記録はもっと速くなっていたと思える。

 福永祐一騎手は「レース前に堀宣行調教師と入念に(理想の形を)打ち合わせした」と勝利を振り返ったが、4コーナーあたりでもう勝利を確信したと思われる。

 これで東京ダート1600m4戦4勝。まだ戦歴は浅く【6-0-0-5】。似たような距離やコースならさらに中身を充実させることが可能だろう。もちろん、海外遠征も視野に入る。

 2着に粘り込んだのも5歳テイエムサウスダン(父サウスヴィグラス)。これまで1600mに良績はなかったが、まだ上昇が望める5歳馬の勢いと、絶妙なペースの先行で(好スタートを一旦下げ、速くないとみるや途中から)先頭に立った岩田康誠騎手の果敢な積極策が結果に結びついた。好時計を生むコンディションだったとはいえ、東京ダート1600mを1分34秒2で乗りきったテイエムサウスダンの得た自信と、功績は大きい。

 隠れた大種牡馬父サウスヴィグラスは、すでにその産駒が全国で不滅に近い史上最多の5000勝を突破している。後継種牡馬はごく少なかったが、今春からサブノジュニア(JBCスプリントなど12勝)が種牡馬入りし、この成績ならテイエムサウスダンも種牡馬入り可能だろう。そうなるためにも快時計のGI 2着は価値があった。

 4歳牝馬ソダシ(父クロフネ)は、前回が案外の結果だったので評価は分かれたが、まったく実績のなかったダートで、GIフェブラリーS3着は2001年の5歳トゥザヴィクトリー(直後にドバイWC2着)と似た快挙であり、ソダシはまだ完成途上の4歳馬。これから出走可能なレースの幅は一気に広がった。少し細身にもみえた身体に、成長の兆しがみえ、いらつきもなかった。

 これからは牡馬相手の芝も、ダートも平気だろう。牝馬同士の交流レースでさらに自信をつけてパワーアップするなら、ホクトベガ(通算16勝)級の活躍も夢ではない。また、トゥザヴィクトリーのようにファミリーを発展させる主役にもなるだろう。次走は芝のヴィクトリアマイルではないかと思われる。

 上がりの速い先行馬向きのレースで突っ込んできたのは7歳ソリストサンダー(父トビーズコーナー)と、同じく7歳のタイムフライヤー(父ハーツクライ)。ともにこれまでの自身の時計を更新し、惜しい場面もあったが、力を出し切っての善戦だった。

 リピーターの快走が多いフェブラリーS。5歳カフェファラオは4歳時を上回る内容を発揮したが8-9歳の「インティ、エアスピネル、ケイティブレイブ、サンライズノヴァ」は自身の最高時計以上を求められた高速決着が苦しかった。

 1番人気のレッドルゼル(父ロードカナロア)は、差しタイプにとって苦しい馬場状態もあったが、同枠の勝ち馬が巧みに好位の外に回ったのに対し、位置取りそのものは悪くなかったが、インに入らざるをえなかった。このペースだからどの馬も鈍っていない。スペースは生じない。前の空かない馬群の内寄りは不利だった。

 アルクトス(父アドマイヤオーラ)は、南部杯(盛岡)1600mに1分32秒7がある快速型で、同じ左回りの東京ダートで1600mを中心に5勝もしている。そのうえの素晴らしい馬体と好調教をみせるので今年も人気になったが、毎年人気になってこのGIは「9着、9着、7着」。なぜか、位置取り争いが厳しい内枠になってしまうのも原因か。

 年齢に注目すると、今年は9頭も出走した7歳以上馬がみんな苦戦して、1997年にGIになって以降、7歳馬は【0-5-4-70】。8歳以上馬は【0-3-2-47】となった。確かにベテランもがんばってはいるが、まだ勝ち馬はいない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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